牛乳やヨーグルトが元凶?下痢・便秘等お腹の不調、食事改善で7割の人が解消
世の中は、「腸内細菌ブーム」である。書店に行けば、「腸内フローラで健康に」「腸内細菌を整えてアンチエイジング」「腸を整えてやせる!」などの書籍、雑誌がずらっと並ぶ。最近、腸内細菌に対する研究技術が著しく進歩したことで、これまでブラックボックスだった腸内細菌に対する理解が急速に進んだ。
Lederburgという学者は、腸内細菌をたとえて「超生命体(スーパー・オーガニズム)」と呼んだ。つまり、腸内細菌は「ひとつの臓器」としてとらえてもいいくらい重要なのだ。
人体に存在する細胞は37兆個。それに対して、われわれの腸の中に住む腸内細菌数はなんと100兆個。つまり、自分の細胞よりも多くの数の細菌が、腸の中に住んでいるのだ。そして腸内細菌は、われわれの全身を整えていつも同じ状態にあるよう調整してくれている(恒常性の維持)。
ただし、この「腸内細菌健康法」ブームによって、かえってお腹の調子を崩している「腸内細菌健康法難民」がいるのをご存じだろうか?
過敏性腸症候群という病気がある。実はこの病気、地球規模の健康問題となっている現代病だ。下痢、お腹のゴロゴロ、張り、痛み……。日頃から腸の調子がすぐれないという日本人は多い。過敏性腸症候群とは、大腸内視鏡などの検査を行っても目で見える異常がないにもかかわらず、下痢、腹痛などの症状に悩まされる病気。主にストレスや幼少期のトラウマなどに原因があると考えられてきた病気で、日本人の実に13.1%は過敏性腸症候群だ。
アジア全体では全人口の9.6%を占め、地球規模の健康問題となりつつある。特に都市に住む人に多く、世界的な都市化の波によるストレスやPM2.5などの環境汚染物質が腸の炎症を悪化させることを反映している。
さて、この病気に対し、新しい知見が得られてきた。それは、腸の症状がまったくない人と、過敏性腸症候群の人に対する食事法や対処法はまったく逆だということだ。
つまり、一般的な腸の健康書に書かれているような食事法をしていると、もともと腸の調子が悪い人はさらに症状が悪化してしまう可能性があるのだ。
腸内細菌がつくる代謝産物とは
さまざまな健康本に書かれていることを概説しよう。
腸内細菌にはさまざまな種類があるが、腸内環境を整えるには、できるだけたくさんの種類の腸内細菌がいたほうがいい。腸内細菌の「多様性」が腸の粘膜のバリア機能を高め、免疫力を向上させる。