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江田証「医者だけが知っている 医療のホントとウソ」

牛乳やヨーグルトが元凶?下痢・便秘等お腹の不調、食事改善で7割の人が解消

文=江田証/江田クリニック院長、医学博士

 そして、腸内細菌の多様性を高めるには、腸内細菌のエサとなる食べ物の種類を増やすことが重要である。なるべくたくさんの種類の食べ物を食べることが大切なのだ。同じものばかりを食べていると、腸内細菌の種類まで減ってしまい、同じ菌ばかりが増えてしまう。この状態を「ディスバイオーシス」と呼び、腸内環境の劣化を招く。

 だから、アスパラガス、ネギ、豆、ゴボウなど食物繊維を摂り、納豆、味噌などの発酵食品、オリゴ糖などの特定保健用食品(トクホ)などを摂りましょう、ということだ。

 そして、腸内細菌の働きとして新しく解明されてきた重要なことがある。腸内細菌は、ただ大腸の中に住んでいるだけではなく、腸の粘膜の維持に欠かすことのできない代謝産物をつくっているということだ。

 代表的な代謝産物が以下の3つ。腸内細菌が腸内でつくる「乳酸」。これは腸の粘膜の細胞(上皮細胞)のエネルギー源となって、腸の細胞が増えるのを助ける。

 また、腸内細菌が腸内でつくる「酪酸」。これは免疫細胞が成長するのを促し、免疫力を強くする。

 最後に腸内細菌が腸内でつくる「酢酸」。これは腸管の細胞のバリア機能を高めることで、感染症を予防する。

 このように、腸内細菌はただ腸の中で生きているだけではなく、腸の中でいろいろな代謝産物をつくっており、それが血液中に入り循環することで、私たちの体全体に大きな影響を与えているのである。

誰もがあてはまるわけではない「腸内細菌健康法」

 以上のことはお腹の症状がない人にとっては有益な健康法の情報だ。

 しかし、腸の辛い症状で悩んでいる過敏性腸症候群の人の腸内細菌を調べてみると、意外なことが判明してきた。それは、下痢や腹痛などの症状が強い重症な人ほど、前述した腸内細菌がつくる代謝産物(酢酸、プロピオン酸)などが過剰なのである。

 前述のとおり、本来、腸内細菌が腸内で産生する乳酸やプロピオン酸などは腸の健康に良い影響を及ぼすものである。しかし、過剰になれば下痢や腹痛などの症状を悪化させるということである。

 ではなぜ、過敏性腸症候群の人では、代謝産物が過剰状態になってしまうのだろうか。

 最近の研究により、過敏性腸症候群の人の腸内では、ヴァイロネラという細菌とラクトバチラスという細菌が増えている。ラクトバチラスはグルコースを乳酸に代謝する細菌で、ヴァイロネラは、乳酸を酢酸やプロピオン酸に分解する細菌である。なんらかの原因によるこれらの細菌の増加が、酢酸などの代謝産物を増やし、症状を悪くしているのだ。

江田証/江田クリニック院長、医学博士

江田証/江田クリニック院長、医学博士

自治医科大学にて救急部を含む内科全科を研修後、自治医科大学消化器内科に入局。自治医科大学消化器内科助手、宇都宮社会保険病院内科医長、下都賀総合病院消化器科臨床指導医を経て現職。 日本消化器病学会総会等の学会、 シンポジウムにて現在まで25回の講演。これまで米国消化器病学会(AGA;AmericanGastroenterologicalAssociation)にて5回(サンフランシスコ、アトランタ等)、 ヨーロッパ消化器病学会(UEGW;United European Gastroenterology Week)、 アメリカボストンペプチド学会(International Symposium on Regulatory Peptides)にて2回の研究発表。
江田クリニック

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