不動産情報サイトはリクルートホールディングス傘下のリクルートが運営する「SUUMO(スーモ)」、ネクストの「HOME’s(ホームズ)」、アットホームの「at home(アットホーム)」が大手で、賃貸、新築・中古など多彩な物件情報を提供している。各社のホームページによると、SUUMOの掲載件数は賃貸物件が172万件、HOME’sは全物件425万件、at homeは同151万件となっている。
ヤフーが運営する不動産情報サイト「Yahoo!不動産」には現在、at homeなど従来から不動産情報を扱っている会社から仕入れた中古情報を掲載し、問い合わせてきた顧客の情報を提供元の会社にフィードバックする形式を取っている。これを来年1月から独自に収集するかたちに一新する。
掲載料金は1店舗当たり月1万円の定額。中古物件の物件情報を無制限に掲載できるのがウリだ。入会金や初期設定にかかる費用もない。10月31日に終了するが、当初2カ月間は無料にするキャンペーンを展開中で、価格で勝負だ。
リクルートのSUUMOは1枠の基本枠の場合で月3万円、5枠で8万円、10枠で15万円。ネクストのHOME’sは月1万円で物件を無制限に掲載できる点はヤフーと同じだが、メールや電話での問い合わせ件数に応じて課金される。中古物件の問い合わせ件数が5件までの場合、1件当たり物件価格の0.05%が課金される。ヤフーは他社より大幅に安く設定して、全国約6万店の不動産会社のうち、まず1万店と提携し、30万件分の情報を掲載したいとしている。30万件になればSUUMOなどの中古物件の掲載数を上回ることになる。
不動産情報サイトは料金の競争だ。不動産広告は件数により掲載料金が決まるからだ。大量の解約は料金体系を変更した際に起きやすい。ヤフーは破格の条件で、他社のサイトの顧客を奪い取る作戦に出た。先発各社は、どんな料金体系で迎え撃つのか。ヤフーの本格参入で、不動産情報サイト間の競争は一層、激化することになる。
●eコマース事業に勝負をかける
ヤフーの不動産情報サイトへの本格参入は、電子商取引(eコマース)事業強化の一環である。ヤフーの宮坂学社長は「Yahoo! JAPANで一丸となって勝ちに行く」と、今年度はeコマース事業に勝負を賭けると宣言した。
ヤフーの足元の業績は絶好調だ。2013年4~6月期連結決算は売上高が前年同期比19.0%増の923億円、営業利益は同15.4%増の486億円、純利益は同28.7%増の322億円だった。4~6月期としては17期連続で最高益を更新した。
主力のインターネット広告事業では、検索されたキーワードに応じてテキスト広告を表示する検索連動型広告を中心に広告収入が増加。広告関連事業(マーケティングソリューション事業)の売上高は632億円と20.1%の増収だった。
電子商取引ではオークションを中心に取扱高が増加。特にスマートフォン(スマホ)を経由した取引比率が17.8%から24.1%に伸びた。電子商取引事業(コンシューマー事業)の売上高は前年同期比8.8%増の259億円に拡大した。
しかし、市場が急拡大しているeコマース事業では、ヤフーはショッピング事業(ショッピング・トラベル)、オークション事業、その他(クレジットカード、金融商品)に分類しているが、4~6月期のeコマースの取扱高は同3.7%増の4112億円。こうした中でショッピング関連事業の取扱高(構成比18%)は735億円で、同1.4%減のマイナス成長だった。eコマース事業は、入札による個人間取引の「ヤオフク!」に依存している構図がうかがえる。
ヤフーのeコマース事業は、4~6月期取扱高ベースで楽天の3分の1。8月6日、傘下に収めたオフィス用品配達サービスのアスクルと運営している「LOHACO(ロハコ)」のサイトを刷新した。アスクルの最新鋭の物流センター(埼玉県入間郡)が稼動したのに伴い、消耗品、飲料、食品などの定番品を大幅に拡充。人気ブランドが揃う「LOHACOブランドモール」をオープンした。
8月1日には、パソコンや家電の価格比較サイト「コネコネット」を運営するオセニック(旧・ベンチャーリパブリック)の全株式を取得すると発表した。また、医療情報サイト「MR君」を運営するエムスリーと組み、インターネット上で診察を予約できるサービスを10月から始める。
こうした一連の強化策の1つが、中古不動産サイトへの本格参入であり、同社のeコマース事業の行方を左右するとみられている。
(文=編集部)