少し前、経済誌で「管理会社が業務受託契約を突然破棄する」という現象を取り上げて話題になっていた。実はこの2年ほどで、分譲マンションの管理業務をめぐる環境がガラリと変わってしまった。簡単にいえば、管理組合側の買い手市場だったのが、管理会社側の売り手市場へと逆転してしまったのだ。
順番に説明しよう。まず、分譲マンションは住人が日常の暮らしを営む専有部分(住戸内)と、共用部分(住戸以外のところ)に分かれる。この内、共用部分には必然的に管理業務が伴う。具体的には施設や設備の管理や保全、清掃などの業務である。エレベーターの保守点検などは、法律でその頻度が定められている。こういった業務にはそれなりの専門性が伴うので、多くのマンションでは管理会社に全面的に委託している。
管理会社がどこなのかは、そのマンションの新築分譲時に決まっている。だいたいが売主企業の子会社だ。ただ、なかにはどこの子会社でもない独立系の管理会社もある。例えば、新築時以来管理業務を行ってきた管理会社に不満がある場合、管理組合は業務委託先の会社を変更することができる。管理会社の変更のことを、業界内ではリプレースと呼んでいる。
数年前までは、リプレースを検討するのが管理組合の健全なあり方だと考えられてきた。その理由は、管理会社に支払う業務委託費が低減できる可能性が高かったからである。売主企業の子会社が管理業務委託先であった場合、彼らは自社が十分に利益を取れる水準に最初の業務委託費を親会社に設定してもらえる。売主企業は、その水準に合わせて区分所有者(マンションの購入者)が支払う管理費を設定する。
ところが、新築マンションの購入者たちは、どの物件を選ぶかの基準を「月々の負担はいくらになるか」ということに置いているケースがほとんどだろう。特に初めてマンションを購入する子育てファミリーなどは、家計の都合上そこを基準にマンションを選ぶ場合がほとんどだろう。ということは、販売側にとっては管理費や修繕積立金などの月々の負担が低いほうが売りやすくなる。
管理費+修繕積立金のマジック
そこで、ちょっとしたごまかしを行うことがマンションデベロッパー業界の悪弊になっている。
まず、管理費はそのほとんどが管理会社に支払う業務委託費の原資になるものだから、一定水準より下げることができない。なんといっても子会社の収益に直接かかわるからだ。