日本生まれのファストフードとして人気の「回転寿司」だが、競争は激しさを増している。東京商工リサーチの調査によると、2018年1~7月の「寿司店」の倒産は18件(前年同期比12.5%増、前年同期16件)と前年同期を上回って推移している。
そのうち、「回転寿司店」を経営する会社の倒産は6件(前年同期1件)と急増しており、過去10年で最多だった16年の7件を上回る可能性が高い。一時は100円均一などの業態が好評を博し、「デフレの勝ち組」の代表格であった回転寿司業界に何が起きているのか。背景には、多店舗展開の失敗をはじめ、漁獲量減少による魚価格の高騰、人手不足、そして消費者の実質賃金の伸び悩みがあるといい、特に地方の店舗の経営は苦境に立たされている。
東京商工リサーチ情報本部経済研究室の関雅史課長は、「回転寿司業界は大手の勝ち組と経営が厳しい地方・中小の二極化が進んでおり、今後、地方の店舗は厳しい経営判断を余儀なくされる」と語る。関氏に、回転寿司業界の現状について聞いた。
スシロー、くら寿司…5社でシェア75%
――なぜ、回転寿司店の倒産が増えているのでしょうか。
関雅史氏(以下、関) 外食産業が伸び悩むなかで、回転寿司業界は右肩上がりの成長を続けてきました。市場拡大を牽引したのは大手チェーンの出店攻勢で、そのため今は大手による寡占化が進んでいます。今年倒産した6件は、ほとんどが地方です。
「スシロー」「くら寿司」「はま寿司」「かっぱ寿司」が「4強」「四天王」などと呼ばれ、「元気寿司」も加えた5社のシェアは約75%です。いかに寡占化が進んでいるかがわかると思います。残り約20~25%のシェアを地方・中小の回転寿司店が食い合っている構図です。昔は大手と中小がそれなりに共存していましたが、今は大手チェーンが地方チェーンをなぎ倒しているため、地方で倒産が増えています。
1~7月で6件という倒産件数については少ないと見る向きもありますが、「休廃業・解散」や「規模縮小」も増えていると思われ、実態はさらに厳しいでしょう。特に地方では、今後も寡占化の弊害が出てくることが予想されます。
――業界特有の事情はありますか。
関 地方チェーンが店舗を増やし、大手チェーンと衝突していくなかで、売り上げが伸びずに倒れていくパターンが増えています。いわゆる、多店舗展開の失敗です。
また、ビジネスモデルの問題もあります。ほかの飲食業と比べて、ベルトコンベアや注文用タッチパネルなど多額の初期投資が必要な先行投資型産業で、顧客の回転率を高めに維持しなければなりません。しかし、大手チェーンを含めて出店が相次ぎ、同業他社との競争が激しくなっているのです。また、飲食業のなかでも原価率が高いとされるため、最近の漁獲量減少による魚価高騰が響いています。
さらに、アルバイトを含めた賃金が上昇するなか、コストアップを吸収する価格改定が難しいのが実情です。食材は輸入品も多く為替の影響を受けやすいため、最近の円安基調がボディーブローのように企業体力を消耗させている側面もあります。それらの経営課題の解消のメドが立っていません。
そして、消費者はネームバリューの高いところに流れていきますから、寡占化によって大手に顧客を奪われている状況です。