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星野リゾート、マリオットも参入!人気のライフスタイルホテルの魅力とは?意外な背景も

文=松嶋千春/清談社
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OMO5東京大塚 |星野リゾート【公式】」より

 1980~90年代に日本で流行した「ブティックホテル」。当時はオシャレなラブホテルを指していたが、徐々に耳にしなくなった。しかし、ここ数年、今までとは違った概念のブティックホテルが盛り上がりをみせている。紆余曲折があったブティックホテルの変遷について、高級ホテルからカプセルホテル、ラブホテルまで年間250軒もの宿泊施設を泊まり歩く、ホテル評論家の瀧澤信秋氏に聞いた。

「ブティックホテル=ラブホ」だった理由

 瀧澤氏によれば、ホテルのジャンルは2種類に大別されるという。ひとつは、レストランやウェディングなど宿泊以外にもさまざまなサービスが提供されるシティホテルで、宿泊料金はサービス内容に比例して高くなる。2つ目は、宿泊機能のみに特化したビジネスホテルで、こちらは1泊数千円からとリーズナブルな料金設定のことが多い。

「以前は、ホテルといえば宿泊の料金帯やサービス提供のスタイルで区別されるのが常でした。しかし、80年代くらいから新たな旅のスタイルや旅行者層の変化もあり、近年、デザインや環境問題など趣味趣向で特徴を打ち出したスタイルのホテルが国際的に広がっていきました」(瀧澤氏)

 ブティックホテルとは、もともとそういった特定のスタイルを持ったホテルや、いわゆるデザイナーズホテルのことを指す。ところが、日本では国際的なブティックホテルの認識とは、ややズレがあった。そこには、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)に縛られた日本のホテルならではの事情が関係していた。

「人を宿泊させる業態の場合、旅館業法の営業許可をとらなくてはなりません。接客するフロントを設けなかったり、自動精算機などの設備を備えている場合は、旅館業法に加えて風営法の許可が必要になります。いわゆるラブホテルと呼ばれる業態です。風俗営業だと、建てられる場所が限られたり、銀行からの融資が難しくなったりするため、ラブホテル業者は風俗営業の枠を外したかった。

 ある種の市民権を得るという部分でも、コテコテのラブホテルというよりは、ハイセンスなデザイナーを起用し、ファッション性の高い施設がブームになりました。そこで日本では、ラブホテルではないけれど、そういった目的を満たせるようなホテルのことが『ブティックホテル』と呼ばれるようになったのです。そういえば、ファッションホテルという呼称も一時使われていましたし、今では“レジャーホテル”という呼び方が一般的になっています」(同)

 一部のラブホ業者が「我々はあくまでも宿泊業である」というスタンスでブティックホテルを名乗るようになり、日本では「ブティックホテル=ラブホ」という認識が広がったのだ。さらに、新しい層の取り込みを図るなかで、旅館業法の許可しか得ていないがラブホテルのような利用も可能な、ハイブリッド型のホテルも登場した。

 たとえば、「ホテルバリアンリゾート」はカップルズユースを前提としながらも、運営会社はラブホテルともレジャーホテルとも定義していない。オープンフロントで基本は対面接客、開けたラウンジ、自動精算機もなし。グランピングやバリ旅行をテーマにした施設まである。

「カップルをはじめ、女子会やビジネスユースの取り込みという点でいえば、風営法適用を前提としない、いわゆるカップルズホテルが増えてきています。こうしたデザイン性の高い進取的な取り組みをするホテルが台頭してくるのと入れ替わりに、ラブホテルを指す『ブティックホテル』というワードは廃れていきました」(同)

街全体を活性化させる「ライフスタイルホテル」

 しかし、ここ3、4年、本来ブティックホテルという表現がなされてきたホテルが新たなコンセプトを打ち出し、世界的にブームとなっている。その波は日本にも押し寄せ、東京オリンピック・パラリンピックに向けた訪日観光客需要の増加を見込んだデベロッパーは、こぞって外資系のブティックホテルを誘致した。

「特定の趣味や嗜好にフィーチャーした、かつて『ブティックホテル』といわれてきたタイプのホテルのことは、今『ライフスタイルホテル』というワードで捉えられており、ブームになっています。たとえば、マリオットグループの『モクシー東京錦糸町』もそのひとつ。客室はロックテイストの個性的なデザインで、24時間営業のバーラウンジのカウンターでチェックインするというスタイルです」(同)

 三菱地所グループが展開するシティホテルチェーン「ロイヤルパークホテルズ」は、新ブランドの「ザ ロイヤルパーク キャンバス」を展開。現在は名古屋、銀座、大阪北浜の3拠点があり、21年に神戸三宮と京都二条にもオープン予定となっている。瀧澤氏も、19年6月開業の大阪北浜のホテルを利用したという。

「僕が昨年取材で訪れたときは、ちょうどラグビーワールドカップの時期と重なり、ホテルの宿泊者だけでなく、外部から遊びに来た人も一緒になって大画面で観戦して大盛り上がりしていたのが印象的でした。ライフスタイルホテルは、宿泊者のためだけでなく、街とホテルの接点をつくる場所になっているといえます」(同)

 街全体を巻き込んだ施策を積極的に打ち出すホテルもある。星野リゾートが手がける「OMO5東京大塚」では、戦隊ものになぞらえた「OMOレンジャー」というスタッフたちが大塚の街を案内し、地元のカルチャースポットやレストラン、バーなどに連れて行ってくれるという。街とホテルが協力し、ウィンウィンの関係になっている好例だ。このような、文化との接点・交流の場となる宿泊施設はホテルの範疇を超えて広がりを見せているそうだ。

ライフスタイルホテルの価格帯は、シティホテルを超える高級なものから、ビジネスホテル並みの料金で泊まれるものまで、さまざまです。さらに、旅館業法上は別枠になりますが、カプセルホテルやホステルといった簡易宿所にも、コンセプトを打ち出したものが続々登場しています。柔軟に改装できるのは、小さなハコならではのメリットでしょうね」(同)

 外資系、日系を問わず、各社ともライフスタイルホテルの業態で差別化に乗り出しているが、一方でホテルは過剰供給気味だ。19年11月のみずほ総研のリポートでは、20年に日本のホテルは不足しないとされている。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響もホテル業界を直撃した。

 ただ、巻き返しのために、今後は各社とも新たな施策を打ち出してくることが予想される。ぜひ、目星をつけたライフスタイルホテルをはじめ、今までになかったようなコンセプトのホテルを利用してみてはいかがだろうか。

(文=松嶋千春/清談社)

●「ホテル評論家 瀧澤信秋 Official Site

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せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。
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