体育館の床に隙間なく座り込む、被災者の人々。
お互いの無事を喜び、抱き合い涙するご近所さん。
食事の配給に列をつくり、談笑しながら弁当を食べる。
顔を寄せ合い、お絵かきをしている子供たち。
テレビで見る「避難所の風景」が今後、変わってきます。これらのことが、すべて「やってはいけない行為」となってしまいました。避難所の中で「コミュニケーション自体が感染症の発症」につながるからです。
先月の熊本県の豪雨被災地、避難所である中学校の体育館では「支援のため香川県から派遣されていた保健師さんのコロナ感染が判明しました」と感染を知らせるアナウンスが流れました。体育館の被災者たちの間に、驚きと不安が広がりました。保健師さんの感染経路は不明でしたが、幸い、クライスター(集団感染)にはつながりませんでした。
駆けつけてくれるボランティアも変わってきています。「検温・マスク」は必須。交流、支援の象徴である炊き出しも、簡単にはできなくなりました。現在の被災地のほとんどが、同じ地域の住民しかボランティア活動に参加できません。そのため、圧倒的な人手不足となっています。
避難行動のあり方や避難所での常識も、変わってきています。
「体温計・マスク・消毒液・食料・水の持参」
「検温・手洗い・咳エチケットの徹底」
「ベッドや布団の配置を互い違いにする」
「食事は時間をずらして、密集・密接を避ける」
避難所の過密状態を防止するために、在宅避難、親族・友人宅などへの避難を優先する「分散型避難」を自治体は推奨しています。
3つの備え
難問山積みのなか、「100年に一度の豪雨」「1日で1カ月分の雨量」が頻繁に起こる現代、私たちができることや、備えておけることはなんでしょうか。
まずは、豪雨災害が起こった時を考え、シミュレーションしておきましょう。
(1)ハザードマップマップで自宅の危険度を知る
ハザードマップは、各自治体が公表している「防災地図」の一種で、浸水予想図を表した地図です。実は「ハザードマップ」の名称は統一されていません。作成する各市区町村によって「洪水ハザードマップ」「浸水ハザードマップ」「水害ハザードマップ」「洪水・内水ハザードマップ」などと、さまざまです。それとは別に、土砂災害を表した「砂災害ハザードマップ」もあります。
ハザードマップは役所から配布されていますが、各自治体のホームページなどからでも閲覧・ダウンロードができます。ただ、台風の接近などが起こるとアクセスが集中して、つながらないこともありますので注意が必要です。
プリントしたハザードマップに自宅の印を付け、浸水の危険があるかどうか、土砂災害の恐れがあるかどうかを確認しましょう。
(2)家族でどう避難できるかどうかを考える
「高齢者は?」
「子供は?」
「乳幼児は?」
「時間がかかる?」
「安全なルートは?」
など、具体的に考えてみましょう。
安全な場所にある「親戚」「友人」の家に避難することも考えましょう。いざとなったら、友人、親戚の家も、命を守る避難所の一つと考えましょう。そのためには、普段のコミュニケーションも大切です。
自宅の2階以上の部屋への「垂直避難」も考えましょう。
(3)災害対策グッズを備える
いざとなったら1週間は孤立しても大丈夫なように、備えることが重要です。1階が浸水すると、電気、ガス、上下水道のライフラインが途絶えます。カセットコンロ、食料、携帯トイレ、懐中時計、電池式の携帯充電器を用意しましょう。
避難行動についても、「分散避難」が常識となっていく今後は、ひとりひとり「身の安全」と「感染防止」を考えなくてはならない時代になってきています。
もちろん、命を守る最終手段として、避難所への避難は躊躇なく選択してください。
(文=草野かおる/イラストレーター・防災士)