新車・中古車を問わず、自動車販売の現場に異変が起きている。帝国データバンクの「自動車小売業の倒産動向調査(2018年)」(負債1000万円以上、法的整理のみ)によると、新車、中古車ディーラーともに前年を上回る倒産件数を記録しており、特に中小業者を中心に事業環境の悪化が見られるという。
帝国データバンク情報部の箕輪陽介氏は「中古車では中小・零細の淘汰が進み、新車のディーラーも再編の渦中にある。自動車小売業は転換期を迎えている」と語る。箕輪氏に、自動車小売業の実情について聞いた。
人知れず消えていく地場の中古車業者
――調査の概要について教えてください。
箕輪陽介氏(以下、箕輪) まず「新車小売業」ですが、18年の倒産件数は25件で前年比10件(66.7%)の大幅増となりました。年間の倒産件数が20件を超えたのは14年以来4年ぶりです。負債総額は57億4900万円で、負債額10億円を超える大型の倒産も複数発生し、前年比40億8700万円(245.9%)の大幅増となっています。
次に「中古車小売業」ですが、18年の倒産件数は98件で前年比12件(14.0%)の増加となりました。リーマン・ショックが発生した08年から東日本大震災後の消費低迷を受けた12年まで100件台を記録しており、当時の水準まで悪化したといえます。ただ、負債総額は50億6000万円で3年ぶりの前年比減となっています。
負債規模別に見ると、「新車小売業」では、過去5年で1件しか発生していなかった10億円以上の倒産が3件発生しました。「中古車小売業」では、「5000万円未満」が最多の70件で全体の71.4%を占めています。このレンジの倒産件数が70件を超えるのは12年以来で、11年と並んで過去2番目の多さです。新車と比べて、中小・零細企業の苦境が顕著になっているといえます。
――小規模の「中古車小売業」が苦境に陥っている理由はなんでしょうか。
箕輪 新車の国内販売台数が伸び悩む中で、消費者の1台当たりの購入サイクルが延びているとの見方もあり、中古車市場に流通する絶対数も低下しているようです。そのため、業界内では「タマが少ない」と言われています。広告・宣伝にコストをかけられる大手業者は独自の流通ルートを確保していて、売れるクルマを獲得しやすい環境にあります。
一方、中小・零細は流通面が弱点になっており、売れるクルマが回ってこないためラインナップが充実しない。さらに、インターネットの普及による価格の透明化や競合の激化もあり、地場の老舗業者でも資本力が弱いと苦しいのが実情です。中古車の仕入れにはキャッシュが必要で、資金繰りに少しでも穴が開くと苦境に陥りやすいのが業界の特徴といえます。
――具体的な倒産事例には、どのようなものがありますか。
箕輪 鹿児島県で自動車販売・車検整備・ガソリンスタンド経営を展開してきたロータスハシグチが18年11月7日に鹿児島地裁で破産手続き開始決定を受けました。15年11月期には約15億7900万円の年間売上高を記録していましたが、消費の冷え込みに加え同業他社との販売競争が激しく、今回の措置となりました。
また、京都府で中古車卸を営んでいたオートビークルは18年9月27日に京都地裁に自己破産を申請し、同日に破産手続き開始決定を受けました。こちらも同業との競争が激しく、販売不振もあり資金繰りが悪化、事業継続が困難となりました。