2017年の「飲食業」の倒産は766件――東京商工リサーチの調査によると、17年の飲食業の倒産は16年(639件)より約2割増加して、3年ぶりに750件を上回ったという。
業種別では、「食堂、レストラン」の203件(前年比36.2%増、前年149件)と日本料理・中華料理・フランス料理店などを含む「専門料理店」の203件(同13.4%増、同179件)が最多だった。次いで、居酒屋などを含む「酒場、ビヤホール」が116件(同36.4%増、同85件)、「喫茶店」が59件(同34.0%増、同44件)。宅配ピザ店などを含む「宅配飲食サービス業」は42件(同7.6%増、同39件)、持ち帰り弁当店などの「持ち帰り飲食サービス業」は23件(同27.7%増、同18件)となっている。
東京商工リサーチ情報本部経済研究室の関雅史課長は、「アベノミクスの恩恵が個人レベルまで行き渡っていないことに加え、個人消費の動向も変化しています。今は飲食を家で済まそうとする傾向が強く、たまにプチ贅沢をするという人が多い。支出も、賢く有効な使い方が強まりつつあります」と分析する。
飲食業は、参入は容易だが継続するのが困難とされる業態だ。飲食業の不振の現状や今後の方向性はどのようなものか。
ステーキ店「ケネディ」を襲った来客不足
現在、全業種を含めた倒産は減少傾向にある。しかし、なぜ飲食業では増えているのか。関氏は、その理由に3つの点を挙げた。
(1)鈍い賃金上昇に伴う個人消費の低迷
(2)ゲリラ豪雨など天候不順の影響
(3)人手不足や原材料高騰に伴うコストアップ
そして、具体的な事例として、ステーキ店「KENNEDY(ケネディ)」を展開していたステークスを挙げた。同社は17年10月2日に東京地方裁判所に破産を申請し破産開始決定を受けた。負債総額は13億8000万円だ。
「カフェ感覚で気軽にステーキ」をモットーにカジュアルなステーキ店として人気を博し、一時は約40店舗を展開していたステークス。「100店舗を目指す」と意欲を見せていたが、新興勢力に顧客を奪われ深刻な来客不足に見舞われる。
「このとき、顧客の呼び戻し策として値引きキャンペーンを行いました。しかし、これは一種の“麻薬”。値引きしたときは賑わいますが、キャンペーンが終われば客足は元に戻る。その繰り返しで、結果的に利益率が落ちてしまったのです」(関氏)
次に挙げたのは、ピザ専門店「NAPOLI」などを展開していた飲食ベンチャーの遠藤商事・Holdings.だ。同社は17年4月28日に東京地裁から破産開始決定を受けた。負債総額は12億7800万円。500円前後の低価格帯のピザで人気を博し、最盛期には直営25店舗のほかフランチャイズ店を含めて約80店舗を展開していた。しかし、過大な設備投資がたたって破産に至った。
「『景気が良くなった』と言われてはいますが、個人の懐具合はそんなに暖かくなっていません。また、消費者は必ずしも『安ければ行く』というわけではなく、何かしらの目新しさを求めています。そのため、薄利多売で多数の同様店舗を展開するようなビジネスモデルは難しくなってきているのではないでしょうか。また、そうしたビジネスモデルは計画が甘くなり、売り上げ以上に店舗を増やす放漫経営になりがちです。
もうひとつの要因は、ジリ貧です。つまり、旧態依然としたサービスを続けていて消費者に飽きられてしまうというパターンです」(同)