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高齢者世帯の4割は老後破産状態?少ない年金、住宅ローン、子どもの借金…貯蓄4千万でも危険

文=藤村紀美子/ファイナンシャルプランナー・高齢期のお金を考える会
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高齢者世帯の4割は老後破産状態?少ない年金、住宅ローン、子どもの借金…貯蓄4千万でも危険の画像1「Thinkstock」より
 テレビ週刊誌などでは、「老後破産」と銘打ち老後の生活に苦労している高齢者を取り上げることが増えています。

「老後破産」とは、高齢者が生活保護基準より低い収入で生活している状態を指し、現在、高齢者世帯の約4割が老後破産状態にあります。一人暮らしの世帯の半数は低収入で、そのうち3分の1は生活保護を受けており、残り3分の2の高齢者が老後破産の状態にあるようです。

 これらの人々は定年退職前には自分が老後破産するということは考えたこともなかったといいます。会社員として定年まで働き、退職時には2000~4000万円の貯蓄があった人もいます。

 では、どうして老後破産になってしまったのか、原因を考えてみましょう。

 第1の原因として考えられるのは、年金が生活費より少ないケースです。2014年度の国民年金の月額は満額で6万4400円、夫婦2人で12万8800円と、生活できる金額ではありません。この金額は子世帯と同居することを前提に決められたものです。今後さらに年金額は減り、健康保険料、介護保険料は値上がりして年金から引かれるために、生活はますます苦しくなります。

 厚生年金については、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額は22万6925 円で、平均的な生活費とされている27万円より約5万円低く、生活するのは大変です。そこで、足りない部分を補うためには貯蓄が必要になります。夫婦で3000万円あれば老後の生活費は賄えるといわれていますが、老後破産してしまう場合もあります。

 第2に、医療費の使い過ぎや、子どもの借金の返済を負担するケースです。貯金があっても、保険の利かない医療にお金を使い過ぎないことが大切です。高額医療には高額療養費制度を利用して支出を抑えましょう。子どもの借金は子どもに返済させましょう。援助し過ぎると、自分の老後が破綻してしまいます。

 第3に、定年を過ぎても住宅ローンが残っているケースです。年金収入だけでは生活費も足りない状況ですので、ローンなど払っている余裕はありません。定年までに払い終わるようなローン設計をしなければ老後破産となります。

生活が成り立たなくなったら、遠慮せずに生活保護を申請するべき

 老後破産しないために、どうすべきかを検討しましょう。

(1)住宅ローンは退職するまでに払い終わる計画を立てる。
(2)退職までに老後生活に必要な貯蓄をする。ちなみに、現在50代の3人に1人が貯金ゼロといわれています。「老後生活費の総額-年金収入の合計額=必要貯蓄額」です。
(3)老後は「年金+貯蓄」の範囲内で生活する。

 以上のことに注意して生活していても、貯金を使い果たし、毎日の生活が成り立たなくなったら、市区町村役場に相談しましょう。高齢者の8割くらいは自宅を持っているので、自宅を担保に生活資金を貸してもらえるかもしれません。貸してもらえない場合は生活保護を申請しましょう。

 憲法第25条は、国民に健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障しています。それを受けて、生活保護法第1条では、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障すると規定しています。現在、2人世帯では月18万円位、1人世帯では12万円位を生活保護基準額として、年金との差額を支給してもらえます。医療費も無料になります。

 老後は気力、体力、知力が落ち、不安な気持ちになりやすく、その上、満足な食事もとれないとなると、死にたくなってしまいます。

 しかし、生活保護の範囲内で暮らすことができれば生活の不安は減り、老後破産にならずに済みます。
(文=藤村紀美子/ファイナンシャルプランナー・高齢期のお金を考える会)

藤村紀美子/ファイナンシャルプランナー・高齢期のお金を考える会

藤村紀美子/ファイナンシャルプランナー・高齢期のお金を考える会

(立教大学ドイツ文学科)卒業後研究室で副手を1年務め結婚。女児2人を出産し、下の子が3歳になったときに(中央大学法学部)に学士入学。法律の面白さに惹かれ、卒業後も勉強を続ける。宅建とFP試験に合格(CFP、宅地建物取引士)。その直後夫の赴任に伴いアメリカに約8年居住。帰国後FPとして働き始める。講演、相談、執筆を行う。その間、簡易裁判所、家庭裁判所で調停委員、参与員、司法委員を定年まで勤める。
著書:「100歳まで安心して暮らす生活設計」(共著)、「どっちがお得?定年後のお金」(共著) ‘高齢期のお金を考える会’メンバー。高齢者施設を多数見学し、高齢者施設の種類、内容、注意点、選び方等を勉強する。

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