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10年で300万円…戸建て住宅、修繕費用という盲点、マンション並みに積立が必要

文=横山渉/ジャーナリスト、協力=山下和之/住宅ジャーナリスト
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※イメージ画像。本文内容とは無関係です(「gettyimages」より)

 住まい選びのとき、戸建てかマンションかで悩む人は多い。ただ、「戸建てはマンションのように管理費や修繕積立金を毎月払う必要がない分だけ得」と勘違いしている人もいるようだ。戸建てのマイホームを建てたばかりの人には、将来的に修繕工事が必要になるイメージはわかないかもしれない。戸建ての場合、マンションのように毎月の管理費・修繕積立金の負担はないが、当然ながら建物は経年劣化していくので、自分でそれらの修繕費用を計画的に準備していかなければならない。住宅を長持ちさせるには、定期的な点検とメンテナンスが必要なのだ。

 住宅はどんなに大切に使っていても、築15年を過ぎたあたりから消耗や劣化による不具合がいろいろ出てくる。しかも劣化が進むと、思った以上に修繕費がかかってしまうこともあるので注意が必要だ。戸建ての劣化と修繕費について、住宅ジャーナリストの山下和之氏に聞いた。

「戸建ても建物なのでマンションと同じように老朽化するし、居住性も基本性能も低下する。しかし、住宅の部位によって異なるが、10年とか20年とか定期的に修繕すれば、新築の状態に近いレベルに戻せる。住宅購入は自己資金と住宅ローンの額を考えて、月々のローン返済額を前提に考えがちだが、それだけでなく、将来の修繕費を自己責任で積み立てしなければならない」

戸建ての修繕は、屋根と外壁が高額

 では、具体的にどれくらい必要なのか。山下氏はその目安についてこう語る。

「基本的にマンションの管理費+修繕積立金ぐらいの積立は考えてほしい。物価レベルによって異なるが、東日本不動産流通機構の調査によると、首都圏で中古マンションの管理費と修繕積立金の合計は月々2万5000円ぐらい。年間で30万円近くは積立てておきたい。最近は自然災害が多いので、それぐらいの余裕があれば、万が一の時にも対応できる。台風や地震も含めて、突発的なことも起こりかねないので、修繕費が余分にかかることもある」

 3~4年で100万円、10年経てば300万円の積立金になる。

「屋根と外壁は、本格的な修繕をすると100~200万円はすぐにかかってしまう。しかも、屋根と外壁こそ問題が発生しやすいので、そこは重点的に購入当初から何年後に修繕しようということを計画しておきたい。大手や中堅の住宅メーカーだと、そういうシミュレーションがあるはず。注文住宅を建てたり分譲の建て売りを買ったりするときは、住宅を長持ちさせるための修繕計画と費用の一覧表をくれるはずだ。また、住宅金融支援機構でも資料を出しているので参考にしてほしい」(山下氏)

【住宅金融支援機構のHPより】
https://www.jhf.go.jp/files/300237187.pdf

 三井不動産グループでは、街づくりの理念として経年劣化ではなく「経年優化」という言葉をよく使うという。

「建物自体は当然古くなっていくのだが、愛着が深まり味わいが出てくるという意味。建物としての風格みたいなものを老朽化として捉えるのではなく、定期的な修繕をしっかりやれば経年劣化を経年優化に転化することができるということになる」(山下氏)

少しでも長く住むために長期優良住宅を選ぶ

 不動産情報サービスのアットホームの2021年調査によれば、新築一戸建ての寿命は平均56.6年だという。欧米に比べ、日本の住宅の寿命がかなり短いのは有名な話だ。

「かつて、建て替えまでの平均寿命は日本が33年、アメリカは55年、イギリス77年といわれていた。それをせめて50年、100年にしていこうということで2009年にスタートしたのが『長期優良住宅』という認定制度だ。高品質な住宅を建てて大切に長く住んでいこうという時代になった。大手住宅メーカーで建てると、制度の基準をクリアした注文住宅の単価は4000万円以上と決して安くない。しかし、最近は中堅メーカーでも長期優良住宅を扱うところが出てきて、半額の2000万円で建てられる」(山下氏)

 山下氏は、住宅メーカーによるアフターサービスにも注目してほしいと言う。

「10年保証は当たり前で、最近は大手・中堅では30年保証が標準になってきている。それから、築30年で会社所定の検査を受けて問題がなければ、さらに30年保証を延長するという、結果として60年保証という制度をやっているメーカーもある。保証が長ければ、やはり大規模補修などの費用もかなり節約できるのではないか」

修繕やリフォームでは国・自治体の補助金を忘れずに

「屋根や外壁の修繕だけでなく、家の長寿命化のために、耐震性能向上や各種リフォームでは、国や自治体の支援策・補助金を積極的に活用したい。自治体のなかでもとくに東京都は充実している」(山下氏)

 国では今年度から以下3つの新しい補助金・助成金制度を始めた。

・住宅の断熱性向上のための先進的設備導入促進事業(経済産業省・環境省)
・こどもエコ住まい支援事業(国土交通省)
・高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金(経済産業省)

 これら3つの補助金制度は、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、住宅の省エネ化を強く推進する目的で設置されたものだ。3つを併用すれば、リフォーム工事内容によっては、一般世帯で最大245万円、子育て・若者夫婦世帯で最大260万円も助成される。さらに、高断熱窓リフォームには、国の補助金だけでなく、東京都民は最大116万円の補助金も併用できる。東京都の高断熱窓・ドアに対する補助金制度は2022年6月から始まっているからだ。ドアやサッシの製品価格もますます高騰しているだけに、せめて併用して補助金額を増やしたいところだ。

(文=横山渉/ジャーナリスト、協力=山下和之/住宅ジャーナリスト)

山下和之/住宅ジャーナリスト

山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。


はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド2021~22


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