ステーキ市場は「いきなり!ステーキ」の登場で激変したが、その「いきなり!ステーキ」が最近は苦戦を強いられている。そうしたなか、打倒「いきなり!ステーキ」に燃える他チェーンの攻勢が激しさを増しており、ステーキ市場で新たなうねりが巻き起こっている。
「いきなり!ステーキ」の9月の既存店売上高は、前年同月比33.6%減と大幅減だった。前年割れは18カ月連続。30%超のマイナスは8月(同35.2%減)に続き2カ月連続となる。マイナス幅は時間がたつにつれて拡大しており、改善の兆しが見えていない。「いきなり!ステーキ」は9月末時点で全国に481店を展開するまでに成長したが、ここにきて成長に急ブレーキがかかったかたちだ。
「いきなり!ステーキ」の失速を見て、他のステーキチェーンは俄然やる気を見せている。 「いきなり!ステーキ」の台頭でステーキ店「KENNEDY(ケネディ)」を展開していたステークスが破産に追い込まれるなど、他のステーキチェーンは厳しい状況に置かれているが、ここにきて息を吹き返しているのが、ブロンコビリーだ。
ブロンコビリーは社名と同じ名のステーキ店を、東名阪を中心に展開。店舗数は9月末時点で135店 となっている。ブロンコビリーは炭焼きで提供する厚切りのステーキが人気だ。食べ放題のサラダバーも、野菜や果物が豊富で多くの顧客から支持されている。これらを武器として郊外ロードサイドを中心に出店を重ね、勢力を伸ばしてきた。
そんなブロンコビリーだが、近年は「いきなり!ステーキ」など競合との競争激化で苦戦を強いられていた。2019年1~6月の既存店売上高は前年同期比9.5%減と大幅減になっている。ところが、7~9月は同5.9%減とマイナス幅が大きく縮小した。とはいえ、それでもマイナス幅は決して小さくはない。それは、7月が11.6%減と大幅減だったからだ。
ただ、8月は0.8%減と微減にとどまっている。9月は6.2%減とやや苦戦したが、前年の9月が全品20%引きのキャンペーンを4日間実施するなどで既存店客数が前年同月から11.2%も伸び、既存店売上高は4.0%伸びていたことを考えると、今年9月の6.2%減というのは、それほど悪くはないと考えられる。
先述の通り、8月と9月は「いきなり!ステーキ」の既存店売上高が前年からそれぞれ30%超の大幅マイナスとなった時期だ。こうした「いきなり!ステーキ」の失速とブロンコビリーの業績回復は無縁ではないだろう。ブロンコビリーは郊外ロードサイドを主戦場としているが、「いきなり!ステーキ」は17年5月から、郊外ロードサイドでの出店を開始し、その後は同立地での出店を加速させ、それにより両者の競争は激しさを増していった。
ブロンコビリーの反撃
10月14日に閉店に追い込まれた「ブロンコビリー浜松参野店」(静岡県浜松市)は「いきなり!ステーキ」との競争に敗れたといっていいだろう。同店から約15分のところに「いきなり!ステーキ」浜松プラザフレスポ店、約30分のところには浜松湖東町店(同)や浜松有玉店(同)、イオンモール浜松志都呂店(同)が存在し、厳しい戦いを強いられていた。そうしたなか、車で10分以内のところに浜松三島店(同)が今年4月に出店してきたのだ。これが致命的だった。こうして「ブロンコビリー浜松参野店」は「いきなり!ステーキ」との戦いに敗れ、閉店に追い込まれた。