旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の創始者である文鮮明氏の発言録「文鮮明先生み言葉選集」が、インターネット上に流出している。
「文鮮明先生み言葉選集」とは、文鮮明が1956~2009年に韓国内で行った説教の内容を、韓国の教団系出版社である成和出版社(現天苑社)が信者たちに向けて韓国語で発行したもので、全615巻からなる。
「み言葉選集」の一部を和訳したものは日本でも発行されているが日本語版では、韓国語の原本に掲載されている、日本に対する批判的な表現が一部抜けているという。元信者の証言によると、「み言葉選集の内容を知っている日本人は少ない」という。
その内容は、実に過激なものである。
「日本の天皇と韓国の王とが交差結婚をしなければなりません。その次に上・下院が交差結婚しなければなりません。日本で言えば、首相と大臣たちがすべて韓国の怨讐たちと完全に交差結婚しなければならないのです」(「文鮮明先生み言葉選集」346巻より/第十一回「七・一節」記念礼拝のみ言葉2001年7月1日)」
「天皇陛下をはじめ、日本の閣僚が韓国の教団幹部と結婚式をするべき」という驚愕の内容だが、和訳する際に「日本の天皇と韓国の王とが交差結婚をしなければなりません」という天皇陛下に関する発言部分が削除された。
また、天皇家との交差結婚について、以下の発言もある。
「それでは、その(文教祖の)息子、娘を中心として後孫(子孫)が三代になったら、すべて国際結婚する時が来ます。ですから国境で怨讐(敵)になっていた人たちを中心に結婚するのです。怨讐(敵)の国の人と結婚するのです。日本の皇室と(文教祖の)孫たちが結婚する時が来て、すべての国の王権の代表者たちと結婚する時代に入るというのです」(「文鮮明先生み言葉選集」328巻より)
さらに、なんと「天皇陛下を暗殺したかった」という危険な発言もある。
「(日本を)殴って捕まえるか、どのようにするか。(日本は)怨讐中の怨讐であるために二重橋宮殿(皇居)を私の手で爆破しようとしたのです。裕仁(※昭和天皇)を私の手で処理するのだと思った人です。しかし神様の心情を見る時、怨讐を愛しなさいと言うのです。二重橋の前を通る度に『奴の二重橋がいつ破壊されるか見てろ』と思いました」(「文鮮明先生み言葉選集」402巻より)
また、日本の女性に関して、日本人としてのアイデンティティーを失わせようとするような発言もある。
「これからは(統一教会で)祝福された日本の女性たちは、君が代よりも独島の歌をもっと歌わなければなりません」(「文鮮明先生み言葉選集」479巻より)
「日本の皇室の貴重な娘たちが韓国の農村に入って、漁師の妻になり、農夫の妻になると自ら申し出ることができるそのような時が来れば、日本が解放されるという考えをしなければなりません」(「文鮮明先生み言葉選集」333巻より)
日本を「“原罪”を犯した“エバ国家”」と呼び、日本の女性に対する蔑視発言もある。
「日本にいた頃は苦労した。日本の女性はあからさまです。韓国の女は男がついてくると逃げ出すが、日本の女は男の寝床に這いつくばる」( 「文鮮明先生み言葉選集」第239巻より)
「日本の女性は必ず嘘をつきます。エバの国である日本の女性は、エバの特徴をそのまま残している。だから嘘が上手なんですね」( 「文鮮明先生み言葉選集」巻より)
「日本の女性たちは、韓国の服を着なさい! 日本のすべてのものを一切捨てなさい! 慟哭しながら朝鮮総連の女性と民団の女性を母の心情で包容しろ!」(エバ国家の使命 1992年11月7日 韓国・中央修練院)
そして領土問題に関しては、竹島どころか九州までもが韓国の領土だという認識らしい。
「日本と韓国の国境をどのようにするのですか? 日本は独島を自国の領土だと主張しています。このバカ野郎たち! それはだめです」(「文鮮明先生み言葉選集」332巻より)
「九州地方は韓国の土地(領土)です。四国も。わかりますか? 沖縄とこの三つが韓国の土地(領土)です。対馬も韓国の土地(領土)です」(「文鮮明先生み言葉選集」473巻より)
旧統一教会が「国際勝共連合(勝共)」のプロパガンダの下、保守派の政治家や笹川良一など保守派の実業家に上手く取り入るために、反日思想を隠す必要があったのだろうか。
鈴木エイト氏にインタビュー
20年間にわたって旧統一教会について取材してきた、ジャーナリストで 『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)の著者、鈴木エイト氏に「み言葉集」についてインタビューした。
「私は2009年1月、韓鶴子(現世界平和統一家庭連合総裁)の“国家復帰プロジェクト(統一教会を日本の国教にしようとするという計画)”に関する教団内部資料を入手しました。そこには、韓鶴子が広島に原爆が落ちたことを引き合いにして、日本へ(太平洋戦争で朝鮮に侵略したことに対して)の“悔い改め”を迫り、日本の幹部に対して“日本の最高指導者”を“屈服”させ“教育”しろという指令が書かれていました」(鈴木氏)
旧統一教会は“表”では「反共」のプロパガンダの下に連携するが、“裏”では日本の政治家を操ろうと策謀していたというのだ。この点、多くの日本の政治家達はその“裏”に気付いていなかったのかもしれない。
さらに鈴木氏によると、安倍晋三元首相をもターゲットにする発言があったという。
「2018年9月、韓国で行われた日本人幹部“公職者”修練会において、韓鶴子総裁は日本の統治者(当時は安倍晋三元首相)に対しても、“ひっくり返して打ち負かし、屈服させて教育をしなければならない”と指示していました」
その“み言葉”は、以下のとおりである。
「1945年に広島に何が落ちましたか。(中略)悔い改めなければなりません。どのように間違ったのか、悔い改めなければなりません」
「皆さんは“国家復帰”の責任を果たすと決意しました。国家の復帰の責任を果たすにおいて、まずはその国の最高指導者を(私たちの教えで)打ち負かさなければなりません。屈服させなければなりません」
「日本が進むべき道に対して、見せてあげ、教えてあげ、教育しなければなりません。そのため、家庭連合の祝福を受けなければならないと教育しなければなりません」
「日本が責任を果たすことができるように、最高責任者(当時は安倍晋三元首相)からひっくり返しておかなければならないですか」
鈴木氏によると「(太平洋戦争の歴史的な過ちという)罪悪感や贖罪意識を刷り込まれ、国家復帰の責務を負った日本の幹部が末端信者を駆り立てきた。その末端信者が一連の正体隠し勧誘や霊感商法などを行い、韓国の教祖一族へ毎年数百億円を貢いできたという構図だ」という。
ある意味、文鮮明や韓鶴子ら一部の幹部以外は、「罪悪感や贖罪意識」をマインドコントロールされた被害者でもあるのだろう。
そう考えると、国会で議論されている「被害者救済法案」は“マインドコントロール”の定義もされておらず、不十分だといえよう。旧統一教会のみならず、人間の心の隙間に踏み入るカルト宗教の被害をなくすためには、まだまだ詰めるべき点が多々あるだろう。
(文=深月ユリア/ジャーナリスト・女優)