行列の先は?
ジリジリと照りつける日差し、役所の入り口から外の通りまで伸びる人の列。並んでいる人々の顔には、疲労の色が浮かび、いらだちも隠せない。この数百人におよぶ列は、スマートフォンや携帯電話に充電するための電源を求める市民の列。午後1時半を回ったばかりの時間なのに、突然「受付を終了」と書かれた看板を持つ警備員が現れた。ざわつく人々、「終わりってどういうこと?」と警備員に詰め寄る人も出た。受付の終了は「今並んでも4時間以上かかり閉庁になるから」という理由だった。これは一昨年、北海道胆振東部地震で起きた北海道全域の停電“ブラックアウト”を受けての、市役所による充電サービスの風景。
これと同じ風景が、今年もあった。次々と日本を襲った大型台風による停電のあとに、各地で繰り返されたのだ。なかには貴重なガソリンを使って車で駆けつけた人も多く、「200人待ち、1人30分間の充電」の現実に、がっくりと肩を落とす人も。
平常時より消耗する携帯電話のバッテリー
「電池切れ」は携帯電話につきものですが、車や電車で移動をしている時、電波が届きにくい山の中など、スマホの電池の減りが早いと感じたことはないでしょうか?
それは、スマホが新しい基地局の電波、より強い電波を検知しようと、がんばってしまうから。その結果、電池を大きく消耗させます。
大きな災害が起きた際、スマホはどのような使い方がなされるでしょうか。想像してみてください。緊急警報、家族への電話、SNS、避難のための移動、情報の検索、懐中電灯代わり、被災写真の撮影などで使用していれば、あっという間に「電池切れ」の危機に陥ります。
発災時にすぐできる「省電力モード」
災害が発生した時は、携帯電話の電池を節約するために「省電力モード」にしましょう。自分でできる方法としては、「ディスプレイの明るさを落とす」「不要なアプリを終了する」「機内モードにする」など。機種によっては節電機能「緊急省電力モード」というのもあります。自分が使用するスマホの機能を確認しておきましょう。
モバイルバッテリーの所有率は2割
電源がなくても充電できる「モバイルバッテリー」は、心強いアイテムです。10月に台風15号が日本に接近する直前には、防災用品として売り切れが続出しました。そもそもモバイルバッテリーの所有率は2割ほどといわれており、8割の人びとは所有していないということです。バッテリーは、あらかじめ電源で充電しておかないと利用できません。台風など停電のリスクが予想される場合など、あらかじめ「充電したバッテリー」を用意していれば、心強いといえます。
スマホなどの携帯電話の充電には、バッテリーのほか、 車のシガーソケットから充電する方法や、電池から充電する方法(充電用電池ボックス)、太陽光の利用(ソーラーパネル式充電機)、手回しで発電・蓄電する方法(手回し充電器)などがあります。100円ショップでも、充電用電池ボックスやシガーソケット用USB充電器など売られています。いずれも充電ケーブルや電池などは別売りなので、セットで用意しておくのがおすすめです。電気機器なので、自分の携帯電話に対応するか確認してから揃えましょう。また、こうした充電方法について知らない高齢者などが身近にいたら、教えてあげましょう。
今や連絡手段だけでなく、貴重な情報源でもある携帯電話は、まさに情報のライフライン。充電器は災害への備えの一つとして必要です。
(文=草野かおる/イラストレーター・防災士)
・参考サイト 「バッテリー所有率」