焼き鳥チェーン店の鳥貴族が2014年の上場以来、初の赤字に転落する。
2019年7月期通期の単独売上高の予想を379億円から358億円に引き下げ、最終損益を7億4700万円の黒字から3億5600万円の赤字に大幅に下方修正した。今期中に不採算店21カ所の閉鎖に伴う減損損失を計上する。
半期決算(18年8月~19年1月)段階で、純利益は前年同期比90%減の5300万円と低空飛行だったが、とうとう赤字に沈んだことになる。
なぜ赤字決算に転落することになったのか。鳥貴族の説明は、以下のようなものだ。
14年にジャスダックに上場したことで認知度が高まり、既存店売り上げは好調を維持した。そこで新規出店を加速させたが、人件費の高騰などから、全品「280円」(税抜き、以下同)から「298円」への値上げに踏み切った。ところが、値上げを機に客足が遠のき、既存店の売り上げが落ちた。積極的に出店したことから店舗網も過密になり、自社店舗同士の競合も発生したという。
鳥貴族は厳しい業績を踏まえ、中期経営計画「うぬぼれチャレンジ1000」(18年7月期~21年7月期)を取り下げた。中計では4年間で国内を1000店舗に増やし、2000店舗体制を目指すというものだった。海外にも進出すると花火を打ち上げた。
しかし、「(関東、関西、東海地区の)3商圏で1000店舗、営業利益率8%」の達成は難しいと判断した。
現在の店舗数は2月末で678店。赤字店舗が増えるなど、お寒い内実だ。中間決算(18年8月~19年1月)の営業利益率は2%にとどまる。
地に足の着いた、新たな出店計画に基づく中計を9月に発表する、としている。
28年ぶりの値上げの影響
鳥貴族の値上げは居酒屋業界の話題をさらった。全品280円均一としていた価格を17年10月から298円に6%引き上げた。鳥貴族の値上げは1989年に250円から280円にアップして以来、実に28年ぶりのことだった。低価格で業績を伸ばしてきた鳥貴族はデフレの“勝ち組”といわれていた。
大倉忠司社長が1985年、東大阪市の近畿日本鉄道(近鉄)大阪線の俊徳道(しゅんとくみち)駅前に1号店を開いたのが始まり。開店当時は全品250円均一。89年、消費税3%が導入された時、全品280円に値上げした。消費税が5%、8%に引き上げられても、全品280円路線を守ってきた。均一価格を採用する居酒屋チェーンのなかでも鳥貴族の280円は業界最低水準とされた。