パチンコ業界の苦境が続いている。東京商工リサーチの調査によると、2018年(1~12月)のパチンコホールの倒産は29件、前年比2.4倍と急増した17年と同件数で高止まりの状態だ。
かつて30兆円規模を誇ったパチンコ市場だが、17年の市場規模は19兆5400億円で20兆円を割り込んでいる。ピーク時には約3000万人だったパチンコ・パチスロの遊技人口も今や1000万人を割り込み(レジャー白書調べ)、パチンコホール数も08年から17年の10年間で18%減(警察庁調べ)と縮小路線が止まらない。
東京商工リサーチ情報本部経済研究室の関雅史課長は、「特に地方や小規模の倒産が目立ちます。また、パチンコホールだけでなくパチンコ関連業種の倒産が増えている点も要注意です」と語る。パチンコ業界の現状について、関氏に話を聞いた。
地方で倒産が目立つパチンコホールの現状
――今回の調査で、あらためてパチンコ業界の苦しい現状が浮き彫りになりました。
関雅史氏(以下、関) 近年、パチンコホールの倒産は08年の103件をピークに減少傾向でしたが、17年は前年比2.4倍の29件に急増しました。18年(1~12月)は前年と同じ29件で、全体の企業倒産が沈静化するなかでパチンコホールの倒産は高止まりの状態です。
ひとつの特徴は、中小・零細規模の倒産が目立つことです。負債10億円以上の大型倒産が4件(前年6件)に対し、1億円未満が9件(同7件)、1億円以上5億円未満が10件(同15件)でした。従業員数別では、50人以上は1件(同2件)という結果です。また、通常は企業の倒産が多い地域は東京・大阪・名古屋ですが、パチンコホールは地方での倒産が目立っているのも特徴です。
パチンコ業界は遊技人口の減少で市場縮小が続き、中小・零細は大型店との顧客の奪い合いが激化しています。また、機械の価格高騰に加え店舗の大型化への投資が難しく、経営環境は厳しいといわざるを得ません。経済産業省の調査でも、パチンコホールの売上高は52カ月連続で赤字でした。18年8月に53カ月ぶりに前年同期比で0.2%増になっています。
――最近の倒産事例で特筆すべきものはありますか。
関 昨年、北海道の北星実業、高知県の浜幸、香川県の豊和観光などが倒産しました。
昨年10月に札幌地裁に破産を申請した北星実業は、札幌市内に「パーラー大黒天」を6店舗運営し、ピーク時の04年3月期には307億4924万円の売り上げを計上していました。しかし、その後、改正風営法施行の影響で射倖性の高いパチンコ台が廃止されたことや大手の出店が相次いだことで業績が低迷。資金繰りが悪化するとともに集客が伸び悩み、18年3月期の売上高は約22億円にまで低下、店舗を相次いで閉鎖していました。負債総額は関連会社を含めて約15億円です。
浜幸は地元で高い知名度を誇っており、グループ数社でパチンコホールのほかに飲食店の経営も行っていました。1996年3月期には単体で120億円を上回る売り上げを計上。しかし、パチンコ離れと大手資本の進出により経営環境が悪化し、店舗の閉鎖が相次ぎました。そして、出玉規制などの要因もあって事業継続を断念し、グループ3社とともに昨年12月、高知地裁に破産を申請しました。
豊和観光は、かつては大阪府、香川県の坂出市、愛媛県四国中央市、広島県広島市中区などでパチンコ店7店、テナントビル、ホテル、サウナを経営し、92年3月期には35億円程度の売り上げを計上していました。しかし、その後は消費の低迷によりパチンコ需要が低下。不採算店舗の閉鎖などで対応しましたが、最終的には高松地裁から破産開始決定を受けました。負債総額は約9億200万円、関連会社の吉田企画は約7億7500万円です。