ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 日本列島、火山活動が活発化の可能性
NEW

日本列島、いつ噴火してもおかしくない活火山が110カ所超…火山活動が活発化の可能性

文=島村英紀/武蔵野学院大学特任教授
【この記事のキーワード】, , ,
日本列島、いつ噴火してもおかしくない活火山が110カ所超…火山活動が活発化の可能性の画像1霧島連山の硫黄山が噴火した際の様子(提供:気象庁/ロイター/アフロ)

 このところ、太平洋各地の火山が騒がしい。ハワイのキラウエア山で噴火が続いているなか、中米グアテマラではフエゴ山が噴火して300人以上の死者・行方不明者を出した。

 一方、日本でも、九州・霧島火山、箱根、草津白根山が、一時よりは噴火警戒レベルが下がったものの、噴火かそれに近い状態が続いている。また、北海道・十勝岳では火山性微動が発生し、気象庁が臨時の現地観測を行うまでになっている。

 これらは、いずれも太平洋の周辺で起きている。環太平洋は火山が多く、地震も活発なところだ。それは、太平洋プレートとその兄弟分のプレートが動き続けているためだ。太平洋プレートが動く速度は年間約10cmと世界一速い。そのため、地震も火山噴火も多いのだ。

100年近く「大噴火」がない日本

 ところで、プレートの動く速さは一定であり、年によって変動するものではない。そのため、プレートの動く速さが変わるために噴火が増えたり地震が増えたりすることはない。

 しかし、自然現象である噴火や地震は、年ごとに一定の頻度で起きるものではなく、増えたり減ったりする。たとえば、19世紀から20世紀はじめは「turn of the century」といわれる世界的に地震が多い年が続いた。だが、なぜある時期に集中して地震や噴火が起きるのかは、いまだわかっていない。

 その上、統計学的には、実際に多くなっているかどうかは数十年後に振り返らないとわからない。つまり、現在が過去に比べて多いかどうかは、今の段階では統計学的にはわからないし、そのメカニズムも解明されていないのだ。

 また、プレートの厚さはせいぜい100~150km。広がりが1万kmもあることから見て、一方の側を押したからといって反対側に影響があるとは思えない。

 つまり、日本から見て1万kmも離れた場所の噴火や地震が、日本に直接的な影響を及ぼすことはあり得ない。それゆえ、日本からはるか離れたところの噴火は、日本から見れば「たまたま起きた」ものといわざるを得ないのだ。

 ただ、火山をつくっているマグマの性質でいうと、グアテマラは「日本型」の火山噴火で「火砕流」による被害だった。一方、ハワイは地表を溶岩が流れる「溶岩流」による被害だった。

 それは、マグマの粘り気(粘性)が違うからだ。ハワイのマグマはサラサラしていて流動する。一方、グアテマラや、27年前に43人が一瞬で亡くなる大惨事を起こした雲仙普賢岳はマグマの粘性が高いため流れにくい。

 雲仙普賢岳では、火口から出てきたマグマが流れずに「溶岩ドーム」をつくってしまった。その溶岩ドームが次の噴火で崩れて噴出し、大きな火砕流を生んで悲劇を起こしてしまったのである。

 火砕流は火山ガスや火山灰が混合したもので、高温の上に軽くて遠くまで届く。海も越えてしまう。温度は軽く200℃を超え、速度は遅くても自動車並み、速ければジェット機並みだ。襲われたら、とても逃げられない。走って逃げられる溶岩流とは違う。

 20世紀最大の火山被害も火砕流によるものだった。1902年に起きたカリブ海・仏領マルティニーク島の北部にある活火山プレー山(標高約1400m)の噴火が火砕流を起こし、県庁所在地だった人口約3万人のサン・ピエールを瞬時に全滅させてしまった。

 噴火の規模を示す指標はいくつかあるが、噴火のときに火口から飛び出したものの体積を立方mで表すのが一般的だ。東京ドームは124万立方mあるが、その東京ドームに換算すると250杯分以上のものを「大噴火」という。

 この「大噴火」は、過去にたびたび日本でも起きている。正式な記録が残っている18世紀以降では、各世紀に4~6回の「大噴火」が日本のどこかで起きており、富士山や伊豆大島も「大噴火」を起こした。

 ところが、不思議なことに、20世紀のはじめに2回の「大噴火」があった後、現在に至るまでの100年近くはないのである。その2回とは、1914年に起きた鹿児島・桜島の噴火と、1929年の北海道・駒ヶ岳の噴火である。

東日本大震災の影響で噴火が増える可能性も

 不思議と「大噴火」がない、ある意味では「異常な」時代が続いているが、この先いつまでも日本で「大噴火」が起きないということはあるまい。

 過去の状態に戻り、さらに今までより噴火が増えるきっかけが、2011年の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)であったと考える根拠がある。

 東日本大震災は、マグニチュード9.0という世界的にも珍しい巨大な地震で、広く日本の地下にある基盤岩を一挙に動かしてしまった。そのときに動いた量は、震源に近い宮城県の牡鹿半島で5mを超え、遠くになるにしたがって徐々に小さくなっているが、それでも首都圏の地下で30~40cmに達した。プレートがゆっくり動いていたときの何年分もが、一挙に動いてしまったのである。

 プレートの動きや地下の岩盤の動きが地震を起こすのに対して、火山活動はプレートの動きが地下でマグマをつくり、それが上がってくることで噴火となる。いずれも、巨大なプレートが動き、さらには大きな日本列島の地下で起きる現象だけに、時間の遅れが生じる。その意味では、東日本大震災から7年たったとはいえ、日本はまだ「執行猶予期間明け」とはいかない情勢にある。

 次に日本のどの火山が噴火するのかは、現在の火山学ではわからない。しかし、活火山数だけでも110を超える日本には、いつ噴火してもおかしくない火山が多いのだ。
(文=島村英紀/武蔵野学院大学特任教授)

島村英紀/武蔵野学院大学特任教授

島村英紀/武蔵野学院大学特任教授

武蔵野学院大学特任教授。1941年東京生。東京教育大付属高卒。東大理学部卒。東大大学院修了。理学博士。東大助手、北海道大学教授、北海道大学地震火山研究観測センター長、国立極地研究所長などを歴任。専門は地球物理学(地震学)。一般向け、子ども向け共に著書多数。『地震と火山の島国―極北アイスランドで考えたこと』(2001年、岩波書店・ジュニア新書)で産経児童出版文化賞を受賞。講談社出版文化賞、産経児童出版文化賞、日本科学読物賞をそれぞれ受賞。ポーランド科学アカデミー終身会員。

日本列島、いつ噴火してもおかしくない活火山が110カ所超…火山活動が活発化の可能性のページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!