火山灰は現代社会にどんな影響を与える?
6年前、多く犠牲者(死亡者: 58人、行方不明者: 5人)を出した「御嶽山噴火」は、噴火の予兆はなく、突然の噴火でした。2018年1月23日に噴火した群馬の草津白根山は、噴火警戒レベルがもっとも低い1でした。これは、火山の噴火の予想が、いかに難しいかを表しています。
当然、富士山も突然噴火する可能性があります。富士山は約300年前、宝永4年(1707年)に噴火しました。噴火は約2週間続き、火山灰と軽石が大量に噴出され、火山灰は偏西風に乗って江戸方面にも大量に降り積もりました。富士山が噴火すれば、首都圏にも多くの火山灰が降り注ぐことが予想されます。
火山灰は灰にあらず
火山灰は名前に「灰」がつくことから、薪や炭が燃えたあとの「灰」と同じと思う人もいますが、まったく別物です。簡単にいえば、火山灰とは、火山岩が粉々になった細かい粒子のことです。「火山灰」は乾燥した状態であれば、フワフワと舞い上がり、雨に濡れたらセメントのように固まり、またはこびりつき、重くなるという、とても厄介なものです。
火山灰の影響は多岐にわたる
火山灰の影響が多岐にわたります。
・鉄道など交通
火山灰は濡れていても乾いていても非常に滑りやすく、ブレーキが利きにくくなります。鉄道の運行が停止。高速道路の封鎖。空港も閉鎖されます。輸送力低下となり、物資の配送にも影響します。
・生活
都市では、一斉に人々が買い物をすることによって、店頭から食料品、飲料水、生活用品がなくなります。生活物資の入手困難を招きます。
・電力
濡れた火山灰は、電信柱の碍子(がいし)をショートさせ、停電を引き起こします。火力発電所も、吸気フィルタの交換頻度の増加等による発電量の低下を招き、停電に至る危険があります。
・通信
基地局等の通信アンテナへ火山灰が付着することで、通信阻害が起こります。停電エリアでは、非常用発電設備の燃料切れが生じると、携帯電話が「圏外」になります。
・上下水道
ダム湖、川などの水源も、火山灰によって水質が悪化、浄水施設の処理能力を超えると、断水になります。流れた火山灰は、雨水用の下水道を詰まらせます。
・住宅
火山灰が積もった屋根に雨が降ると、木造家屋であれば、火山灰の重みで倒壊する恐れがあります。
その他、農作物、畜産、水産業にも多大な影響を及ぼします。
私たちができることは?
富士山が噴火となれば、火砕流や溶岩の噴石の危険のない地域以外は、「在宅避難」が中心になるでしょう。そのためには、何を準備すれば良いでしょう。
・食料
日常生活のなかで消費しながら備蓄する「ローリングストック」をしましょう。これは、普段食べている食料を多めに買い置きするだけなので、無駄もありません。
・生活用品
平常時から、トイレットペーパーやテッシュペーパー、使い捨てマスクなどの消耗品の備蓄を十分にしておきましょう。
・飲料水
普段から水を備蓄しておく。噴火が起きたら、水道が使えるうちに「浴槽」を洗い、水瓶代わりに水を貯める。消毒された水道水であれば5日ほど、飲料として使えます。
・精密機器
パソコンや携帯電話などの精密機器では、小さな火山灰が入り込み、湿気でショートして故障の原因になる恐れがあります。携帯電話は、食品用のラップを携帯に包みましょう。スマートフォンはラップの上からでも操作できます。パソコンも電源を落としてラップに包むか、大きめのビニール袋で覆いましょう。灰が入らないところに、災害が落ち着くまで保管すると安心です。
「火山」「地震」「感染症」「台風」と、自然災害は、多種多様に私たちを襲ってきます。普段の生活のなかに、「在宅避難の準備」を組み込む必要があります。
【参考資料:内閣府ホームページより】
大規模噴火時の広域降灰対策について―首都圏における降灰の影響と対策― ~富士山噴火をモデルケースに~(報告)(令和2年4月7日公表)