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マンション、電力契約めぐる居住者への“解約強制”で紛争多発…高圧一括受電の闇

文=小倉正行/フリーライター
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マンション、電力契約めぐる居住者への“解約強制”で紛争多発…高圧一括受電の闇の画像1「Gettyimages」より

 3月5日、最高裁第3小法廷は、マンション管理組合総会で高圧一括受電導入を決議しても、マンション居住者の電力の個別契約解約申し入れを義務付ける部分は効力を有しないとの判決を下した。マンション居住者が総会決議に反対して個別契約の解約に応じなくても、不法行為にならないことになる。

 この訴訟は、札幌市のマンション(544戸)が舞台。このマンションは、北海道電力から受電していたが、高圧一括受電に変更して電気代を下げるために、マンション総会で高圧一括受電導入の特別決議(4分の3以上の賛成多数)をした。その決議には、各戸に北海道電力との個別契約を解除し、高圧一括受電との新たな契約を結ぶことを強制する規約改正も含まれていた。

 これに対して、高圧一括受電の停電リスクや安定供給の不安を理由に2戸のマンション所有者が反対し、北海道電力との個別契約解約に応じなかったため、全戸が導入することが前提の高圧一括受電が導入できなかった。元同マンション管理組合理事は損害を受けたとして、訴訟を起こしていた。

 最高裁判決は、いくらマンション管理組合総会で決議をしても、その決議はマンション居住者の専有部分には効力が及ばず、決議に応じなくても不法行為とならないという至極真っ当な判断を下したものであった。

 これまで、高圧一括受電の既存マンションへの導入は、居住者全戸が導入に同意しなければならないということが導入のネックになっていた。そのため、導入を進める事業者や管理組合などは、導入に反対する居住者に対して、訴訟の可能性も示して圧力をかけ紛争に発展する事例も多数みられた。今回の最高裁判決は、こうした問題に終止符を打ったことになる。

岐路に立つ業界

 一方、今回の判決は高圧一括受電業界にとっては大打撃となるだろう。今や電力自由化のなかで、消費者は電力料金を安くするために地域ごとの大手電力会社から他社に変えるなど、多彩な選択肢を探っている。マンションに高圧一括受電を導入した場合は、マンション居住者は電力会社を変更することができず、電力自由化の恩恵を受けることができない。この事実はマンション居住者に広く知られるようになっており、高圧一括受電導入に反対する理由にもなっている。

 高圧一括受電業界では、経営の見通しが不透明ななかで、大手のオリックス電力や長谷工の子会社、長谷工アネシスなどが事業から撤退するなど、大きな岐路に立っているが、今回の判決が影響を及ぼす可能性もある。

 国土交通省は今回の判決を受けて、以下の見解を国会で表明した。

「高圧一括受電の導入を検討するマンションにおいてトラブルにならないよう、本判決の内容等について、判決理由をよく精査のうえ、国土交通大臣がマンション管理適正化推進センターに指定する(公財)マンション管理センターを通じて管理組合へ情報提供を行うなど必要な対応を行っていきます。併せて、国土交通大臣の指定する(一社)マンション管理業協会を通じて管理会社へ情報提供を行うなど必要な対応を行っていきます」

 今回の最高裁判決の趣旨が、全国のマンション管理組合と管理会社へ徹底されるためにも、国土交通省の指導的な役割が求められるといえる。
(文=小倉正行/フリーライター)

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