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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

大塚家具、久美子社長は何を間違ったのか?IKEAが消費者に支持される理由から考察

文=大﨑孝徳/神奈川大学経営学部国際経営学科教授
大塚家具、久美子社長は何を間違ったのか?IKEAが消費者に支持される理由から考察の画像1
大塚家具が本社を置く東京ファッションタウンビル(「Wikipedia」より)

 10月28日、大塚家具から大塚久美子社長の辞任に関する発表があった。5年前に父と娘のお家騒動と世間をにぎわせたこともあり、久美子社長辞任のニュースは多くのメディアで取り上げられている。

 久美子氏は経営権争いには勝利したものの、大塚家具の業績は低迷し続け、貸会議室大手のティーケーピーの支援もうまく機能せず、昨年にはヤマダ電機の傘下に下った。辞任の理由に関しては、「本人からの申し出」と大塚家具は発表しているが、「事実上の更迭」とする報道も多く見受けられる。

経営争奪戦、大塚家具の方針をめぐる攻防

 5年前の経営争奪戦においては、今後の大塚家具の方針に関して、久美子氏と父であり創業者でもある大塚勝久氏との間で激しい論戦が繰り広げられた。

 勝久氏は、「新経営体制による企業価値向上策と株主提案へのご支援のお願い」において、大塚家具の企業価値の源泉として以下の4点を挙げていた。
「三世代にわたるお客様の応援」
「広大な店舗・豊富な品ぞろえ」
「従業員の対面販売力」
「取引先との関係・効率的流通」

 さらに、高付加価値販売戦略回帰のための施策として、
「三世代消費に対応できる販売」
「ご案内・対話重視の販売(ただし希望者は自由に入店)」
「『大塚家具で買うこと』自体を付加価値にできる販売」
の3点を強調していた。

 一方、久美子氏は中期経営計画において、同社に対する「受付や接客に抵抗を感じる」「価格が高そう」といった顧客のイメージを問題視し、今後の施策として、
「既存店改革(気軽に入れる・中価格帯・セットではなく単品買いの促進)」
「新規出店(未出店の大きな商圏へ大型店・ライフスタイルを意識した専門店)」
「地方百貨店との提携販売強化」
「BtoB事業強化」
の4点を強調していた。

 つまり、勝久氏はこれまでの大塚家具の方針の進化による業績回復を志向したのに対して、久美子氏はこれまでの方針を一変させることを主張した。

何が正解だったのか?

 あれから5年がたち、久美子氏の方針のもとで事業を進めたものの業績が回復しなかったという事実から、勝久氏が主張した方針が正しかったと思われる人もいるかもしれないが、一部の報道によると勝久氏が新規に立ち上げた「匠大塚」の業績も芳しくないようだ。

 1969年の創業から半世紀が過ぎ、競争環境も一変し、会社の寿命といった時期であったかもしれない。ただ、今から思うと久美子氏の打ち出した方針は、もちろん株主へのアピールといった意味合いもあってのことだろうが、あまりに耳あたりの良い方針の羅列であったかもしれない。

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