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サブウェイ、店舗数半減で経営危機…マクドナルドと真逆、“何にも適さない”という致命的弱点

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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サブウェイの店舗(撮影=編集部)

 サンドイッチチェーン「サブウェイ」の店舗数の減少が止まらない。2019年12月下旬時点の国内店舗数は、公式サイトによると221店。14年6月には480店を展開していたので、5 年半で半数以下に減ったかたちだ。

 サブウェイは世界で4万1000店以上を展開する世界最大の飲食チェーンだ。店舗数はマクドナルドよりも多い。日本では1992年に1号店が誕生し、運営は日本サブウェイが担っている。

 同社の近年の業績は、厳しい状況が続いている。決算広告によると、17年12月期まで3期連続で最終赤字を計上している。

 このようにサブウェイが日本で苦戦を強いられているのはなぜか。理由はいくつか考えられるが、日本では欧米ほどサンドイッチが親しまれていないこと、サンドイッチがあり ふれた食べ物であること、サンドイッチはコンビニエンスストアでの販売には適しているが、外食店での販売には適していないことの3つが大きいだろう。

 言うまでもないが、サンドイッチは欧米で発達した食べ物だ。そのためだろうが、サブウェイの店舗はアメリカを中心とした欧米に多い。つまり、欧米はサンドイッチを好む人が多いため、サンドイッチを提供するサブウェイが広く受け入れられたというわけだ。

 もちろん、日本でもサンドイッチは人気の食べ物だ。ただ、日本人はおにぎりなど米飯物の食べ物を好む傾向があり、日本では欧米ほどサンドイッチが親しまれていない。そのため、サブウェイが欧米ほど流行らないのは当然といえる。

日本で大成功を収めたマクドナルド

 一方で、ハンバーガーを提供するマクドナルドは日本で現在約2900店をも展開するほどに成功している。それはなぜか。

 マクドナルドの1号店が東京・銀座にオープンしたのは1971年。その頃の日本では、ハンバーガーを提供する店は少なかった。また、日本人がアメリカ文化に対して強い憧れを抱いていた時期でもあった。そうしたなか、マクドナルドは本場アメリカと同じハンバーガーを手軽に食べられるとして人気を博すようになった。銀座の歩行者天国をマクドナルドのハンバーガーを食べながら歩くことがおしゃれともされた。

 こうしてマクドナルドは日本で人気を博したわけだが、なぜ同じことがサブウェイでは起こらなかったのか。違った見方でいえば、マクドナルドを日本に持ち込んだ藤田田氏は、なぜサブウェイを持ち込まなかったのか。それは、巡り合わせの問題もあるだろうが、サンドイッチが日本人にとって欧米人ほど価値が高くなく、ありふれた食べ物だったためだろう。

 マクドナルドが日本に上陸した頃、サンドイッチは喫茶店で提供されたり、家庭でもつくられるなど、それなりに普及していた。つまり、珍しくなく、希少価値が低い食べ物といえた。これでは、消費者が抱くアメリカ文化への憧れに訴えかけることは難しい。仮にサブウェイの店舗を当時の日本に持ち込んでも、サンドイッチを食べながら銀座の歩行者天国を歩くことがおしゃれとされることはなかっただろう。これでは爆発的に普及させることはできない。そのため、藤田氏はサブウェイではなくマクドナルドを持ち込んだのではないか。

サンドイッチとハンバーガーの違い

 サンドイッチとハンバーガーでこうした違いが生じるのは、調理の難易度の違いが大きい。サンドイッチはハムやツナ、レタスといった具材をパンに挟むだけなので、調理の難易度は低い。一方、ハンバーガーはひき肉をこねて焼き上げてつくるのにそれなりの調理技術と手間が必要になるため、サンドイッチと比べて調理の難易度は高い。こうした違いがありふれた食べ物かそうでないかを分けている。

 これは、外食店での販売に適しているかどうかも左右する。

 消費者が外食店に求めることとして大きいのが、自分ではつくるのが難しい料理を食べられることと、調理の手間を省けることだ。フレンチやイタリアンの店が高額の料金を設定しても客が集まるのは、フレンチやイタリアンは高い調理技術が求められ調理に手間がかかるためだ。技術料や手間賃が上乗せされるので高額になるが、消費者は喜んで高い料金を支払う。

 こうした原理は、サンドイッチとハンバーガーにも当てはまる。調理に技術と手間が大してかからないサンドイッチに、高いお金をかけてまで外食したいと思う人は少ない。一方、ハンバーガーは調理に多少の技術と手間が必要になるので、お金を出して外食で食べたいと思う人は少なくない。そのため、ハンバーガーは外食店での販売に適しているが、サンドイッチは適していないといえるだろう。

 このことをもう少し深く理解するため、店舗販売における「水」と「コーヒー」の違いについて説明したい。

 水を専門的に売るチェーン店は皆無だが、コーヒーを専門的に売るチェーン店は存在する。それはなぜか。

 水を専門的に売るチェーン店がないのは、水は自宅などで簡単に飲むことができるので、 わざわざ店で飲みたいと思う人が少ないためだ。一方、コーヒーを専門的に売るチェーン店が存在するのは、コーヒーは家でおいしいものを飲もうとするとなると、ある程度の技術が必要で手間もかかるので、店で気軽に飲みたいと思う人が少なくないためだ。

 かといって、水に需要がないのかといえば、そんなことはなない。コンビニや自販機で数多く売っているのは周知の通りだ。このように、水はテイクアウト需要が大きいといえる。ただ、店の中で腰を据えて飲むほどのものではないということだ。

 サンドイッチは水とコーヒーのどちらに近いかといえば、水ということになる。店の中で腰を据えて食べるほどのものではないということだ。ちなみに、おにぎりの全国的なチェーン店が存在しないのは同様の理由からだろう。

コンビニの脅威にさらされなかったマック

 こうしたことから、サンドイッチは外食店での販売には適していないといえる。もっとも、サンドイッチは水と同様に需要がないわけではない。手軽に食べられるのでテイクアウト需要は大きい。そのため、コンビニエンスストアではサンドイッチがよく売れる。

 そうであれば、サブウェイもテイクアウト需要が期待できると考えることができるかもしれない。ただ、サブウェイのサンドイッチは価格が高く、手軽に食べられるとはいえない。また、サブウェイのサンドイッチは調理に時間がかかるため、テイクアウトに適しているともいえない。さらに、コンビニのサンドイッチはラインアップが充実しているため、サブウェイのサンドイッチの訴求力は相対的に低下せざるを得ない。欧米ほど日本でサブウェイが流行らないのは、コンビニの存在が大きいだろう。

 一方でマクドナルドが日本で規模を拡大できたのは、コンビニでハンバーガーが充実していないことが大きい。ハンバーガーはサンドイッチと違い、できたてで温かくないとおいしくない食べ物だが、できたてで温かいハンバーガーをコンビニで提供することは設備と調理の面で難しいので、チルド状態で販売せざるを得ない。これでは高い競争力を発揮することは困難で、品ぞろえを充実させることは難しい。そのため、マクドナルドはコンビニを恐れることなく伸び伸びと店舗網を拡大することができたのではないか。

 こうしたことを総合的に考えると、サブウェイが十分な需要を取り込める立地は相当限られてくる。そのため、サブウェイは不採算店の閉鎖を進めていると考えられる。今後は小規模で事業を営んでいくことになりそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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