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日本経済の祖・日本製鉄、4千億円の赤字に転落…聖域“製鉄所の統廃合”を断行へ

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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日本製鉄君津製鉄所(「Wikipedia」より/Chime)

 日本製鉄が事業環境の急変に備える姿勢が鮮明化している。今年1月、中国の鉄鋼メーカーが一斉に増産に動いた後、新型肺炎の影響もあり需要が大きく下落した。それにより、世界の鉄鋼価格は弱含みの展開になることが予想される。

 そうした状況下、日本製鉄は生き残りをかけ、これまでの慣習や常識にとらわれず環境の変化に適応しようとしている。同社のトップ自ら国内外の製造拠点を視察し、世界規模での競争に勝ち残る力があるか否かを見極めようとするなど、経営陣の危機感はかなり強い。

 米中の通商摩擦に加え、新型コロナウイルスによる景気の減速やサプライチェーンの寸断が中国を中心に世界の鉄鋼業界を下押ししている。今後の展開によっては、世界経済が大きな混乱に直面する可能性は高まっている。それに備えて、日本製鉄は思い切った構造改革を進める必要があるとみられる。それこそ生き残りのために、待ったなしの政策を迅速に打つことが求められる。

鉄鋼市場の一段の冷え込みに備える日本製鉄

 バブル崩壊後、日本の鉄鋼業界は国内での鉄鋼需要の低迷、デフレ環境下での景気停滞、さらには中国やインドなどの鉄鋼メーカーの台頭に伴う低価格競争や業界再編などに直面してきた。そうした変化に対して、これまで日本製鉄は国内での業界再編と自動車向け鋼板など高付加価値製品の生産力を高めることで対応してきた。

 現在、その鉄鋼業界にさらなる大変革が迫りつつある。世界経済の急速な変化と不確定要素の増大を受けて、グローバルに鉄鋼業界の冷え込みが強まりつつある。中国経済の減速などから世界経済全体で鉄鋼需要が低迷し、価格には下押し圧力がかかりやすくなっている。

 2020年3月期決算において、日本製鉄は最終損益を400億円の黒字と予想してきた。しかし、こうしたリスクの高まりを受けて2月7日、同社はこの見通しを下方修正し4,400億円の最終赤字に陥ると発表した。この最終赤字規模は過去最大だ。

 その背景要因として、鹿島や名古屋などの製鉄所(固定資産)に関する減損損失を計上すること、呉製鉄所の⼀貫休⽌(閉鎖)の決定に伴う損失計上などが業績下方修正に大きく響いた。また、中国での特殊鋼帯鋼圧延事業の撤退なども決定された。

 こうした対応から示唆されることは、同社経営陣が早期に可能な限りの改革を進めようとしていることだ。2019年の世界の粗鋼生産量は18億6990万トンだった。うち、中国の生産量シェアは9億9634万トンに及ぶ。それに伴い、過剰生産能力が深刻化し、補助金に依存する中国鉄鋼メーカーもある。

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