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百貨店向けアパレルブランドの苦境は続くのか?勝ち組はワールド、三陽商会は赤字拡大

構成=長井雄一朗/ライター
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ワールド本社(「Wikipedia」より)

 百貨店の苦戦は、出店するアパレルブランドにも影響を与えている。東京商工リサーチが上場アパレル12社の売上高と全国の百貨店の売上高の推移をまとめた「上場『百貨店向けアパレルブランド』主要企業の業績動向調査」によると、上場アパレル12社の売上高合計(連結)は2014年度の1兆1376億300万円から17年度には9731億9200万円となっており、5年間で14.4%の落ち込みを見せている。

「百貨店事業に多くのリソースを割いているアパレルブランドは厳しい局面が続く。今後は、脱百貨店化に向けた戦略が求められてくる」と語る、東京商工リサーチ情報本部情報部の二木章吉氏に話を聞いた。

売上高トップ3はワールド、オンワード、TSI

――百貨店向けアパレルブランドの現状はどうなっていますか。

二木章吉氏(以下、二木) 百貨店向けアパレルブランド主要上場12社(以下、百貨店ブランド)は直近の本決算で、判明分だけで8社の売り上げが前期を割り込み、利益も8社が減益、5社が最終赤字となっています。百貨店ブランドは中~高価格帯の商品がメインのため、ECの台頭、オフィスカジュアルの定着、消費者の節約志向などの要因で苦戦を強いられ、さらに低価格帯のアパレルブランドとの競合も激化しています。

 また、地方を中心に百貨店の閉店が増えています。三越伊勢丹ホールディングスは3月に新潟三越を閉店、そごう・西武は8月に西武岡崎店と大津店を閉店することを発表しており、そごう西神店と徳島店も閉店が予定されています。これらの流れはアパレル各社にも影響を及ぼし、百貨店ブランドの中には地方からの撤退や店舗のリストラを図る動きもあります。

――百貨店ブランドで好調な企業はどこでしょうか。

二木 ワールド、オンワードホールディングス、TSIホールディングスの上位3社は百貨店以外にもビジネスチャンスを拡大しています。「23区」「五大陸」「Jプレス」などのブランドを展開するオンワードは直近で赤字を計上しましたが、ワールドは前期まで、TSIは今期増収に転じており、これは百貨店以外のセグメント利益の増加が寄与しています。

 たとえば、ワールドはM&Aを活発化しており、百貨店事業の比率を減少させています。TSIも同様で、若者に人気のセレクトショップやアパレル企業を次々と子会社化し、最近も   カジュアルウェアが主力の上野商会を約150億円で買収。百貨店向けブランドと並行して、若者向けのカジュアルウェアに力を注いでいます。

――そのほかの有力な百貨店ブランドの現状は。

二木 「アーペーセー」や「イル ビゾンテ」などの主力ブランドを持つルックホールディングスは、百貨店だけでなく路面店やファッションビルへの出店を強化しており、若者向けに注力しています。百貨店ブランドでは異質な存在といえるでしょう。

 一方で、中国企業の傘下で再建途上のレナウンは6期、「ポール・スチュアート」「エポカ」などの三陽商会は5期、「DAKS」などの三共生興は5期、「ピエール・カルダン」のライセンスなどを展開するラピーヌは6期連続の減収と、苦境が鮮明になっています。

――特に、三陽商会の苦戦は広く伝えられていますね。

二木 三陽商会は15年春夏シーズンで英国老舗ブランド「バーバリー」とのライセンス契約が終了し、16年12月期の売上高は前期比30.6%減の676億1100万円まで落ち込みました。バーバリー終了後は、同じく英国高級ブランド「マッキントッシュ」の各ラインを展開していますが、減収が続いています。

 また、三陽商会は14カ月決算となった20年2月期で、売上高は688億6800万円と期中に修正した通期予想はクリアしました。一方で、営業損益マイナス28億7500万円(通期予想マイナス18億円)、経常損益マイナス28億9900万円(同マイナス17億円)、当期純損益マイナス26億8500円(同マイナス15億円)で赤字幅が前期比(8億1900万円)で拡大した上、予想も上回りました。

アパレルブランドの“百貨店離れ”が加速か

――今後、生き残りの鍵は何になるのでしょうか。

二木 現状で業績が比較的堅調なのは、ワールド、TSI、ルック、そこにオンワードが食い込みつつあるという構図です。ワールドは18年にブランド古着チェーン古参の「ラグタグ」運営会社をグループ化し、19年にはブランドバッグのシェアサービスを展開する国内企業も買収。さらに、日本のアパレル商品を海外に販売するECサイトを立ち上げ、プラットフォーム事業を急拡大させています。

 また、TSIは買収の成果もあり、現在は百貨店ブランドが3分の1程度で、残りのブランドはカジュアル系が占めています。つまり、軸足を百貨店から別の事業へと移している企業が強いということです。

 逆に、百貨店を事業の柱としている三共生興、「ニューヨーカー」などのダイドーリミテッドは厳しいでしょう。百貨店自体の売り上げが減っていますから、今後は事業の多様化が肝要になります。

――昨秋の消費税増税から、記録的な暖冬、さらに新型コロナウイルスの感染拡大と、逆風が続いていますね。

二木 20年3月期の売り上げは、新型コロナウイルスの影響も大きいですが、対前年比で大丸心斎橋店が63.0%減、大丸梅田店が51.7%減、大丸東京店が50.0%減と、いずれも50%以下。阪急阪神百貨店も、3月度は基幹店の阪急本店と阪神梅田本店で前年同月の6割程度まで売り上げが落ち込んでいます。東京都内では、20年2月まで4カ月連続で繊維・衣服等卸の倒産が増加しました。

 昨秋の増税と暖冬の反動に加え、今後は新型コロナウイルスによる春物の販売減の影響は必至です。さらに、結婚式やパーティの自粛・延期により、フォーマルウェアやドレス類も低迷しています。先の見えない消費マインドの停滞に、アパレル関連はしばらく厳しい状況が続くのではないでしょうか。

(構成=長井雄一朗/ライター)

長井雄一朗/ライター

長井雄一朗/ライター

建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス関係で執筆中。

Twitter:@asianotabito

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