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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

相場より3割安く買える定期借地権分譲マンションの利点と難点…住宅ローン負担軽減

文=山下和之/住宅ジャーナリスト
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「gettyimages」より

 分譲マンションには、土地・建物ともに所有権で分譲する所有権マンションと、建物は所有権だが、土地は借地権の借地権分譲マンションがあります。借地権分譲マンションは、土地が借地なので、その分価格が所有権マンションより2、3割安くなりますが、借地期間終了時には、土地を更地にして地主に返還しなければなりません。借地期間は原則50年以上ですから、自分たちが住んでいる間は特に問題ないかもしれませんが、残りの借地期間が短くなったときには、どうなるのでしょうか。価値が大幅に低下してしまわないのでしょうか。

定借マンションなら2割から3割安くなる

 定期借地権というのは、1992年に施行された「借地借家法」により誕生したもの。普通借地権では、原則として借主が希望すれば契約を更新できますが、定期借地権では当初に定められた借地期間が終了すると、借地関係が終了し、その後の更新はありません。借地期間は通常は50年以上ですが、借主は原則として建物を取り壊して地主に土地を返還しなければなりません。

 土地は所有権ではないため、その分、分譲価格は相場より2割、3割程度安くなるのがふつうですが、毎年地主に対して地代を支払う必要があります。イニシャル・コストは安くなるものの、ランニング・コストが若干高くなるわけです。とはいえ、購入価格が通常の所有権より安くなるので、その分、住宅ローンの負担が減ったり、またゆとりある広さを確保できるといったメリットがあります。

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 Kantei eye 116(「定期借地権分譲マンション」のストック総括および供給動向分析 ほか) | カンテイアイ特集 | 市況レポート | 東京カンテイ

東京都には1万戸以上の定借マンション

 最近は建築費の高騰などによって、専有面積の縮小が続いており、不動産経済研究所の調査によると、2023年6月の首都圏新築マンションの専有面積の平均は62.92平方メートルとなっていますが、東京カンテイによると、2020年代以降の定期借地権分譲マンションの専有面積の平均は図表1にあるように70.7平方メートルとなっています。定期借地権制度がスタートした当初の1990年代には78.0平方メートルでしたから、最近はやや狭くなりつつあるものの、それでもかろうじて平均70平方メートル台を確保しており、所有権マンションに比べると10平方メートル近く広くなっているのです。

 この定借マンション、やはり価格水準の高い首都圏、なかんずく東京都が多くなっています。少しでも、安くて、広いマンションを確保したいという消費者のニーズに対応して、不動産会社が努力しているのでしょう。東京カンテイによると、図表2にあるように、棟数では愛知県が142棟と最も多いのですが、戸数をみると東京都が1万1263戸と全国トップです。次いで大阪府が5478戸で、愛知県は4342戸となっています。

 価格水準の安い地方では、さほど多くはありません。青森県、岩手県などのようにいまだに定借マンションの分譲が行われていない県もあります。もともと価格が安いので、定借マンションにする意味合いがさほどないということでしょう。

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最近は借地期間70年の物件が増えている

 定期借地権分譲マンションがスタートした当初は、借地期間を50年とする物件が多かったのですが、最近は60年以上、70年とする物件が増えています。東京カンテイによると、2023年に首都圏で竣工予定の定借マンションの借地期間の平均は65.6年で、最長は73年となっています。借地期間70年なら、30歳で買っても100歳まで住めますから、人生100年時代にはピッタリかもしれません。が、幸か不幸かそれ以上に生きてしまったときに、土地を更地にして返還しなければならないので、その後の住まいをどうするのかという問題が出てきます。更地にする資金はマンション管理組合などで積み立てるケースが多いのですが、それでも次の住まいを用意しなければなりません。

 また、当初は永住するつもりでも、さまざまな事情で住み替えしなければならないケースが発生するかもしれません。そのとき、借地期間の残りが短くなった物件がどれくらいで売れるものなのでしょうか。

1990年代竣工物件は残り期間が20年、30年に

 常識的に考えると、残り借地期間が20年になってしまい、20年間しか住めないとなれば、相場の半値でも売れないのではないかと思ってしまいますが、どうなのでしょうか。東京カンテイでは、その点も調査を行っています。特定の駅勢圏において、定借マンションが竣工した1年前後の間に供給された所有権分譲マンションと比較して、定借マンションがどれくらいで取引されているかを調べています。調査では、(1)1990年代に竣工、(2)2000年代に竣工、(3)2010年代に竣工、(4)2020年以降に竣工の4つのグループに分けて、所有権マンションと定借マンションの取引価格を調査しました。その結果、(1)の1990年代に竣工した定借マンションの取引価格は、平均で同じ年次竣工の所有権マンションの分譲時価格の69.7%となっています。つまり、分譲時相場の7割程度までダウンしているということです。

2000年代竣工の定借マンションも低くなる

 1990年代には借地期間が50年の物件がほとんどでしたから、すでに20年から30年が経過し、残りの借地期間は20年程度になっている物件が多いとみられます。あと20年しか住めないわけですから、当然評価は下がり、取引価格は低下します。もちろん、例外はあります。都心の交通アクセスに恵まれたエリアにあって、ゆとりある広さを確保した物件なら、残り期間が短くなっていても、一定の評価がつくケースもありますが、それは極めてレアなケースであり、通常、取引価格はかなり低くならざるを得ないでしょう。分譲時の所有権マンションの7割程度まで下がってしまうことが多いのですが、物件の条件によってはそれ以下に下がるケースもあるでしょう。

(2)の2000年代に竣工した定借マンションでは、周辺の所有権マンションの分譲時価格の74.3%でした。この時期の借地期間は当初よりやや長くなってはいますが、それでも長くても60年です。現時点では借地期間の3分の1を消化している物件が多く、それを考慮した取引価格になっているといっていいでしょう。

分譲時の相場より2割、3割高い物件も

 それに対して、(3)の2010年代竣工の定借マンションの現在の取引価格の平均は、新築分譲時の周辺相場の83.7%となっています。借地期間が10年以上経過している物件がほとんどですが、この時期の定借マンションは借地期間60年、70年が多くなっているので、まだ50年、60年の借地期間が残っています。ですから、所有権マンションに比べて極端に価格が低下することはなく、新築分譲時の周辺価格の8割以上の評価を得ている物件が多いわけです。

 人気の高い超高層マンションや人気住宅地に立地する定借マンションのなかには、新築分譲時の周辺相場より2割、3割高くなっているケースもみられます。購入時の価格が安くなっている上、売却可能価格が分譲時の相場より上がっているのですから、これはたいへんなメリットです。定借物件も将来の資産価値を考えての選択がたいへん重要になってくるようです。

所有権マンションより高く評価される物件も

 最後に(4)の2020年以降の物件をみると、新築分譲時の周辺相場に対する現在の取引価格の平均値は80.2%でした。平均で80.2%ですから、所有権マンションでもその程度になっている物件は珍しくなく、定借物件といえども、さほど大きな差はありません。(3)の2010年代竣工物件と同様に、交通アクセスに恵まれ、共用施設や管理が充実したマンションのなかには、周辺相場より高く取引されている定借マンションが多数見受けられます。

 ですから、定借マンションといっても、物件しだいで十分に価値が評価されるわけですが、問題はそれがいつまで続くのかという点です。定借マンションを買うのであれば、自分たちの将来のライフスタイル、ライフステージの変化などとも合わせて、住み替え時、買い換え時を考えながら購入する必要があるのではないでしょうか。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

山下和之/住宅ジャーナリスト

山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。


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