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楽天モバイル、大量解約で“格安”ドコモに契約者流入の観測も…NTT強大化で国全体が損

文=編集部
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NTTドコモ代々木ビル(「Wikipedia」より)

 NTTドコモの携帯料金の値下げが“値下げドミノ”となるのだろうか。若者向けの格安な新料金プラン「ahamo(アハモ)」の3月からの開始だけではない。「5G」など現行プランの1000円の値下げを20年12月18日に発表した。

 21年4月から、次世代規格「5G」の料金を月額6650円(各種割引適用前)とする。データ容量も現行の100ギガ(ギガは10億)バイトから無制限にする。現在の大容量プランは「5G」で7650円、「4G」が7150円(30ギガバイト)の固定料金。新料金は「4G」も6550円と600円引き下げ、データ容量も60ギガバイトへと倍増する。

「ドコモの主戦場は4G。4Gは600円しか下げていない。1000円下げればもっとインパクトがあった」(ライバル会社の幹部)

 アハモの格安プランの申し込みはネットのみ。月間20ギガバイトのデータ容量で月2980円。5分以内の国内通話も無料だ。

 ドコモの動きにまず反応したのがソフトバンクだ。20年12月22日、データ容量20ギガバイトで月額2980円(税別)の新ブランドを21年3月から立ち上げると発表した。データ容量、価格ともドコモの「アハモ」とまったく同じである。ソフトバンクが傘下の仮想移動体通信事業者(MVNO)のLINEモバイルを吸収合併した上で、新ブランド「SoftBank on LINE」を開始する。ソフトバンクの通信回線を使う本体ブランドとし、申し込み手続きをオンラインのみとするところもアハモの引き写しだ。

 ソフトバンクブランドの大容量プランも21年3月から最大1900円値下げする。現在のデータ容量50ギガを無制限とした上で4G・5G共通のサービスとして6580円で提供する。現行の4Gプランから900円、5Gからは1900円の値下げとなる。利用が3ギガ以下の月は、さらに1500円割り引くとしている。

 政府は端末料金と通信料の分離を義務付けるなど、大手携帯電話会社に料金値下げを促してきたが、大手3社は事実上の横並びで、メインブランドの大幅な値下げは実現しなかった。今後の焦点はKDDI(au)の対応だ。21年1月中にはドコモ対抗策を公表することになる流れだ。

 ドコモが均衡を壊したことで、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社は利益を度外視した消耗戦に突入することが避けられなくなった。

NTT、ドコモ完全子会社化

 ドコモの大幅値下げの背景を振り返ってみよう。ドコモに対するNTTのTOB(株式公開買付け)が成立し、ドコモは20年12月25日付で上場廃止となった。TOB総額は4兆2500億円。国内のM&Aでは最高額だ。ドコモはNTTという後ろ盾を得て、携帯電話料金の見直しに本格的に取り組む体制が整った。

 電電公社の民営化で誕生したNTTは、NTT法によって国が株式の3分の1以上を保有することや、取締役の選任に総務相の認可が必要なことが決められている、いわば半官半民の持ち株会社。20年3月末時点で発行済み株式の34.69%を国(名義は財務相)が保有している。

 NTTによるドコモの完全子会社化をめぐり、KDDIやソフトバンク、楽天など28の電気通信事業者は、「公正な競争環境が阻害される恐れがある」とする意見書を武田良太総務相に提出した。公正な競争を確保するために厳格な措置を講じ、NTTにその順守を求めた。

「ドコモがアハモでやろうとしているのは、楽天モバイル潰し。格安スマホは眼中にない」(通信業界の首脳)

「格安スマホは大きな影響は受けないだろう。格安スマホのユーザーはデータ量を20ギガも使うことはない。せいぜい3ギガ程度で980円を払う。なので、格安スマホからアハモへの移行は少ない」(格安スマホ会社の社長)

楽天モバイルが窮地

 窮地に追い込まれそうなのが楽天モバイルである。データ使い放題で契約者を集めているので、完全にアハモと客層がかぶる。

「ドコモは楽天の料金プラン『楽天アンリミット』の利用客をターゲットにしたといわれている。楽天モバイルは21年4月、データ使い放題サービスの月額2980円の課金が始まる。このままの状況が続けば、課金開始前に大量の解約が発生するかもしれない」(前出の格安スマホ会社の社長)

 KDDIとローミング(通信回線の乗り入れ)の打ち切りが始まり、楽天には「繋がりにくくなった」という苦情が増加している。楽天会長兼社長の三木谷浩史氏は損切りの決断は早いといわれている。

「新型コロナウイルスのPCR検査もすぐやめた。携帯についてもそろそろ飽きてきた頃ではないのか」(楽天の元役員)

「楽天モバイルの赤字が嵩めば、どこかのタイミングで会社を解散することがなきにしもあらずだ」(前出の通信業界首脳)

 ドコモが新プランを発表した20年12月上旬から楽天の株価は冴えない。楽天の株価下落は何を意味するのか。株式市場は企業動向の半年から1年後を株価で先取りするといわれている。総務省は公平で自由な競争のもと、料金の値下げへと誘導するつもりだったが、「角を矯めて牛(=楽天)を殺す結果になるかもしれない」(同)。

 菅義偉首相が業を煮やし、武田良太総務相が大手通信キャリアにプレッシャーをかけた結果、料金値下げは実現したが、これはまさに“官製値下げ”。しかも再び3社の料金は横並びになることが予想されている。ドコモもサブブランドを用意した上で値下げを公表したかったのだろうが、人気取りに拘泥する菅政権は待てなかったと永田町ではいわれている。

 政権の圧力という、公平とはいえない歪んだ競争の末に、ドコモは大幅な値下げに踏み切り、ソフトバンクが追随した。1月中にはKDDIも右に倣えだ。

 ドコモを完全子会社にしたことでNTTグループはさらに巨大化し強くなる。そうなると将来的にサービスが停滞し、技術開発の国際競争で後れをとる懸念もある。菅政権の政策の“一丁目一番地”となった携帯料金の値下げは、少し長い目で見ると、公平・公正な競争を阻害し、NTTグループへの一極集中を加速させる諸刃の刃となる。

(文=編集部)

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