1日から2日にかけて、西日本から東日本の太平洋側の広い範囲で大雨が続いていますが、気象庁は1日、伊豆諸島北部で線状降水帯による激しい雨が続いているとして、「顕著な大雨に関する情報」、いわゆる「線状降水帯発生情報」を発表しました。
先月29日に沖縄に同情報が発表された際、「線状降水帯が発生だって! 心配!」と言った私は、娘から「線状降水帯? 大雨? つまり台風ってこと?」と聞かれました。なるほど、気象に特に興味のない人は、そんな印象なのかもしれません。そこまででなくとも、「線状降水帯発生情報と大雨警報は何が違うの?」と、思われた方も多いと思います。
基本的に「線状降水帯発生情報」は「大雨に対する注意喚起」であることに、変わりありません。ニュースで出てくる「線状降水帯発生情報」の正式名称は、「顕著な大雨に関する情報」ですが、「顕著な大雨情報」の意味が明確に伝わるよう、あえてマスコミは「線状降水帯発生情報」という表現を使っているのです。
では、なぜ「大雨」ではなく「線状降水帯」なのでしょうか。
線状降水帯を、ざっくりおさらいします。雨雲(積乱雲)が次々と発生し、それが列をなした積乱雲群によってできた線状の雨雲を「線状降水帯」といいます。ほぼ同じ場所を長時間にわたって通過、または停滞することで、河川の氾濫、土砂災害などを引き起こします。
「令和2年7月豪雨」では、九州で発生した大規模な線状降水帯による豪雨災害で86名もの死者が出ています。当時、24時間雨量について「多いところで200mm」と発表されていましたが、実際には400mmを超えていました。人吉市下青井町の電柱には、1965年に2.1メートルの高さまで浸水した記録が残されていますが、この豪雨では4.3メートルの高さまで浸水しました。
つまり、線状降水帯は過去の大雨被害と比較にならないくらいの被害をもたらすことが、人々の間に周知されたのです。
「床下浸水」は公的支援の対象外
「線状降水帯」は多くの家庭に「床上浸水」「床下浸水」被害をもたらします。床上浸水とは、まさに「家の中が水浸しになる。家具・家電も水浸しになり、使えなくなる」ことを意味します。復旧するのも大変な作業です。
一方、「床下浸水」は「床下のみ、水に浸かるからギリギリセーフ」というイメージですが、床下に汚水が入り込んだりすると、想像以上の被害が生まれます。床下に溜まった汚水が原因で、カビ、湿気、悪臭が発生します。それが原因で、白アリが住み着き、家が崩壊するリスクも生じます。復旧するには、床板を外して泥を撤去、乾燥、消毒という、大変な作業となります。
ちなみに、「床下浸水」には国の被災者支援の「被災者生活再建支援制度」や自治体の「修繕費補助」「災害見舞金」も原則、対象外になっています。
自分でできる我が家を守る方法は?
水害が心配であっても、安全な地域においそれと引っ越しはできないのが現実ではないでしょうか。では、自分でできる「浸水対策」があるとすれば、それはなんでしょう。
・床下浸水対策
基本的には、床下に流れ込む水を遮断します。「床下換気口」を板で塞ぎ、水が流れこまないようにしましょう。板は水で流されないように、土のうやレンガなどで固定します。床下換気口がない住宅で、土台と住宅の間に2センチほどの隙間をつくって換気口にしてある住宅の場合は、防水テープを張り巡らせ塞ぎましょう。防水テープは、ホームセンターなどで購入できます。換気口は水が引いたタイミングでもとに戻して、本来の役目である換気をよくすることを忘れずに。
・床上浸水対策
家の中に汚水が入らないようにするには、玄関、勝手口は止水板、土のう、水のうを使って、水の浸入を防ぎましょう。排水能力以上の大雨は、マンホールを跳ね上げ、下水を逆流させ、家の排水口から汚水を噴出させる可能性があります。2重にしたビニール袋に、水を入れた「水のう」で塞ぎましょう。
水のうで塞ぐ場所は、排水口がある所すべてです。洗濯機の排水口、洗面所の排水口、キッチンの排水口、トイレが対象です。
また、水に浸かると壊れてしまうもの(家電や家具)は、念のため2階に上げておきましょう。ハザードマップを確認し、浸水想定地域であれば、自分でできる浸水対策を施したあと、安全な場所に避難しましょう。
大雨や台風が地震と異なるのは、「天気予報」があることで事前に知ることができる点です。自分でできる「浸水対策」が、水が引いたとき、避難所から我が家に戻って来た時に、大きな違いを生みます。