“太陽光発電バブル”の終わりと再生可能エネルギー普及の難しさを改めて浮き彫りにする事件が起きた。
太陽光発電の縮小で業績が悪化、事業再生ADR手続き中の電子部品メーカー、田淵電機は7月4日、取引金融機関を対象とした第1回債権者会議を開いた。
債権者会議では、金融債務の返済について金融機関から一時停止の同意を得た。返済停止の期間は、事業再生計画案の決議のための債権者会議の終了まで。計画案決定までの運転資金を融資するDIPファイナンスに優先弁済権を付与することも了承された。
田淵電機の2018年3月期末の借入金は、連結ベースで106億円。対象は11行。メインバンクのみずほ銀行がDIPファイナンスを実行する。
同社は6月25日、経営不振を受けて私的整理の一種である事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)制度の利用を申請した。すべての取引金融機関に対して借入金元本の返済の一時停止を求めた。
国の認証を受けた第三者機関である事業再生実務家協会のもとで、事業再生計画を策定する。8月6日の第2回の債権者会議で計画案について協議。第3回は9月27日に開催し、事業再生計画案の決議を予定している。
田淵電機は1925年創業。電源装置に強みを持つ電子部品メーカーである。太陽光発電市場の拡大を背景に、太陽光発電用パワーコンディショナー(変圧器)の製造に乗り出し、2015年3月期は過去最高の532億円の売り上げを計上した。
ところが、再生可能エネルギーの固定買い取り価格の切り下げで、国内の太陽光発電市場が縮小し、変圧器の売り上げが激減した。18年 3月期の連結売り上げは264億円とピーク時から半減した。最終損益は88億円の赤字(前期は57億円の赤字)で、2期連続の最終赤字となった。不振の変圧器の生産設備などの減損損失で46億円の特別損失を計上。18年3月末の自己資本比率は5.6%。17年3月期の31.1%から大幅に低下した。
単体では8億円の債務超過に転落し、金融機関と締結している借入契約の財務条項に抵触。「継続企業の前提に関する疑義注記」(ゴーイングコンサーン注記)が付記された。そのため、金融機関との協議のうえでADRの成立を目指すことにした。
田淵電機のADR申請は、太陽光発電バブルの後遺症といえるかもしれない。