8月26日付日本経済新聞電子版記事『建材高、実体経済に影 マンション発売減、セメント値上がり』によると、「建設資材や人件費などの上昇がマンションなど建物価格に波及している。野村証券の調査では、マンションなど建築物の建築着工単価は今年6月で1平方メートルあたり18万5600円。1年前に比べ9%高い。建設コスト上昇がマンションの発売減や工事の入札不調を招くなど実体経済に影を落としている」という。
現在、東京都心の新築分譲マンションは富裕層が相続税対策に購入、また中国系をはじめとした外国人投資家が投資用に購入するなどの影響により、売り上げは好調をキープしている。
このような住宅事情について、住宅ジャーナリストの榊淳司氏は次のように読み解いている。
「都心のマンション市場は、ちょっとした異常事態になっています。売れるべき物件はあらかた売れてしまい、残っているのは売れない理由がある物件です。あとから振り返ったときに、ミニミニバブルの頂点はここ数カ月ということになるのかもしれません。土地の値段と建築コストが上がっているのですから、この先、新築分譲マンションの価格が上がるのは自明のことです。そのような中で、問題は値上がりした状態でも売れるかどうかということです。また消費者目線では、価格が上がったマンションを買ってもいいかという点も気になります」
購入を検討するのであれば、新築分譲マンションよりも中古マンションがよいということになるだろうか。では、中古マンション購入の是非の判断基準はどのようなところにあるのだろうか。
「マンションに致命的な欠陥があれば、たいてい築10年以内に露呈します。従って、最初の10年間で大きな欠陥が発見されなければ、その後の10年あるいは20年も大丈夫である可能性が高いといえます。つまり、10年を過ぎた物件が買っていいかどうかを判断する基準になります。また、マンション市場は2002年が底値であったといわれています。それから10年が過ぎ、その頃に建築されたマンションの資産価値が明確に出ているので、それが検討する際の目安になるでしょう。ちなみに、06~08年はマンションミニバブルの時期ですので、その頃の物件は元値が高くなっており注意が必要です」(同)
●賃貸価格が大幅に下落する可能性も
さらに、榊氏は今後の賃貸価格の下落を懸念している。その予測が確かならば、マンション分譲業者の「立地や広さなど、同じような条件であれば賃貸よりも購入したほうが月々の支払い額は安くなります」というセールストークが通用しなくなる時代を迎えるかもしれない。
「売れない理由がある物件が続々と賃貸に回っています。それでも借り手がつかないので、都心の家賃月40万円は下らないはずの物件が、月20万円台にまで下がっているほどです。現在、ミニミニバブルと呼ばれるマンション好況の中で購入している人の多くは、賃貸目的です。さらに今後は東京都の震災対策によって、『特定緊急輸送道路』沿いに位置する耐震基準に満たないビルは取り壊しを余儀なくされ、賃貸マンションへ建て替える物件も増えるでしょう。つまり、続々と賃貸市場に物件が出てくるのです。賃貸市場の供給過剰は加速する一方になります。マンションの販売価格の下落幅以上に賃料は大きく下落していくでしょう」(同)