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江田証「医者だけが知っている 医療のホントとウソ」

牛乳やヨーグルトが元凶?下痢・便秘等お腹の不調、食事改善で7割の人が解消

文=江田証/江田クリニック院長、医学博士

 つまり、腸の健康法の本を読んで、つらい腸の症状を軽くしようとまじめに実行すればするほど、症状が悪化してしまう人がいるわけだ。

新しい腸内細菌健康法 低FODMAPダイエット

 下痢便秘、お腹のゴロゴロ、張り、痛み……。そんな弱った腸を助けてくれるのが「低FODMAP食」だ。過敏性腸症候群の新しい食事法としてオーストラリアのモナッシュ大学にて開発され、最も権威のある消化器系の医学誌「Gastroenterology」誌の最新号でもその有効性が証明されている。

 FODMAPとは、「発酵性のオリゴ糖類」「二糖類」「単糖類」「ポリオール類」のアルファベット表記の頭文字に「AND」を加えて並べたもの。

 これらの糖質を避けた食事を3週間続けると、約7割の過敏性腸症候群の人で胃腸の調子が回復するという論文が出ている。腸内細菌が産生する過剰な代謝産物も減って症状が楽になる。

 これらの糖質は小腸で吸収されにくいため、小腸の中の浸透圧が高まる。すると、この浸透圧の高まりによって腸管内に過剰に水分がひきこまれ、小腸内に過剰に水分が貯留することになる。すると、これにより小腸が刺激されて運動が異常に高まり、お腹がゴロゴロしたり、痛みが出たりする。

 また、小腸で吸収されにくいこれらの糖質は大腸まで到達し、大腸内の腸内細菌と反応して異常な発酵を起こす。発酵により水素ガスがたくさん生産されるため、お腹の張りや便秘の原因になる。さらに、異常発酵は有機酸などの代謝産物を大量につくり出し、下痢や腹痛を招く。過敏性腸症候群に対して低FODMAP食は、この病気の改善に有効だと認められている。

 06年に豪州で行われた研究によると、62人の過敏性腸症候群患者に低FODMAP食を実施してもらったところ、90%近くの症状が改善した。14年には、豪州で行われた研究が権威ある医学誌「ガストロエンテロロジー」に報告されている。過敏性腸症候群の患者を(1)3週間にわたって低FODMAP食を食べたグループと、(2)通常食を食べたグループに分け、ランダム化比較試験を行ったところ、(1)のグループの70%の症状が大きく改善したという。

代表的な低FODMAP食

 日頃から胃腸の具合が悪い人は高FODMAP食を控え、代わりに低FODMAP食を摂ることがすすめられる。代表的な低FODMAP食を拙著『一流の男だけが持っている「強い胃腸」の作り方』(大和書房)のなかで解説した。

江田証/江田クリニック院長、医学博士

江田証/江田クリニック院長、医学博士

自治医科大学にて救急部を含む内科全科を研修後、自治医科大学消化器内科に入局。自治医科大学消化器内科助手、宇都宮社会保険病院内科医長、下都賀総合病院消化器科臨床指導医を経て現職。 日本消化器病学会総会等の学会、 シンポジウムにて現在まで25回の講演。これまで米国消化器病学会(AGA;AmericanGastroenterologicalAssociation)にて5回(サンフランシスコ、アトランタ等)、 ヨーロッパ消化器病学会(UEGW;United European Gastroenterology Week)、 アメリカボストンペプチド学会(International Symposium on Regulatory Peptides)にて2回の研究発表。
江田クリニック

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