災害が起きたら、避難所で生活?
大規模地震が起きた時、「避難所で食料をもらおう」と考えている人も多いのではないでしょうか。しかし、発災直後の避難所では支援が届かないこともあり、食事はなしか、最低限の「乾パンと水」くらいです。
避難所とは、台風などの「切迫した災害の危険から逃れるための避難場所」「自宅が倒壊して住む場所がない人が滞在する施設」という位置づけです。特に大規模な地震が起きた場合は、避難所には収容人数の限界があり、希望する人全員が「避難所には入れない」ということが起こります。そのため、多くの自治体が「倒壊の心配が少ないマンションや家屋の住民は、自宅で避難生活をしてほしい」という方針を打ち出しています。
自宅にとどまり生活する「在宅避難」
在宅避難には避難所にないメリットもあります。プライバシーの確保、集団生活による感染症なども回避できます。ただし、在宅避難に必要な家族の食事は、自分たちで用意しなければなりません。4人家族で1週間となると、4人×3食×7日間=84食が必要となります。非常食というと、最近ではパンの缶詰やアルファ米、発熱装置つきのミリタリー飯など、バラエティに富んでいます。しかし家族分84食、すべて「市販の非常食」で揃えることは、なかなか難しいところです。
食べながら食料を備える「日常備蓄」
家の台所の食料棚に何が入っているか、見てください。そうめんなどの乾麺、米、カップ麺、レトルトカレー、缶詰などが入っているのではないでしょうか。そんな賞味期限が比較的長く、常温で保存できる食材を多めにストックしておくことが、いざという時の非常食になります。もちろん、賞味期限が近い順番で消費するので、無駄なく非常食の準備ができます。これを「日常備蓄」または「ローリングストック」といいます。
大切なことは「いつもの味、好きな味」ということです。ストレスのかかる非常時では、いつもの味が、ほっとできる時間にかえてくれます。また、入手困難になると予想される、アレルギー対策食品、介護食、粉ミルク、液体ミルクなどは、意識して備蓄する必要があります。
日常備蓄する食品例とは……
・水
1人1日3リットル必要とされています。最低4日分を用意するとすれば、4人家族の場合、3リットル×4人×4日分=48リットル、3ケース分(2リットル×9本×3=54リットル)になります。給水車から水を運ぶ工夫も考えておきましょう。
・主食になるもの
お米、スパゲッティ、そうめん、そば、パック餅、シリアルなど。
・おかずになるもの
缶詰、瓶詰め、レトルト食品、パスタソース、ふりかけなど。
・お湯を注いで食べられるもの
カップスープ、カップ麺、インスタントみそ汁など。
・栄養補給になる食品
乾燥わかめ、きな粉、かつお節、切り干し大根、粉末の緑茶、高野豆腐、野菜ジュースなど。
・おやつ
サラミ、さきイカ、チーズ、せんべい、シリアル、羊羹、お菓子、ゼリー、フルーツの缶詰など。
・常温で比較的もつ野菜
芋、かぼちゃ、玉ねぎ、人参など。
・調理に必要なもの
カセットコンロ、予備のガス缶など。
発災時は安全確認の上、まずは冷蔵庫で痛みそうな食材から消費していきましょう。東日本大震災では、被災地への甚大な直接的被害だけでなく、首都圏を中心に広い地域に深刻な物不足が起こりました。スーパーの棚からは、パン、カップ麺、レトルト食品、米、水、肉、野菜、牛乳などの生鮮食品も消えました。何が起こるかわからない時代、1週間は乗り切れるよう、自前で備えることが大切です。
(文=草野かおる/イラストレーター・防災士)