再生可能エネルギー、とくに太陽光発電に関しては「発電コストが高い」「出力が不安定」など否定的な意見も含めて、国内にはさまざまな議論がある。では、海外では太陽光についてどう見られているのか、どのくらい導入が進んでいるのか。昨年11月18日に行われた「ソーシャルイノベーションフォーラム2017」(日本財団主催)で、ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの黒崎美穂氏が海外事情について講演した。
同社はエネルギーの将来像を調査・研究しているシンクタンクで、2040年までに再生可能エネルギーがどのくらい伸びるのかについて、長期エネルギー見通しを発表している。世界全体で発電部門には総額10.2兆ドル(約1132兆円)の投資があり、このうち72%(約815兆円)が太陽光(メガソーラー)と風力に向かうと予測する。欧米では、発電コストが安い石炭火力を駆逐し、中国やインドも再生エネの普及に熱心だという。その理由は、太陽光も風力もすさまじい勢いで発電コストが下がっているからだ。
「日本ではまだ馴染みがない洋上風力発電の開発もヨーロッパでは盛んです。アメリカはシェール革命もあって、現在はガスが一番安い。しかし、25年より前に太陽光と風力が安くなります。中国とインドも現在は石炭が一番安いのですが、20年には太陽光と風力のほうが安くなるといわれています。日本では25年頃、石炭よりも安くなるでしょう」(黒崎氏)
日本では、再生エネは高コストというイメージが強いが、そんな話はとうに過去のものとなっているのだ。なお、黒崎氏の話は新規建設の前提で比較した場合のコストだが、現在の発電システム(火力など)を止めてまで再生エネに交換する経済性があるのかどうか。黒崎氏はこう言う。
「ドイツでは炭素税を導入しているので、化石燃料の価格が上昇しています。中国では30年くらいに転換点が訪れるだろうと予測されます。つまり、稼働中の火力を止めて再生エネにリプレイス(置き換え)しても採算が取れる。アメリカでもそうなる可能性があります。しかし、日本では新設(太陽光)vs.既設(石炭)だと後者のほうが依然として安い状態が続きますが、それは政府のエネルギー政策が何も変わらないという前提です」
さらに、25年には電力会社に電気料金を支払うよりも、太陽光パネルを屋根に設置したほうが電気代は安くなる国がたくさん出てくるそうで、日本もそのひとつだという。この場合、太陽光は不安定なので家庭用蓄電池もセットで考えなければならないが、蓄電池の価格もやはり年々下落しているので、心配はなさそうだ。なお、日本は19年に固定価格買取制度が終了するという条件での予測だが、黒崎氏はこう話す。