普通のサラリーマンが、30歳で資産5000億円を超えたとSNS上で大きな話題になった。さらにその数年後にはFIRE(早期退職)を達成し、現在は1億円以上を運用する生活。その投資法はインデックス投資。誰でも簡単にできる投資で、資産形成するための心構えを説く。
皆さんは、資産形成を始めているでしょうか。「老後の不安を解消したい」「自由に使えるお金を増やしたい」など、さまざまな理由で、若い世代でも資産形成を始める方が増えているようです。私も同じように考え、新卒の頃に投資を始め、30歳子持ちサラリーマンでありながら資産5000万円を達成しました。
その方法は、インデックス投資です。
インデックス投資とは、「特定の市場指数(インデックス)に連動するように設計された投資商品に投資する方法」です。これは市場全体の動きに連動することでリスクを軽減し、長期的に安定したリターンを目指す投資戦略です。30代後半の今では、1億円以上を運用し、経済的自立と早期退職を意味するFIRE(Financial Independence Retire Early)したといえる状態です。
しかし、初めからインデックス投資にたどり着いたのではありません。その過程ではさまざまな困難があり、大切なものを失ったりしながら、インデックス投資中心のシンプルな投資法になりました。
今回は、私がインデックス投資を選んだ3つの理由、そしてそれを通じて学んだ本当に大切なことについてお話しします。
インデックス投資の真の魅力
インデックス投資を知っている方の多くが、インデックス投資を選ぶ理由として以下を挙げるでしょう。
(1)成長が早い:インデックス投資は、配当金への課税を避け、税引前の金額で複利効果を最大化できます。
(2)効率よく分散できる:一つの商品で市場全体に投資できるため、非常に効率的な分散投資が可能です。例えば、S&P500に連動する投資信託を購入すれば、アメリカの大企業500社に一度に投資することができます。
確かに、これらもインデックス投資を選ぶ重要なポイントです。しかし、私が14年間投資を続け、インデックス投資に行き着いた本当の理由は別にあります。
それは「時間の投資効率が圧倒的に高いから」なのです。お金の投資効率を高めることは確かに大切です。しかし、私たちにとって本当に有限なのは、お金ではなく時間なのです。実際にインデックス投資をして感じる最大のメリットは、以下の3つです。
(1)自動で銘柄を入れ替え最適化してくれる
(2)投資判断に迷う必要がなく脳のリソースを使わずに済む
(3)作業が不要なので時間が節約できる
自動で銘柄を入れ替え最適化してくれる
インデックス投資では、プロの運用者が市場の変化に応じて自動的に銘柄を入れ替えます。例えば、ある企業の業績が悪化して指数から外れれば、自動的にその銘柄が売却され、新たに指数に組み入れられた企業の株式が購入されます。これにより、投資家は個別企業の動向を細かくチェックしなくても、常に最適化された投資を維持することができるのです。
投資判断に迷う必要がなく脳のリソースを使わずに済む
投資と聞くと、「今が買いどきか」「売りどきか」といった判断を常に求められ、精神的な負担が大きくなるイメージを持つ方も多いと思います。
一方、インデックス投資では、市場全体の長期的な成長を信じて定期的に投資を続けるだけでよいため、日々の相場の動きに一喜一憂する必要がありません。これにより、投資以外の重要なことに集中でき、精神的なストレスも軽減されます。
作業が不要なので時間が節約できる
インデックス投資では、一度投資方針を決めれば、あとは自動積立などを利用して定期的に投資するだけです。
銘柄選びや市場分析、頻繁な売買といった作業が不要なため、投資に費やす時間を大幅に削減できます。こうして捻出した時間は、家族との時間や自己啓発など、人生をより豊かにする活動に充てることができ、結果として総合的な人生の質を高めることにつながります。
時間もなく、投資のことを考える余裕がないサラリーマン世代にとって、この3つが他にはない最も大切なメリットだと感じています。
個人の状況に応じた投資戦略
もちろん、投資が大好きで時間に余裕がある方なら、さまざまな投資方法を試すのもよいでしょう。しかし、私のようにサラリーマンで子育て中の家庭にとっては、時間は何よりも貴重な資源なのです。
だからこそ、「自分でやらなくて良いことはプロに任せる」という方針を徹底しています。確かに、インデックス投資では華々しい成績は出せないかもしれません。しかし、自分の目標に到達できるのであれば、それで十分なのです。
実際、投資歴の長い方々の中にも、個別株投資で大きな損失を被った方をたくさん知っていますが、S&P500やオルカンなどのインデックス投資で大損した人を私は知りません。
新NISAと長期的視点の重要性
ところで、新NISAの登場により、「1800万円をいかに早く埋めるかのゲーム」のように考えている方もいるかもしれません。確かに、オルカンやS&P500に投資して含み益が出ることは素晴らしいことです。
しかし、実際のところ、今含み益か含み損かは、長期的な視点では大して重要ではありません。
本当に大切な投資対象とは
最後に後悔しないために、皆さまに忘れてほしくないことがあります。それは「投資対象は金融商品だけではない」ということです。現金や株式、不動産ももちろん資産です。
しかし、それだけでは視野が狭すぎるのです。本当に大切な投資対象は、次の6つではないでしょうか。
・人との関係
・社会との繋がり
・体験
・健康(メンタル面も含めて)
・芸術や文化への理解
・今という時間
これらを得るためにお金を使うことも、立派な投資だと私は考えています。具体的には、以下のような活動が挙げられます。
・家族やパートナーと出かける
・会いたかった人に会う
・普段は行かない美術館に行く
・時短家電を購入する
・自己投資(本、資格、語学など)をする
・マッサージや温泉でリフレッシュする
・寄付を通じて社会に貢献する
「お金は貯まったが、趣味もなく友人もいない、働きすぎて身体はボロボロ…」という状態は悲しいですよね。投資の本質は“目的に沿った投資”で、大切なことは「自分の目的と照らし合わせて必要なものに投資すること」です。
私自身は、お金と時間を自由に使える人生を送りたいと考えてきました。そのため、他人との資産額の比較や、いわゆる「マウントゲーム」には興味がありません。週末は家族と外食に行きますし、無理して過剰に投資もしません。また、将来の働き方の選択肢を増やすためにスキルも磨いています。
そのためにも、自己投資として「学ぶこと」にお金を使っています。
本当の豊かさを求めて
30歳で資産5000万円を達成したとき、私は家族を無視して働き、お金を増やすことに必死になりすぎていました。その経験があるからこそ、皆さまにお伝えしたいのです。他人の資産額と比較して落ち込んでしまうときは、ぜひこのことを思い出してください。
本当の豊かさは、数字だけでは測れないのです。インデックス投資は、時間を節約しながら資産形成を可能にし、FIREも狙える強力なツールです。しかし、それはあくまでも手段であって目的ではありません。大切なことは「FIRE後にどのように生きるのか」を考えることです。
皆さまも、ご自身の人生の目的を見つめ直し、本当の意味で豊かな人生を送るための投資を始めてみてはいかがでしょうか。
今回の内容も含めて、拙著『サラリーマンのFIRE戦略:お金と時間を自由に使うインデックス投資の教科書』で紹介していますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。本書は、30代子持ちサラリーマンがインデックス投資で1億円を貯めた経験と、その過程で培った知識を詰め込んだ一冊です。何でも情報が手に入る時代に必要なのは、実践したからこそ伝えられる、手触り感のあるお話です。資産形成したいけど時間が足りない方、投資を始めたいけど自信がない方も、シンプルな方法で人生を豊かにする方法を学ぶことができます。
(文=りくひろ/インデックス投資家)
『サラリーマンのFIRE戦略』 物価はどんどん上がるのに給料は上がらず、何か始めようにも仕事が山積みでそれどころではありません。 この書籍では、30代子持ちサラリーマンが実践してきたFIRE戦略をお伝えします。