――「中古車小売業」の今後はどうなるのでしょうか。
箕輪 ほかの苦しい業界と同様に、大手の寡占化による価格競争の激化にともなって中小・零細企業の苦境が続くと見ています。そして、再編の中で大手が中小・零細をのみ込んでいくという構図です。飲食業であれば店舗や人員を目当てにM&A(合併・買収)をするメリットがありますが、「中古車小売業」には当てはまらない部分もあります。そのため、人知れず中小・零細の「中古車小売業」が淘汰されていき、そこに大手が出店するといった現象も起きるでしょう。
「中古車小売業」の取引先は限定的なので、倒産しても告知すべき債権者の数はそう多くありません。そのため、地元の人も気づかない間に、いつの間にかなくなっているというケースが多いのです。イメージとしては、個人事業主の「休廃業・解散」に近いのかもしれません。
経営効率化で新車のディーラーも淘汰
――一方、「新車小売業」の動向についてはいかがでしょうか。
箕輪 在庫管理や経営の効率化などを目的に各メーカー系ディーラーの再編が進んでおり、淘汰の中で法的整理を選択するケースも見られます。人件費の問題もあり、地域によってはメーカーがディーラーの絞り込みを行っているのです。また、今後は自動車のハイテク化が急速に進むと見られており、整備や扱いなどの面で対応できる業者は限定される可能性が高い。そのため、設備投資の余力を持たない業者を中心に、今後も倒産の増加傾向が続くと考えられます。
――自動車小売業全般が厳しい局面を迎えそうですね。
箕輪 事業環境が悪化しており、ひとつの転換期を迎えているのは確かでしょう。消費者の自動車離れが叫ばれて久しいですが、国内の新車登録台数はリーマン・ショック前の水準には回復しておらず、カーシェアの普及などで自動車を購入・所有するという消費行動そのものにも大きな変化が起きつつあります。
特に「中古車小売業」は今が過渡期です。価格の透明性が高くなったことで消費者にとっては安く買える半面、淘汰される業者が増えました。今やクルマもネットでの購入が増えたことで、地方で昔ながらの販売体制を続けているような業者には不利な時代です。
(構成=長井雄一朗/ライター)