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ZOZO、現預金急減で危機的水準…前澤社長、PB事業混乱のなか230億円の同社株売却

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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ZOZO、現預金急減で危機的水準…前澤社長、PB事業混乱のなか230億円の同社株売却の画像1「ゾゾタウン HP」より

 アパレルのオンラインショッピングサイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOと、同社社長の前澤友作氏が金欠で苦しんでいると話題だ。

 ZOZOの2018年12月末時点の現預金は82億円。3カ月前から109億円も減った。9カ月前の18年3月期末からだと163億円の減少だ。近年にない低水準で危機的状況にある。なぜ同社から現預金が急速に消えたのか。

 18年4~12月期は減益決算となった。純利益は前年同期比16.1%減の136億円で、現預金の減少は純利益の減少が影響した面がある。ただ、純利益の減少は26億円にすぎない。純利益以外も大きく影響したが、特に売掛金が大きく影響した。売掛金とは、商品の販売に対して代金が後日支払われる債権のことをいう。商品が売れたのに資金が入ってこないので、売掛金の増加は現預金の減少要因となる。18年12月末時点の売掛金は387億円で、3カ月前から127億円も増えた。これが大きく影響した。

 現預金の減少要因はほかにもさまざまあるが、同期は企業の現金の受け取りと支払いの状況を示すキャッシュフロー計算書が公開されていないので、詳細は不明だ。

 なお、18年4~9月期はキャッシュフロー計算書が公開されており、それによると同期の「フリーキャッシュフロー(純現金収支=FCF)」は5400万円のマイナスだった。FCFとは、企業が営業活動で稼いだお金(営業キャッシュフロー)から投資に投じたお金(投資キャッシュフロー)を差し引いた余剰資金のことだが、FCFがマイナスということは、事業活動の面で資金が減ったことを意味する。

 一般的に、企業が成長している時は投資が先行するためFCFはマイナスになりやすい。そのため、FCFのマイナスは必ずしも悪いこととはいえないが、ZOZOは前年同期のプラス45億円から大きく落ち込んでおり、本業で稼ぐ力が衰えていることは間違いない。

 プライベートブランド(PB)事業の不振が、ZOZOの稼ぐ力の衰えを如実に表している。19年3月期にPB事業で200億円の売り上げ目標を立てていたが、30億円にとどまる見込みだという。これにより125億円の赤字を計上する。連結業績は増益を見込んでいたが、減益に下方修正を余儀なくされている。連結純利益は従来予想より102億円少ない178億円(前期比12%減)とした。期末配当も従来予想の22円から10円に引き下げた。年間配当は前の期を5円下回り24円になる見通しだ。

 株価も厳しい状況が続いている。昨年7月18日に一時4875円をつけたが、以降下落が続き、今年2月8日に年初来安値となる1621円をつけた。この間の株価は7割弱も減ったかたちだ。その後、少し盛り返すも、3月から4月上旬にかけて下落基調が続いている。

前澤氏がZOZOに230億円分の株を売却

 ZOZOの株式をめぐっては、不可解な動きがある。昨年5月23日に関東財務局に提出された大量保有報告書の変更報告書によると、前澤氏が市場外で600万株をZOZOに売却している。単価は前日22日の終値と同じ3845円なので、単純計算で売却額は約230億円となる。これにより前澤氏は巨額の金を手に入れたわけだが、一方でZOZOにとっては大きな出費となった。同社によると、23日に244億円で635万株を取得したという。一方、取得資金に充てるためか、同社は19年4~6月期に240億円の短期借入金を計上している。同時期にほぼ同額が出入りしているため、現預金への影響はほとんどない。だが、株価は大きく低下しているため、ZOZOは現状、高値づかみしたかたちだ。反対に前澤氏は高値で売り抜けたことになる。

 前澤氏が大量の株を売り払ったのは昨年5月下旬だが、ZOZOが前澤氏から株を取得することを決議したのは、その1カ月前の4月27日。この日は18年2月期の決算発表とPBの今後の展望を示した日でもある。PB事業で19年2月期に135億~225億円を売り上げる見通しを示し(のちに200億円とした)、PBにかける意気込みを見せた一方、PBの販売において重要な役割を果たすゾゾスーツで配送遅延が生じるなどトラブルが続いていたため、そのことについて謝罪も行った。

 また、同日にゾゾスーツ絡みで18年2月期に約40億円の特別損失を計上したことも発表している。PBの販売を始めたのは18年1月末だが、この3カ月間はPB絡みのトラブルが続いていたことになる。こうしたことは、前澤氏が大量の株を売り抜けたことと何か関係しているのだろうか。このことについて一部で議論が沸騰した。

 一方、ZOZOは現預金が減っているためか、今年3月29日に150億円を上限として借り入れができるコミットメントライン(融資枠)契約を三井住友銀行など3行と結んだと発表している。期限は20年3月27日まで。これにより運転資金をすぐに確保できるようになったので、すぐに現預金が尽きる恐れはほぼなくなったが、現在の稼ぐ力では早期に借り入れを返済することは難しいだろう。

 ZOZOは16年から、利用者の支払いが最大2カ月後となる決済サービス「ツケ払い」を始めている。これが売掛金の増加につながったとみられる。このサービスの利用が増えることで売掛金が増加し、資金繰りがさらに厳しくなることが考えられる。そうなれば、コミットメントラインでの融資を受けざるを得なくなるほか、追加の借り入れを余儀なくされる可能性もある。

前澤氏自身の資金繰りにも懸念

 ZOZOの資金繰りが厳しくなっている一方、前澤氏の資金繰りも厳しくなっているとの見方がある。2月22日に前澤氏が提出した大量保有報告書の変更報告書によると、自身が保有しているZOZO株の88%を国内外の金融機関に担保提供している。担保価値は3月後半の株価で換算すると2000億円以上にもなる。前澤氏は相当な額の配当収入を得ているはずで、それに加え、先述した株の大量売却で得た巨額の売却益がある。それでも足りないというのだろうか。

 前澤氏は羽振りが良いことで知られている。ツイッターなどで「お金は使えば使うほど増える」と公言しているほどだ。「お金をたくさん使うことで他の人ができない体験ができ、それにより成長し、もっと稼げるようになる」からだという。大富豪の言葉なので金言だが、ただ、この理屈には大事な概念が欠けている。それは「費用対効果が見込めるかたちで使う」ということだ。これがなければただの“浪費”にすぎない。前澤氏は浪費グセが金欠につながっていると噂されている。

 一方、ZOZOはゾゾスーツで浪費した。同社はゾゾスーツを大々的に打ち出してきたが、今後、使用する場面は限定的になるという。ゾゾスーツなしでも商品を買えるようにするためだ。同社はゾゾスーツで100万件以上の体形ビッグデータを取得できたと誇っている。しかし、それに投じた資金と労力、PBの現状を考えると、費用対効果が誇れるかは疑問だ。先述した通り巨額の特別損失を計上していることもあり、ゾゾスーツへの投資は浪費だったと言わざるを得ないだろう。

 ZOZOと前澤氏は、浪費グセから金欠疑惑が出ている。両者はお金の使い方を抜本的に見直す時に来ているのではないか。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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