豪雨による「通電火災」に要警戒…停電時は「ブレーカー落とす&電源コンセント抜く」が重要
7月3日午前10時頃に伊豆山地区で発生した土砂災害は、5日の時点で死亡者は4人のほか多数の被害者を出した。現地関係者に確認したが、現時点では被害の規模や正確な被害者数は把握できていないようだ。被害に遭った方のご冥福をお祈りするとともに、被災地の方にお見舞いを申し上げ、一日も早い復興をお祈りしたい。
当日の地域の雨量は、静岡県熱海市網代 網代特別地域気象観測所の記録によれば、土石流が発生した3日、7時台の降水量は10ミリ、8時台では20ミリ、9時台では14.5ミリ、10時台では27ミリを記録している。単純計算では、7~10時の累積降水量は71.5ミリとなっている。網代市の過去7年間の7月の平均降水量は239.0ミリのため、当日朝から相当な量の雨が集中的に降っていたことは間違いない。
活発な梅雨前線が今週から来週にかけて北上し、日本全体にしばらく停滞すると気象庁は予測している。日本のどこで豪雨に見舞われてもおかしくはなく、これまでの雨量から地盤が緩んでいる地域もあることを想像すれば、豪雨に伴う災害も懸念される。
豪雨災害で意外と知られていないのが火災だ。意外に思われるかもしれないが、ここでいう火災とは“通電火災”のことだ。通電火災とは、台風の豪雨や洪水などで、家屋などの建物内にある電気配線や電化製品が破損したり、水没して、再通電時に電気機器または電気配線からの火災が発生することだ。地震時の火災でも通電火災は多発している。
まさかと思うかもしれないが、実際“水”が原因の通電火災は発生している。例えば、暴風雨の影響により停電し、電動シャッターが開いたままになり、電動シャッター付近に設置されていた分電盤に雨水がかかり、再通電時にショートして出火した事例もある。消防庁予防課は令和2年9月3日付けで、通電火災の防止のために次の注意を呼びかけている。
・停電中は電気機器のスイッチを切るとともに、電源プラグをコンセントから抜いてください。
・停電中に自宅等を離れる際は、ブレーカーを落としてください。
・給電が再開時には、漏水等により電気機器等が破損していないか、配線やコードが損傷していないか、燃えやすいものが近くにないかなど、十分に安全を確認してから電気機器を使用してください。
・建物や電気機器に外見上の損傷がなくとも、壁内配線の損傷や電気機器内部の故障により、再通電から長時間経過した後、火災に至る場合があるため、煙の発生等の異常を発見した際は直ちにブレーカーを落とし、消防機関に連絡してください。
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通電被害は、豪雨の雨漏りで起こる可能性もある。災害ではなくても、階上の水漏れでコンセントが濡れてショートを起こすことも考えられる。過去に電源コードがショートを起こし、そこの住民がパニックになっている間に火が拡大し、集合住宅が大火事になった例を目撃したことがある。
ちなみに水災による被害も火災保険の補償の対象だが、水災をオプションにできる火災保険もあるため、加入している保険会社に水災や通電被害の補償の対象となるかどうかはチェックしていただきたいと思う。
災害被害など、誰も遭いたいとは思わない。だが、どんな被害が我が身に降りかかるのかは、誰も予測はできない。周囲になんの被害もなくても、その家だけが被害に遭う場合も実際に起こっている。
人間は想像もしていないことに咄嗟の判断はできにくい。豪雨予測に備え、人命が一番であることはいうまでもないが、停電時や避難の場合には、ブレーカーや電源プラグをコンセントから抜くことを普段から「新習慣」として身につけておきたいものだ。
(文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表)