昨年、日本列島はさまざまな自然災害に襲われた。西日本の豪雨や台風、北海道胆振東部地震など、それぞれ甚大な被害となったが、いずれも停電が発生した。停電すると、部屋の電気がつかないばかりか、スマートフォンの充電もできなくなるなど、現代人の生活に大きな支障をきたす。
何より深刻なのは食事の問題だろう。オール電化でなくても、冷蔵庫が使いものにならなくなり、炊飯器で米を炊くこともできなくなる。そんな状況下で、日本最大級のレシピ投稿・検索サイト「クックパッド」では、ある現象が起きていたという。
北海道地震で「土鍋でご飯」の検索が急上昇
クックパッドは、食材名のみはもちろん、「なす おつまみ」のように食材とシチュエーションや目的をかけ合わせた検索もできるため、多種多様な「食の検索ワード」が集まるサイトでもある。そんなクックパッドが、2016年4月14日に発生した熊本地震と18年9月6日に発生した北海道胆振東部地震の被災地域に関するデータを発表した。
「クックパッドでは、熊本地震発生以降と北海道胆振東部地震発生以降のレシピ検索動向(※)から、被災地域の食生活の変化を分析しました。同調査では、それぞれの地震発生直後、3日前に比べて熊本でレシピ検索頻度が77.1%減少し、北海道では検索頻度が73.0%減ったことが明らかになりました」(※クックパッド調べ。震度5弱以上の揺れを観測した地域<震源地からおよそ75km圏内>の地域で調査)
そう語るのは、クックパッドのストラテジックプランニンググループでグループ長、アナリストを務める村上雅洋氏だ。北海道では、電気・ガス・水道などのライフラインは徐々に復旧したが、被災者の人たちが検索した内容に、ある特徴が見られたという。
「発生当日の検索キーワードの1位が『ご飯』だったんです。3位は『土鍋でご飯』、4位は『白米』など、ご飯の炊き方に関するキーワードがランキングの上位を占めました」(村上氏)
地震発生前日の9月5日の検索キーワードの上位には、「なす」や「鶏胸肉」など旬の野菜や肉類が名を連ねていたという。レシピの検索内容が一変した理由を、村上氏はこう解説する。
「北海道全域で大規模な停電が発生し、炊飯器が使えないため、『土鍋』や『圧力鍋』で炊飯する方法が多く検索されたようです。災害時には、ライフラインが止まる上に食材の調達が難しくなるため、『主食を確保したい』という気持ちから、ご飯のレシピが重宝されたようです」(同)
11年3月11日に東日本大震災が発生した際も「ご飯」「パン」の検索頻度が上がったものの、その振り幅は北海道や熊本に比べて小さなものだったという。
「東日本大震災で検索が少なかったのは、災害の規模が大きすぎたことが理由として考えられます。また、津波により、調理器具はもちろん、食料の調達が難しかったことも影響しているのかもしれませんね」(同)
「パンのつくり方」の検索が急上昇した理由
地震発生直後は「ご飯の炊き方」が検索されていたが、数日後には変化が起きたという。
「地震発生から2日後の9月8日以降は、『ホットケーキミックス』や『小麦粉』などの粉物を使った『パンのつくり方』の検索が急上昇しました。これは、熊本地震でも見られた傾向です。主食としての米飯に飽きたというユーザーの気持ちが反映されているようです」(同)