日本海に浮かぶ島、長崎県対馬市。古くは『魏志倭人伝』や『日本書紀』にも登場する歴史ある島に、異変が起きているという。韓国・釜山まで最短で49.5キロという位置に浮かぶ対馬には、近年になって韓国人観光客が殺到している。それだけならまだしも、韓国資本が対馬の不動産や土地を買収する動きが活発化しているというのだ。
なぜ、対馬の土地は韓国人に買われてしまうのか。また、対策はどのようになっているのか。これまで何度も対馬に足を運び、現地の取材経験も豊富な産経新聞社編集委員の宮本雅史氏に話を聞いた。
この10年でコリアンタウンに変貌した対馬
「対馬は、この10年で大きく変わった」と宮本氏は言う。
「10年前に訪れた際には、『韓国人お断り』という貼り紙をした飲食店が数多くありました。当時、すでに年間10万人くらいの韓国人観光客が来ていたのですが、マナーの悪さが目立ち、島民にはあまり歓迎されていませんでした。盗難防止のために、ホテルの冷蔵庫やテレビは鎖につながれていることもあったくらいです」(宮本氏)
しかし、10年たった今、そうした貼り紙はほとんどない。それどころか、比田勝のフェリーターミナルを降りると、韓国人観光客専用のツアーバスが何十台も列をなし、観光客を待ち構えている。免税店には韓国人が殺到し、まるでコリアンタウンの様相を呈しているという。Tシャツに短パンという、近所にふらっと遊びに来たかのような出で立ちの観光客も少なくない。もはや、韓国人にとって対馬は“気軽に立ち寄れる場所”なのだ。事実、フェリーに乗って免税店で買い物をし、日帰りで戻っていく人も多いという。
「昨年は37万人の韓国人が対馬を訪れました。対して、日本人の島民は3万人。住民票を置いたまま本土に働きに出ている人もいるので、実際に住んでいる人の数はもっと少ないかもしれません。かつてあったような韓国人観光客への抵抗感は、すっかり消え去りました」(同)
一方で、韓国人観光客が増えると同時に、島の土地や民宿、民家などが次々に買収されるようになった。その結果、韓国人なしには島の経済が成り立たなくなってしまったのだ。
「かつて日本一人口密度が高いといわれた川端通りの飲食店街は、今や韓国人御用達の店だらけです。店舗を買収した韓国人が経営者となって、島民を従業員として雇っているケースも少なくありません。民宿や釣り宿なども買収されました。したがって、大勢の観光客が来たところで、彼らがお金を落とすのは韓国資本が関係するホテルや飲食店、免税店。島自体にはそれほどお金は落ちないといいます。つまり、対馬は単なる場所貸しになってしまっているようです」(同)
仕事がなく定年を迎えると、島を後にする島民もいる。すると、今度は空き家になった民家をまた韓国人が買う。高く買ってくれる人がいれば、売り手にとっては、それが日本人だろうと韓国人だろうと関係はない。少し前だが、2008年に海上自衛隊対馬防備隊本部に隣接する土地が韓国資本に買収され、韓国人観光客を受け入れるリゾートホテルになったことは衝撃を与えた。
「海上自衛隊本部の隣の土地が韓国資本の手に渡ってしまったのは、安全保障上も大きな問題です。しかし、韓国からすれば『買えるものを買っただけ』にすぎません。しっかりと規制をせずに曖昧に放置していた日本に責任があります。アメリカでも韓国でもどの国でも、他国の人間が土地を買う際には制限が設けられていますが、日本にはその規制がありません。国際的に見ても異常なことが実際に起きています」(同)