鳥貴族が絶不調だ。同社は3月8日、2019年7月期の単独最終損益が3億5600万円の赤字(前期は6億6200万円の黒字)になる見通しだと発表した。今期中に不採算店21カ所の閉鎖に伴う減損損失を計上する。通期の最終赤字は14年の上場以来初めてとなる。従来予想は7億4700万円の黒字を見込んでいた。今期の売上高予想は従来予想より20億円少ない358億円(前期比6%増)に下方修正した。
17年10月に全品税抜き280円均一を298円に引き上げ、客離れが起きた。既存店客数は19年2月まで15カ月連続で前年割れとなっている。さらに問題となっているのが客単価の低下だ。値上げ以降は、客単価は前年を超える月が続き、値上げした17年10月から18年9月まで12カ月連続でプラスだったが、値上げしてちょうど1年後となる18年10月から一転して前年割れが続くようになり、19年2月まで5カ月連続でマイナスとなっている。この間の客単価のマイナスは2~3%だ。値上げ後のプラスが2~3%程度なので、客単価は値上げ前の水準に戻ってしまった。
値上げから1年たって客単価が下落に転じたのは、値上げを嫌った客が注文点数を減らした可能性が挙げられる。均一価格を値上げしたので、平均注文点数が変わらなければ客単価は上がるはずだが、そうなっていないということは、注文点数が減ったと考えられる。飲み放題・食べ放題のメニューもあるので一概にはいえない面があるが、単品ごとに注文する客のほうが圧倒的に多いので、平均注文点数が下がったと考えるのが妥当だろう。
値上げで平均注文点数が減ったとみられるのは、居酒屋がほかの飲食業態と比べて注文点数が多いことが影響したと考えられる。鳥貴族の平均客単価が仮に2000円だとして、値上げ前の均一価格が税込みで302円なので、平均注文点数は7点程度となる。7点と注文点数が多いので、客は注文点数を調節することでトータルの出費をコントロールしやすい。たとえば、常連客が値上げ前は平均7点注文していたところ、値上げ後は6点に抑え、結果としてトータルの出費が減るというケースが増えたと考えらえる。こうして客単価が低下したのではないか。
こういった現象は、ほかの業態ではあまり見られない。たとえば、牛丼1杯だけを食べて帰る人も多い牛丼チェーン「吉野家」の場合、値上げしても注文点数の調節では1回あたりの出費をコントロールすることが難しいという側面がある。値上げ分が単純に上乗せになるだけのケースが多く、そのため、鳥貴族のように客単価が値上げ前の水準に戻ることはほとんどない。