河井案里&克行議員、逮捕直前に離党の裏事情…自民党幹部がリークか、党内で“邪魔者”扱い
国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。
東北地方も梅雨入りし、ジメジメした天気が続きますね。政界もジメジメしています。なかでも、6月16日に河井案里参議院議員(自民党)の公設秘書の公職選挙法違反事件で、公設秘書に対して執行猶予つきの有罪判決が言い渡されたことで、案里議員の当選が無効になる可能性が出てきました。
案里議員と夫の河井克行衆議院議員の国会閉会後の逮捕について、永田町では12日頃から噂になっており、週明けの15日からはマスコミ各社も報道し始めましたね。会期中に逮捕するには国会の許諾が必要になるため、開会日の直前や閉会の直後に逮捕するケースは、今までもけっこうあったことです。
なお、以前も書かせていただいていますが、国会議員の逮捕情報が当事者の耳に届くのは、国会内で「最後」なんです。周囲が気を遣って伝えにくい情報を教えないからなんですが、気づいたら逮捕目前というのは困りますよね。神澤なら、もっと早く知りたいです。
秘書の有罪判決を受けて、河井夫妻は自民党に離党届を提出し、受理されました。自民党内では以前から河井夫妻の離党を希望する議員たちがいたのですが、目前に迫った逮捕の「Xデー」の前に離党せざるを得ないように、自民党幹部がメディアに離党情報をリークしたのだとみられています。
これで、克行議員は自分の意思とは無関係に離党せざるを得なくなりました。本人は不満があるでしょうから、国会女子たちは「離党届は秘書が代筆してたりして?」などと話しています。
河井夫妻の離党については、自民党の二階俊博幹事長が「(党に)影響を及ぼすほどの大物議員でもなければ、そんなに大騒ぎするような立場の人じゃない」と微妙なコメントをしましたが、永田町には「離党って、秋元司議員のように逮捕されても国会議員を続ける気満々ってことだよね? 図々しい!」と言う人たちも少なくありません。
もちろん、「無罪推定の原則」があるので国会議員は逮捕、起訴されても、刑が確定するまで議員活動を続けられますし、選挙の立候補も投票もできます。秋にもあるかもしれない総選挙の時期に河井夫妻が東京拘置所(葛飾区小菅)に留置された場合は、そこで「不在者投票」という形で投票できます。葛飾区は自民党でいえば平沢勝栄衆議院議員の選挙区なので、河井夫妻は平沢議員に投票することになるかもしれませんね。
ちなみに、河井夫妻は参議院の麹町議員宿舎に住んでいます。よくホテルニューオータニを利用するので、衆議院の赤坂議員宿舎よりも麹町宿舎のほうがホテルに近いからだと、神澤は思います。案里議員は連座制の適用による失職の可能性が高まりましたが、そうすると宿舎から引っ越す必要が出てきます。その作業も、かわいそうな秘書たちの仕事です。
17日朝は、麹町宿舎のすべての出入り口に大勢のマスコミが押しかけ、ほかの議員たちやその家族(宿舎から学校に通う子どもたち)がものすごく迷惑だったそうです。
安倍首相にとって河井夫妻が“邪魔”になった理由
ところで、10月に解散総選挙は行われるのでしょうか。解散は首相の専権事項なので、安倍晋三首相にしか決められません。永田町では「安倍さんは10月に解散総選挙をしたいらしい」という観測が広まっています。なぜなら、水面下ではすでに東京オリンピック・パラリンピックの中止はほぼ決まっており、「誰が発表するか」という責任のなすり合いが続いているらしいからです。
安倍首相は悪者扱いされるのはごめんなので、自ら中止の発表はしたくないのです。そのあたりは大阪府の吉村洋文知事を見習ってリーダーシップを発揮してほしいところですが、優柔不断な安倍首相には難しいのでしょう。
東京オリ・パラの中止を伝えるギリギリのタイミングが10月のようで、中止を発表する前に総選挙を行い、自民党が現状維持できれば、中止を発表して一時的に支持率が下がっても、政権は安泰です。そうなると、安倍首相は自民党総裁の4選も見えてきますよね。
そのためにも、かわいがっていた河井夫妻が邪魔になってしまったのでしょう。理由はわかりませんが、検察は河井夫妻の逮捕に並々ならぬ力を注いでいます。単に「議員バッジをつけた人を逮捕したい」という以上の熱意があるようです。
安倍首相は、お気に入りの黒川弘務・前東京高等検察庁検事長を検事総長に据えて河井夫妻の逮捕を避けようとしたのでしょうが、黒川氏の「マージャン辞任」で、それもダメになってしまいました。
こうなったら、河井夫妻には議員辞職させないと党内の不満は消えません。特別定額給付金などの新型コロナウイルス対策も失敗続きで国民の不満が高まっていて、今後の選挙への悪影響も懸念されていますから、自民党のゴタゴタもしばらく続きそうです。
(文=神澤志万/国会議員秘書)
『国会女子の忖度日記:議員秘書は、今日もイバラの道をゆく』 あの自民党女性議員の「このハゲーーッ!!」どころじゃない。ブラック企業も驚く労働環境にいる国会議員秘書の叫びを聞いて下さい。議員の傲慢、セクハラ、後援者の仰天陳情、議員のスキャンダル潰し、命懸けの選挙の裏、お局秘書のイジメ……知られざる仕事内容から苦境の数々まで20年以上永田町で働く現役女性政策秘書が書きました。人間関係の厳戒地帯で生き抜いてきた処世術は一般にも使えるはず。全編4コマまんが付き、辛さがよくわかります。