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死者や搬送される職人続出…東京五輪、建設現場が「極めて危険な状態」、組織委に改善要求

構成=長井雄一朗/ライター
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休憩室にエアコンがなく熱中症で搬送

――ほかに、現場の建設職人からはどんな声が上がっていますか。

奈良 「施工管理を行う現場監督が現場を知らないことが多い」との指摘があります。建設職人は多くの現場をこなしているため、現場監督に対して「この工程はこうすれば早くなりますよ」などと提案することができます。しかし、現場監督は「とにかく仕様書や手順書の通りに作業して」の一点張りで聞く耳を持たないそうです。現場監督に権限や経験が足りないため、十分な対応ができないのでしょう。

 新国立競技場の現場をめぐっては、建設職人から「施工管理が素晴らしいので、ほかの現場も見本にすべきだ」「いや、あんなにひどい現場はない」と真逆の意見が上がっています。経験豊富な現場監督の下で働いていると「素晴らしい現場だ」と感じますが、未熟な現場監督の下で働けば「ひどい現場だ」ということになるのです。

――今年の夏も酷暑でしたが、そもそも炎天下での作業自体が危険ではないですか。

奈良 各現場では、責任を持って体調管理をできるかが問われています。休憩室にエアコンがなく、毎日のように建設職人が熱中症で搬送されていた現場もあるようで、非常に危険です。

働き方改革で賃金減少のジレンマ

――建設職人の賃金についてはいかがでしょうか。

奈良 この7年間で公共工事設計労務単価は約40%上がっているので、建設職人の賃金も40%ほど上昇していなければならないのですが、実態調査では数%しか上がっていません。どこかで中抜きされているのでしょう。そのため、今は廃業や離職を選ぶ建設職人も多く、若者が入職してこないという苦しい実態があります。外国人技能実習生についても、仕事の厳しさと賃金を天秤にかけて「建設業にはいかない」という声が増えています。

――このまま苦境が続けば、建設業界の危機は深刻化しますね。

奈良 建設職人の4分の1が60代で、その世代が現場を支えているのが実態です。しかし、その方々もあと数年で現場を離れますから、担い手の育成が急務です。もはや手遅れのような気もしますが、建設業界を挙げて建設職人の処遇改善に務めるしかありません。建設業界でも始まっている働き方改革を軸に変革していくしかありません。

――ただ、建設職人は日給月給制なので、働き方改革によってトータルの賃金が減ってしまうのではないでしょうか。

奈良 アンケートによると、労働者の7割、一人親方の8割が「減る」と回答しています。一方、若者は半数以上が「週休2日がいい」と回答しています。手取りを減らさずに週休2日という働き方に業界全体で変えていく必要があるでしょう。また、建設職人を正規雇用し、日給月給制から月給制に移行することも肝要です。

(構成=長井雄一朗/ライター)

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