
米製薬大手ファイザーが開発した新型コロナウイルスのワクチンの国内での国立病院関係者への接種が、2月17日に始まった。米英などでは昨年12月下旬に使用が認められ、他社製のワクチンも含めて世界で70を超える国・地域で1億8700万回分の接種を行ったとされるが、日本はこれまでゼロ。ようやく2カ月遅れで接種にこぎつけた。
なぜ、遅れたのか。原因のひとつは、日本人を対象とした国内治験(臨床試験)を承認の条件としたことがある。ファイザーは昨年7月から米国など6カ国で4万人超を対象に国際共同治験を実施。日本は患者数が比較的少なく、効果の検証が難しいこともあって、この対象には入らなかった。
海外製ワクチンの国内治験は、英アストラゼネカが2020年8月から、ファイザーが同10月からそれぞれ始めた。ファイザーは同12月に厚労省に承認申請した。日本政府はこれまでにアストラゼネカとファイザーとの交渉により、計2億4000万回分のワクチンの供給を受けることで合意している。モデルナ製を加えると約3億回分になる。
武田薬品はモデルナとノババックスの2社のワクチンを治験
武田薬品工業は1月21日、米バイオ製薬モデルナの新型コロナウイルスワクチンの治験を始めた。モデルナのワクチンは、「メッセンジャーRNA(mRNA)」という遺伝子を使う新しいタイプ。日本では武田が治験と流通を請け負っている。日本政府が導入を決めている海外製ワクチンで国内で治験に入るのは、アストラゼネカ、ファイザーに続いて3社目。
モデルナの国内治験は200人規模。被験者は28日間隔で2回接種し、安全性や有効性を確認する。順調に進めば、4月に結果が出る。武田は5月までに承認取得を目指す。武田とモデルナ、厚労省は6月までに4000万回分(2000万人分)を国内で供給する計画。その後、9月までに1000万回分(500万人分)を追加し、合計5000万回分となる。
武田は2月20日にも、米バイオ医薬品企業ノババックスが開発した新型コロナウイルスワクチンについても、日本国内で治験を開始する。武田はノババックスから技術移転を受け、光工場(山口県光市)に年間2億5000万回(2回接種で1億2500万人)分以上の生産能力を整備。安全性が確認されれば薬事承認を申請し、今年後半にも供給を始める計画だ。
ノババックスのワクチンは通常の冷蔵庫(2~8℃)で保存可能とされ、英国で実施した治験で89.3%の感染予防効果が示された。武田とノババックスは昨年8月、日本国内における開発や製造、流通での提携で基本合意している。
KMバイオロジクス、塩野義製薬
日本ではコロナワクチンは「海外頼み」が現実だ。国内でも複数企業が開発を進めるが、海外勢からは「周回遅れ」で実用化の時期が見えない。