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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

コロナ禍、出生届「14日の壁」に要注意…子供が「無国籍」なら義務教育や健康保険なし

文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
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「Getty Images」より

 新型コロナウイルスの感染拡大はとどまるところを知らないばかりか、変異株の感染も懸念される。厚労省は、PCR検査で感染が認められた場合、10日(症状によっては72時間を加算)から13日後の退院を推奨しているとの通知を各自治体に交付している。感染した方に取材すると、発症の程度によっては倦怠感にさいなまれ、退院後も2週間ほど寝込んでいる人もいる。

 年齢の若い方の感染も増えてきたなか、ふと思ったのが新型コロナウイルスに妊婦および親族が感染し、新生児が誕生した場合の「14日の壁」はどうなるのか、ということだ。14日の壁というのは、子供が誕生したら、生まれた日を含めて14日以内に届け出が必要とされる出生届のことだ。出生届は戸籍法第49条,第52条で厳格に決められている

 手続き対象者は父、母、同居者、出産に立ち会った医師・助産師等で、国外で出生したときは3カ月以内。提出届には、子の出生地・本籍地又は届出人の所在地の市役所、区役所又は町村役場に届け出ることとなる(郵送も可)。なお、国外で出生したときは、この期間内に出生届とともに国籍留保の届け出をしないと、日本国籍を失う場合がある。

 新型コロナウイルス感染で、本人はもとより親族も濃厚接触者となった場合、14日以内に出生届が提出できないこともゼロではないだろう。子供が誕生した時に、実際、事故や事件に巻き込まれたり、病気で緊急入院した人はいる。戸籍の届けの締め切りを思うと、気が気でなく、十分に療養できない人もいるかもしれない。どうすればいいのか。

 こんな疑問を持つ発端となったのは、筆者の戸籍だ。必要があって戸籍を取り寄せることとなり、役所に行った。とっくに人生の折り返し時点を過ぎているが、まじまじと戸籍をみたのは今回が初めてだった。ふと身分事項の出生欄に目をやった私は、思わず声が出そうになった。そこには出生日、出生地、届出人などが羅列されているが、問題なのは届出日だ。

「あのー、確か出生届は2週間以内でしたよね」

「そうですよ」

「私の届出日、これって、2週間以上、経過していませんか?」

 驚いたように担当者の方が戸籍を確かめる。「……本当だ」。衝撃の事実が発覚した。

「2週間以上経過して届けを出す人っていますか?」「この地域はないですね。何か事情があったんですよ」「事情って何ですか?」「名前を考えるのに手間取ったとか」。両親曰く、夏生まれだから夏子にするかどうか迷ったぐらいで、特に悩んだという話を聞いたこともない。産後、母にも筆者にもなんの健康上の問題はなかったと聞く。恐らく父が、出生届の提出期日を知らなかったのだろう。父は「知らんがな。忙しかったんやから、どうもしょうがないやん」というタイプだ。「昔で田舎だから、2週間以上経過しても受理されたんでしょうか」「受理されていなかったら、あなた無戸籍になってたんですよ。良かったですね」。

「良かったですね」と言われても、何だかモヤモヤする。今頃気がつく私も私だが、届けを出した父は、今や認知症が進行し、遅れた理由は、もはや永遠にかわらない。

法務局や市区町村に相談を

 それにしてもコロナ感染が拡大する今、やはり期限は厳守しなければならないのだろうか。早速、法務省の担当者に確認する。「確かに法律では2週間以内と期限が決められている」とした上で、親族一同がコロナに感染した場合の出生届のことは、やはり懸念されていた。

 無戸籍になると、義務教育もワクチン接種も受けられず、健康保険もない。パスポートも運転免許も取得できず、当たり前の生活が当たり前にできないなど、不都合なことしかない。当然、社会との関わりが極めて限定的になる。法務省担当者はこう話す。

「恐らく事情は聞かれるだろうし、出生届の提出は求められるが、昔も今も無戸籍児童を防ぐために、届出期限が過ぎたからといって拒絶はしない方針。諦めずに法務局(法務省:法務局・地方法務局所在地一覧)か、市区町村の戸籍窓口に相談に行ってほしい」

 行政機関の担当者によっては、着任したばかりで知識が浅かったり、不慣れな人もいたり、まるで犯罪者のような扱いをされたという話もある。全国の弁護士会や法テラス、支援団体に相談する方法もある。決してめげずに、困ったらそちらにも相談してほしい。

 さまざまな事情で届けを出しそびれ、ビクビクしている間に時間が経過した人もいるかもしれない。もちろん「知らなかった」で済む問題でもない。簡単に受理されるケースばかりではなく、戸籍ができるまで年単位で交渉した例もあるようだ。無戸籍になった子供には未来も可能性も奪い取られてしまう。そのことを決して忘れずに、まずは相談だ。

(文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表)

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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