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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

家も親権も取られ、養育費も全額負担…離婚で妻にすべて取られる寸前で回避した夫

文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
家も親権も取られ、養育費も全額負担…離婚で妻にすべて取られる寸前で回避した夫の画像1
「Getty Images」より

 Z世代のXさんは、童顔でまだ大学生のようにも見える。離婚の手続きや総合的なアドバイスがほしいとのことで、筆者が代表理事を務める一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会に相談に来られた。うなだれ、覇気をまったく感じないXさんは、妻から半年前に離婚を切り出され、ようやく離婚を決意したという。

 妻とは同期入社で知り合い、交際2年で結婚した。早くに両親を亡くし、年齢の離れた姉に育てられた妻は、家庭に強い憧れを抱いていた。ほどなく妻は妊娠した。結婚以来、生活費は夫の給料から支出して、妻は1円も負担していなかった。Xさん夫婦は子供の誕生を考え、妻の姉の自宅近くに新築マンションを購入した。マンションを探したのは妻で、彼女が一目惚れした。頭金は妻が約2割、Xさんは約8割を出し合い、登記の持ち分は夫が8割、妻が2割とし、夫が勤務先から30年ローンを借りた。

 Xさんは結婚と同時期に転勤になっていた。新しい職場は、3交替で泊まりもある。緊張感が常に強いられる職場で、覚えることも膨大にあり、神経をすり減らす毎日だった。家に帰れば倒れ込むように眠る日が増え、すれ違いはあったが、関係性は変わらないとXさんは思っていた。

 出産前後は妻の姉の都合がつかないことから、Xさんの実家で妻は過ごした。初孫の誕生にXさんの両親は心から歓び、かいがいしく面倒をみてくれた。

 実は妻は妊娠中から、密かにある計画を進めていた。Xさんと妻の会社では、育児休暇は子供が3歳になる前日まで取れ、公的制度に基づいて給付金が支払われる。妻は2年間の育休の間に通信教育で、ある資格を取った。育休が明けると出社した妻は、その日のうちに退職届けを出し、同僚たちの唖然とする顔を横目に、デスクの荷物をまとめ、退職した。妻は翌日から子供を私設保育施設に預け、資格を生かした職場に転職した。

 Xさんは相変わらずの毎日が続いていた。家に帰れば、妻は子供と寝てしまっていたが、非番のときは子供と過すのが一番の幸せであり、癒やしでもあった。家族の未来に1ミリも疑うことはなかったが、次第に妻は口をきかなくなり、食事の用意もされていないことが増えだした。Xさんは妻に不満を漏らすことはなかった。

 妻への感謝の気持ちを口に出していたつもりだが、妻は「感謝がない」「子育ては大変」との怒りをぶつけてくるようになった。やがて、妻はXさんの洗濯もしてくれなくなり、入浴後、洗濯機を回すのがXさんの日課となった。

離婚の宣言

 妻から「家庭内別居をしたい」と言われたのは、2年前のことだった。自分なりに家に帰れば最大限の努力をしているつもりのXさんだが、人命救助に関係する仕事上、時間が読めないことも多々あった。妻に伝えている帰宅時間より遅れることが多分にあった。職場の苦労や大変さを分かち合えると思って結婚したはずなのにと、悩みを抱えるようになった。

 Xさんは妻の退職の仕方が社内で批判の的になった分、余計に仕事を頑張らないといけないと、より仕事に打ち込んだ。もちろん、Xさんも妻の退職に関して「辞めるにも辞め方がある」と説得したが、聞く妻ではなかった。

 とうとう、Xさんの怒りが爆発した。妻が仕事を始めても生活費は1円ももらわず、すべてXさんが変わらず出していた。夜勤明けでも妻が出社するときは、睡眠時間を減らしても子供の面倒をみた。ストレスはピークになっていた。

 暴力は一切振るわなかったが、妻は罵詈雑言を浴びせられたと主張するようになった。夫婦の亀裂が日に日に深まり、危機を感じたXさんは、修復を申し出た。自分なりに努力をしたつもりだったが、妻の心は変わらなかった。

 口論から1年が経過した頃、妻から衝撃の告白をされた。妊娠中から離婚を考えていたこと、そのために資格を取得したこと、自分が考える夫や父親像ではないため、正式に離婚をしたいと宣言された。

 Xさんの子供への思いは格別で、子供のいない生活など、自分の体をもぎ取られる思いだ。

 そのため、「自分さえこの状態を我慢すればいいんだ」と言い聞かせる生活を半年ほど過ごした。気持ちもふさぎがちになり、仕事でもミスをするようになった頃、察知した上司にXさんはすべてを打ち明けた。妻とは修復は不可能ということをXさんもわかっていたが、子供のことを思うと踏ん切れなかった。上司は「離婚をしてもしなくても、子供の父親であることは一生変わらない」と言われた一言で、Xさんは心を決めた。

 その頃には、妻とのやり取りはメールだけだった。何度もやりとりを重ねて、すべてをXさんが同意して離婚をする段階にまできていた。Xさんは条件を受け入れないと子供には会わせてもらえないと思い込んでいたが、上司のアドバイスで弊社団を紹介された。

離婚の財産分与

 離婚相談と一口にいうが、「夫婦で協議した内容を離婚協議書に仕上げてほしい」「離婚の手続きを教えてほしい」「1回だけ聞きたいことを教えてほしい」「相談に乗ってもらいながら、離婚協議書を取り交わすまでかかわってほしい」「相手と話し合いをしてほしい」など、依頼内容は多岐にわたる。

 Xさんの要望は、弁護士、税理士、不動産関係者、FP(フィナンシャルプランナー)、心理カウンセラーから総合的にアドバイスを受け、離婚協議書を仕上げてほしいというものだ。離婚は自分たちで話し合い、役所に離婚届けを出して受理されれば、成立する。しかし、子供がいると離婚は夫婦の問題だけにとどまらない。子供の人生に大きく影響をおよぼす。子供のいる夫婦の離婚は、子供が社会人になるまでを想定して、慎重に取り決めていく。

 離婚の財産分与は、2人の財産を洗い出し、結婚後の財産を夫婦で築き上げたものとして按分するのが基本だ。マイホームは売却して、頭金を考慮しながら按分していくのが一般的だ。細かいところでいえば、クレジットカードなどの家族カードも解約する。実際に、離婚後、元夫が家族カードの解約を忘れ、元妻がたまっていたポイントで海外旅行に行った例もある。

 忘れがちなのが、保険の受け取りの変更だ。再婚したら自動的に新しい妻が受取人になると思い込んで書き換えず亡くなった男性がいる。どんなに泣いて騒いでも、裁判で訴えても、受取人は前妻だ。

協議書を作成する大切さ

 Xさんは妻から、「親権は妻が持つこと」「子供には子供が会いたいと言うときに会わせること」「離婚後も今の家に無償で住み続けること」「住宅ローンも管理費もXさんが払うこと」「養育費は毎月10万円支払うこと」「教育資金もXさんが支払うこと」などを要求された。私たちの前で、Xさんは「夫として父として期待に応えられなかった」と落ち込んだ。

 圧倒的に妻に有利な条件だ。Xさんの心は深い悲しみのなかにあるように思えた。偽装結婚でもない限り、誰も離婚をするために結婚はしない。結婚当初は理解し合えていても、その後、価値観や生き方が変わるときがある。悲しみのどん底にいるXさんに、「早く気持ちを切り替えましょう」と言ったところで、今はとてもそんな気分にはなれないものだ。

 しかし、気持ちと対策は別物だ。弁護士は丁寧に話を聞いた上で、裁判になった場合、Xさんの話の限りでは、妻側からの離婚申し出に正当性が認められるかどうかは、厳しいように思うとの見解を示した。その上でFPが、Xさんが妻の要望をすべて受け入れて賃貸住宅を借りた場合の暮らしは非常に苦しいものとなることを伝えた。

「離婚後、私の暮らしはどんなに苦しくてもいい」というXさんだったが、Xさんも妻も将来どうなるかわからない。Xさんが目の前のことしか考えられないのは当然だが、子供が困らないようにするために、将来のリスクを考慮して協議書を作成する大切さを理解してもらった。

 離婚協議書では、裁判所が作成している養育費の算定表に則り、大学卒業まで毎月6万円を支払うとした。経済状態によっては、養育費の見直しをすることもあるということも妻に認めさせた。

 不動産関係者が売買価格を調査したところ、購入時よりも600万円も市場では高く売れる物件だった。税理士やFPがマネーシュミレーションを立て、住宅ロ―ンの拠出分を戻して按分すれば、Xさんには結構な現金が入り、新たな人生のスタートができることを提示した。

 離婚時の不動産問題は、相続問題に影響をおよぼすことがある。再婚して新しい家庭に子供が生まれた場合、相続になると揉める材料になるからだ。しかし、妻は住み続けることにこだわったため、家賃の支払いに加え、クーラーなどの付帯設備やリフォーム代金は妻が支払う、また、妻と子供以外を居住させないことも認めさせた。その代わりに管理費や固定資産税はXさん持ちとした。

 親権は妻が持つが、Xさんは毎週1回以上、Xさんの両親の面会もOKとするなど、詳細に決めていった。Xさんの離婚後の生活も、貯金ができるように資金計画を練り直し、さまざまなことを想定しながら離婚協議書を仕上げた。お節介ながらXさんを通じて、行政や団体のひとり親サポートの一覧表を独自に調査・作成し、妻に渡した。

 料金は士業の理解を得て、超破格の報酬にした。時には厳しいことも言ったが、あまりに気落ちしているXさんに、一日も早く心身共に元気になり、仕事に打ち込んでもらいたいとのエールを込めたからだ。

 無口だったXさんから、「ぎりぎりの生活になるはずが、余裕で貯金のできる生活になりました。迅速に対応してもらったことを感謝しています」とのメッセージをもらった。「お子様との面会のときに、言葉と愛情をけちらないであげてください。いつかきっと、あなたの苦悩が子供に伝わるときがきます。Xさんの未来が笑顔と温もりに溢れていますように。辛くなったら、いつでも連絡をしてください」と伝えた。幸多かれと祈るばかりだ。

(文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表)

※プライバシー保護のため、登場人物の設定を一部変更しています。

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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