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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

今、実はマンション・戸建を売却→新築購入の最大チャンスか…ローンなし・低減も

文=山下和之/住宅ジャーナリスト
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「gettyimages」より

 リクルートのSUUMOリサーチセンターが、2023年6月28日、「2022年『住まいの売却検討者&実施者』調査」をリリースしました。マンションや戸建住宅の価格上昇を受けて、この機会に有利な環境で売却しておこうとする人が増えているようです。この環境がいつまでも続くとは限らないので、いまが不動産売却の最高のチャンスのときなのかもしれません。

新築以上に中古マンション価格が上がっている!

 マンション価格が新築、中古にかかわらず急騰しています。しかし、実のところは新築価格が高くなりすぎていることもあって、新築を諦めた人が中古に目を向けるようになって、中古マンションがこれまで以上に買われるようになり、最近の上昇率をみると新築より中古のほうが高くなっているのです。図表1にあるように、不動産経済研究所によると首都圏の新築マンション発売価格の平均は、2012年度は4563万円だったのが、2022年度には6907万円になっています。10年間で51.4%も上がった計算です。

 それに対して、東日本不動産流通機構による首都圏中古マンションの成約価格は、2012年度には2515万円だったのが、2022年度には4343万円に上がっています。なんと10年間で72.7%も上昇しています。新築マンションの10年間の上昇率を20ポイント以上も上回っているのです。

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sf_202204-202303.pdf (reins.or.jp)

中古マンション成約価格は36カ月連続で上昇

 自宅としてマンションに住んでいる人なら、この時期をうまく活用して高く売却、現在より満足度の高い新築マンションなどに買い換えたほうがいいのではないか、と考える人が増えるのはごく自然な流れでしょう。また、自宅以外に資産運用としてマンションを持っている人も、価格が高いうち売却して、ひとまず利益を確保しておいたほうがいいではないかと考える人が増えている面もあるでしょう。

 いずれにしても、マンションを持っている人にはとって、今は高値で売ることができる最大のチャンスかもしれません。というのも、東日本不動産流通機構によると、首都圏の中古マンション成約価格の前年同月比は2020年6月から36カ月、つまり丸3年もの間、上がり続けているのです。経済状況や金利動向などを鑑みると、いつまでも上がり続けるとは考えにくく、いずれ頭打ちになって、ピークアウト、下落が始まるかもしれません。それは、誰にも断言はできませんが、そうなる前に売りに逃げしたほうがいいのではないかと考える人が増えても不思議ではありません。

自宅などの売却を検討する人が増えている

 住まい領域の調査機関であるSUUMOリサーチセンターを運営するリクルートでは、毎年「住まいの売却検討者&実施者調査」を実施しています。その最新版をみると、いまのうちに売っておこうと考える人が増えていることがハッキリしています。図表2にあるように、過去1年間に土地や居住用不動産の売却を検討した人は、2022年12月調査では18.3%でした。2021年12月は16.3%、2020年12月は12.5%でしたから、2年間で売却を検討した人が5.8ポイントも増えています。

 新築マンション価格も上がっていますが、中古ほどではありません。ですから、手持ちの中古マンションを高く売れば、中古ほどは高くなっていない新築マンションを手頃な価格で手に入れることができる可能性があります。所有期間が一定以上に達している人であれば、住宅ローン残高もかなり減少しているでしょうし、なかには残高がゼロになっている人もいるのではないでしょうか。

 そうであれば、売却して得た代金を全額購入に充てることができ、新たな住宅ローンを少なくしたり、ゼロにできる可能性もあります。今は、ひょっとすると売却の最高のチャンスのときかもしれません。

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 2022年『住まいの売却検討者&実施者』調査(首都圏)​ (recruit.co.jp)

検討者の3人に1人以上が売却に成功

 売却環境が恵まれていないと、思い通りにお客がつかず、買い換えを諦める人も出てきますが、今はその心配も小さくなっているようです。やはりSUUMOリサーチセンターの調査によると、図表3にあるように、2022年12月調査では、売却を検討した人のうち、36.3%の人が実際に売却を完了しています。検討した人のうち3人に1人以上が売却を成功させているのです。

 2021年12月は36.1%でしたから、若干の増加にとどまっていますが、2020年12月の26.3%に比べると10ポイント、1割も増えています。反対に、思うように売却が進まず、売却活動を停止した人は18.1%でした。2021年12月は21.8%、2020年12月は29.3%でしたから、売却を停止した人は2年間で11.2ポイント減少しています。予定通りに売却できた人が増加し、売却を諦めて停止した人がそれ以上に減っているのです。

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2022年『住まいの売却検討者&実施者』調査(首都圏)​ (recruit.co.jp)

「高いうちに売るため」と考える人が増加

 そこで、なぜ今、売却しようと思ったのか、その理由を聞いてみると図表4のような結果でした。複数回答で最も回答者が多かったのは、「売れるときに売るため」の31%で、次いで「住む場所を変えるため」が29%、「高いうちに売るため」が27%で続いています。「売れるときに売るため」「住む場所を変えるため」は、2020年12月調査に比べるとポイントが若干低下しているのですが、「高いうちに売るため」は20%から27%に7ポイント増えています。やはり中古マンション価格が上がっているうちに、もっといえば下がらない、いまのうちにという気持ちで売却を考える人が多いのではないでしょうか。

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2022年『住まいの売却検討者&実施者』調査(首都圏)​ (recruit.co.jp)

買い換え後のローン負担に大きな差が

 実際、価格変動の影響は小さくありません。中古マンション価格が上がっていて、買い換えに当たっての新たな住宅ローン借入額が3000万円ですめば、金利1%、35年元利均等・ボーナス返済なしの毎月返済額は8万4685円ですが、売却可能額が下がって、ローン借入額が3500万円に増えれば毎月返済額は9万8799円に、4000万円になると11万2914円に増えます。借入額1000万円の差が、ローン返済額にすれば月額3万円近い差になってしまいます。

 買い換えですから、年配の人が多くなります。そのため、完済時の満年齢が80歳までという金融機関の規定に照らして、利用できる返済期間が25年、20年と短くなれば、負担の差がさらに大きくなります。借入額4000万円、金利1%、20年元利均等・ボーナス返済なしの毎月返済額は18万3957円に達します。それが、高く売却できて借入額が3000万円ですめば、毎月13万7968円ですみます。いかにタイミングをつかんで高く売るか、それがその後の人生にも大きく影響してきそうなので、うまくタイミングをつかんでいただきたいところです。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

山下和之/住宅ジャーナリスト

山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。


はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド2021~22


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