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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

少額短期の地震保険に救われた…単独で加入可能、保険料が手ごろ、支払い迅速

文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
少額短期の地震保険に救われた…単独で加入可能、保険料が手ごろ、支払い迅速の画像1
SBIいきいき少額短期保険の公式サイトより

 4月14日、熊本地震発生(本震は4月16日)から5年目を迎えた。熊本市役所のHPによると、市の被害は死者88人、重度の障がい者6人、重傷者765人、住宅被害は13万6635件(全壊5764件、大規模半壊8972件、半壊3万8962件、一部損壊8万2927件)に上る(3月31日現在)。5年が経過した今も17戸の世帯が賃貸型応急住宅に入居したままだ。

 今年に入ってからも地震は全国で頻繁に発生している。記憶に新しいのが2月に発生した、福島を震源地とするマグニチュード7.3の福島沖地震だ。福島市役所の発表では死者1人、負傷者15名(うち重傷者2名)、住家等被害2417件などの被害を出している(4月20日現在)。

「日本で地震が発生しないところはありません。小さな規模の地震は日本中どこでも発生しています。また、ある場所で過去に大きな規模の地震が発生していたとしても、地表に痕跡(活断層など)が残らないことがあります。このため『この場所は大きな規模の地震が絶対ありません』と言えるところはありません」(気象庁HP)

 そうなると気になるのが、地震被害に遭った時の備えだ。一般的な備えは、火災保険とセットで契約する地震保険だ。ただし、地震に関する補償は、最大で火災保険の50%の補償であり、これは損保各社で共通となっている。

「被害に遭っても、新しい住居は支払われた保険金で建てればいいから問題ない」と思うかもしれないが、これが大きな間違いだ。地震で家が全壊した場合でも、住宅ローン債務は免除されない。新たに自宅を建てたいと思っているなら、前の住居と新築した住居分の二重のローンを支払うことになる。50%の補償だけでは新築での再建は難しくなるだろう。

 一方で、50%の補償にさらに補償を上乗せできる「地震危険等上乗せ補償特約」が一部の損保会社から発売されているが、当然、保険料も上乗せされるため、上乗せの補償には加入されない方もいる。また、すでに他の保険会社の火災保険に加入しているため、「他社に乗り換えるのも面倒」と思っている方も少なくない。

SBIいきいき少額短期保険株式会社

 こうした地震の被害に遭われた方の生活再建ニーズに応えるための保険が、「SBIいきいき少短の地震の保険(地震補償保険)」だ。地震の被害に遭った際、不足しがちな生活再建費用を補うことを目的としている。

 特徴は4点ある。

(1)単独で加入できる

(2)保険料が手ごろ

(3)世帯人数によって保険金額が選択でき、合理的に設定できる

(4)行政が発行する「り災証明書」の認定被害に基づいて保険金が支払われる

(1)単独で加入できる

 最大の特徴といっても過言ではないのが、火災保険に入らなくても単独で加入できる点だ。他社の火災保険や火災共済と組み合わせることができたり、他社の地震保険にすでに加入していても、加入することができる。

 ただし、加入条件は2つある。1つ目は、住んでいる家の所有者であることだ。賃貸物件や、店舗専用で住宅部分がない建物(住居併用は可)、居住していない別荘、貸家は対象外となる。2つ目は1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた建物、または耐震改修によって新耐震基準を満たした建物に限ることだ。

 補償対象は地震・噴火を原因とする「倒壊・火災・地崩れ・土砂災害・津波・流出・地盤沈下・液状化・噴石災害」となっている。

(2)保険料が手ごろ

 保険料は建物の種類(木造か非木造か)と居住地(各都道府県)によって決定する。保険料の支払い方法は年払いと月払いがある。例えば、木造、保険金額300万円タイプを選択した場合、月払保険料は岩手県なら1230円、静岡県では3140円となっている。

(3)世帯人数によって保険金額が選択でき、合理的に設定できる

 次のように、世帯人数によって選べる保険金額が異なり、合理的に選択できる。

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(4)行政が発行する「り災証明書」の認定被害に基づいて保険金が支払われる

 地方自治体が発行する「り災証明書」の被害認定で保険金を支払う。地震保険においては、地震被害を受けたら、一般的には鑑定人という被害を鑑定するスペシャリストが、被災状況を調査して、それに基づいて保険金が支払われる。

 同社の支払いについて、新村光由代表取締役社長は「弊社では原則として地震被害の調査を行いません。保険金は地方自治体が発行する『り災証明書』の被害認定に基づいて、弊社よりお支払いさせていただきます」と言う。

 東日本大震災での支払い事例はどうだったのか。現在、SBIいきいき少短の共同保険引受先である、SBIリスタ少額短期保険(当時は「日本震災パートナーズ株式会社」)の当時の支払い状況を紹介する(商品内容は現在と同じ)。書類が到着してから保険金の振込みまでにかかった日数は平均5.4日、第一号の保険金支払いは14日後の3月25日に振り込まれている。この素早い保険金支払い体制は、現在のSBIいきいき少短にも受け継がれている。被災時の経済的不安に陥った時に支払いが迅速なことは大きな安心となり、魅力的だ。

 ただ、先の震災では、行政によっては大混乱から「り災証明書」の発行が大幅に遅れるケースもあったようだ。Aさんの例だ。当時、この地震補償保険に加入していた年金生活者のAさんは、自宅が津波被害で全壊したが、り災証明書がなかなか発行されず、経済的に深刻な状態に陥った。当時の保険会社だった日本震災パートナーズに相談したAさんは「『最小限の保険金額ですが、先に振り込んでおきましょう』と保険会社から申し出があり、温かい心情に感謝しかありませんでした」と述懐する。年金生活者は、全壊被害による経済的なダメージで想像を超える絶望感を抱える。

「当時の事情に応じた特例措置でしたが、弊社の地震補償保険のコンセプトは、被害に遭った方の一日も早い生活再建のお役に立つ理念は今も変わりません」(新村社長)

修繕積立金の盲点

 では、同社の保険金額と被害認定基準はどうなっているだろう。

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 昨今、耐震対策が進んでいるが、東日本大震災でも津波や周囲の被害状況に連鎖して、耐震対策をしていた建物でも被害を受けた例は少なくなかったと聞く。地震の被災時には、住宅再建費用以外にも、さまざまな生活再建費用がかかることも多い。

 Bさんの実例を紹介したい。当時の地震補償保険に加入していたBさんは、家族3人でマンションに居住していた。地震でマンションの柱にひびが入り、半壊認定となった。問題はここからだ。

「管理組合の協議で補修となりましたが、補修費用は管理組合の積立金では足りない事実が発覚したのです。住民の皆さんの話し合いの結果、占有割合に応じて、費用を負担することになりました。補修費用負担分は100万円にも及びました。

 さらに、お客様は補修期間中、住み続けることに不安を感じられて、ホテルに滞在されたり、賃貸アパートで仮住いをされたため、仮住いの費用は100万円になったそうです」(新村社長)。

 この保険に加入されていなければ、Bさんは預貯金から合計額の200万円を支払わなければならない。

「3人家族のBさんは保険金額600万円タイプに加入されていました。このケースだと半壊認定でお支払いする保険金は100万円となります。そこで、マンションの補修費用100万円は、お支払いした保険金を充当していただきました。Bさんからは『保険に加入していなければ、200万円をすべて預貯金で賄う必要があった。助かった』と言っていただけました」(新村社長)

 マンションでは築年数が浅いと、管理組合の修繕積立金もそれほど貯まっておらず、住民が拠出しなければならない事態になるというのは、被害を受けてみて実感することかもしれない。

地震の被害で予想外に出費がかかるケースも

 それにしても、他の地震保険に加入していても、この保険に加入する必要はあるのだろうか。一般的に地震保険は、建物と家財のそれぞれに加入する。地震保険に加入していても、どちらか一方だけ加入している方や、保険料の兼ね合いから保険金設定を低く設定している場合もある。

 Cさんの実例を伝えたい。損保の地震保険以外にこの地震補償保険に加入していて、契約1年目で東日本大震災の全壊被害に遭った。大規模な震災の時は、業者を手配して着手してもらうにも時間がかかる。Cさん宅の工事が完了したのは7カ月後だった。その間の仮住いや家財などの調達費用で、予想以上に出費がかかったという。

「Cさんから、『地震保険に加入していても、それだけでは住宅再建は不可能でした。この保険から全壊認定の保険金を受け取れたことで、住宅を新築で建築し、元の生活に戻ることができ、大変助かりました』とのコメントをいただきました」(同)

 ちなみに、SBIいきいき少短の地震補償保険は保険金の支払いを受け、被害に遭った場所で自宅を再建しても、保険料は値上がりすることなく、契約者は所有者名で更新できる。これまで紹介した事例に限らず、地震の被害で予想外に出費がかかったという声は多く聞く。

 なかには、勤務先が全壊した影響で職を失ったという例もある。被害に遭って、住宅再建以外にどれほどの出費がかかるのか、誰も予測はできない。地震保険に加入していても最大で50%しか補償されない以上、被害などの額が大きければ大きいほど、貯金などから住宅再建に充てられる金額も厳しくなるということは覚えておきたいものだ。

(文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表)

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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