総務省が5年おきに公表する「住宅・土地統計調査」によると、13年の日本の空き家は約820万戸、総住宅に占める割合は13.5%といずれも過去最高を記録した。このままのペースで推移すれば、いずれ日本全体の空き家率は40%になるという予測もある。それにもかかわらず供給過剰状態が続けば、賃貸価格の下落が避けられないのは自明の理だ。
マンション分譲業者のセールストークになぞらえれば、「立地や広さなど、同じような条件であれば毎月の支払いは賃貸のほうが安くなります」となってしまうのだ。
●“最低賃貸価格”は5万3700円?
ところで一般的な物件の賃貸価格はどこまで下がるのだろうか?
下限を予測する上で一つの目安となるのは、東京の1人暮らし用マンションでは5万3700円だという。その根拠は、東京23区において生活保護を受給する単身者の住宅扶助基準額が原則5万3700円だからだ。
つまり、家賃が5万3700円を割るようであれば、大家にとっては住宅扶助を受けられる生活保護受給者に貸したほうがいいという計算が働く。5万3700円は、日本政府が保障する事実上の“最低賃貸価格”となっているのだ。
多くの物件の賃料は、5万3700円に向かって大きく下落していく。しかも、厚生労働省は13年1月に生活扶助引き下げ方針を発表しており、“最低賃貸価格”が引き下げられる事態もありそうだ。つまり、この厚生労働省の生活扶助引き下げ方針は、生活保護受給者と大家だけでなく、一般の賃貸住宅居住者にとっても影響を与えるのだ。ひいては、マンション分譲価格にも影響を与える可能性もある。
今後は、5万円台で住める物件が続々と出てくる可能性があるにもかかわらず、今から、毎月の返済額が10万円前後で35年住宅ローンを組むことなど、経済学的には非常にリスクが大きい話なのだ。
結論としては、資金に余裕があってリスクを受け入れられる人は新築分譲、余裕はないがリスクを覚悟の上でマンションを買いたいという人は10年超の中古、それ以外の人は賃貸物件で価格交渉術を磨くというところだろうか。
(文=松井克明/CFP)