――具体的な倒産事例については。
関 神奈川県を中心に回転寿司店「ジャンボおしどり寿司」を展開していたエコー商事が4月2日、東京地裁に民事再生法の適用を申請しました。負債総額は約15億3000万円です。同店は一皿120~760円の寿司を提供するグルメ系回転寿司で、100円均一とは一線を画していました。
しかし、新規参入したとんかつ店が軌道に乗らず、回転寿司店のほうも大手チェーンと低価格路線の挟み撃ちに遭いました。金融機関からの借り入れで新規出店を積極的に行っていましたが、投資が失敗に終わったといえます。今年、回転寿司業界で最大の倒産事例となっています。
“ファミレス化”に活路も
――漁獲量減少による魚価高騰も大きいですね。
関 漁獲量減少は、回転寿司業界だけでなく水産加工業の倒産動向にも影響しています。17年の「水産加工業」の状況を見ると、倒産件数は43件で前年比約2割の増加です。この業界も、水揚げ量の変動や人手不足による人件費上昇などの課題が山積しています。18年1~7月時点では倒産26件(前年同期23件)で、今年も増加傾向にあります。大手が有利で寡占化が進んでいる点は、回転寿司業界と同じです。
倒産事例では、東日本大震災で大船渡工場が被害を受けた太洋産業が7月9日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請しました。負債総額は約49億円です。主力商品のサンマの記録的な不漁が続き、原材料の仕入れが激減したため、自力再建を断念しました。水産加工業の倒産増加は回転寿司業界にも影響を与えており、原材料の確保が難しくなっていることが地方・中小の回転寿司店の不振の一因となっています。
――くら寿司は漁船を一隻丸ごと買い上げるかたちで水揚げを安定的に確保していますが、大手ならではのやり方ですね。
関 水揚げの確保についても大手と地方・中小では格差が生まれており、最終的にはスケールメリットによって大手が有利になります。また、今は何かあればSNS(ソーシャル・ネットワーキング・システム)などで拡散される時代ですから、安っぽい魚は使いづらく、やはり高めの原価率を維持しなければなりません。不漁のなかでどのように原材料を確保していくかは、業界全体の課題といえるでしょう。