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みずほ銀行システム障害4連発、旧3行間の派閥争いが原因か…経営統合から20年でも

文=編集部
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みずほ銀行の店舗(撮影=編集部)

 キャッシュカードや預金通帳が、現金自動預払機(ATM)に飲み込まれたまま戻ってこない――。まるで近未来SF映画で描かれるディストピアのような光景が2月28日、みずほフィナンシャルグループ(FG)傘下である、みずほ銀行のATMで現出した。同行の藤原弘治頭取が3月1日に謝罪したのだが、システム障害は3、7、11日と続いた。

 時事通信は18日、記事『親会社ようやく前面に 対応またも後手―みずほ障害』を公開。銀行の各基幹システム統括的な責任を負うみずほFGの坂井辰史社長が17日、初めて公の場に出て陳謝したことを伝えた。同記事によると、坂井社長は「持ち株会社としての責任はある。極力早期に信頼回復を図るのが私の責務だ」と謝罪した上で、「第三者委員会の設置や内定していた頭取人事の延期などを公表した」という。

 同記事は以下のようにみずほFGの責任に関して言及している。

「ただ、そもそも現行システムの開発は『持ち株会社(みずほFG)が主導してきたプロジェクト』(坂井社長)だ。短期間に頻発したシステム障害は、『単にシステムというよりITガバナンス(統治)の問題』(関係者)といった見方が広がっていた。金融庁は当初から持ち株会社の役割を重く見て、みずほFG、みずほ銀両社に報告命令を出している」

興銀出身・坂井氏はみずほ銀の件で火の粉をかぶりたくない?

 政府系金融機関幹部は次のように話す。

「坂井社長は東大法学部卒、旧日本興業銀行入行組です。旧大蔵省に友人がたくさんいる昔ながらの銀行エリートです。ちなみに、みずほ銀の藤原頭取は早大商学部卒の第一勧銀の出身者です。

 今回の坂井社長の謝罪は『持ち株会社としての責任はある』という条件付きのものでした。そもそもFG社長として謝罪が遅れたのは、『興銀派として勧銀の不祥事で火の粉をかぶりたくないという思惑があったのではないか』と金融関係者の間で噂になっていますよ。

 みずほ銀行のATMや支店業務など、いわゆるリテールは旧勧銀と旧富士の行員が大半を占めています。一方で興銀は統合後しばらくの間、大企業や多国籍企業、金融機関を主な顧客とする『みずほコーポレート銀行』(編集部注:2013年7月1日 にみずほ銀行と合併し、現在はない)の中核を担っていました。リテール部門はFG内では不採算事業との見方が強いようですから、興銀出身の坂井さんは『自分の所管外』との意識があるのかもしれません。

 ほかのメガバンクでもそうした出身銀行派閥の間でさや当てはあるものですが、一連の騒動を見る限り、みずほFGはその影響がまだまだ色濃いのだと思いました。『みずほのシステム障害』といえば、そもそも勧銀のシステムから一連の問題が始まっています。興銀の人間としてなにか思うところもあるのではないでしょうか」

勘定システム開発時から変わらぬ、みずほの“非合理的な体質”

 みずほFGといえば、通算8年の歳月と4000億円を投資して、勘定系システム「MINORI(ミノリ)」の開発を主導したことで知られる。勘定系システムとはATMや銀行窓口の入出金などを記録し、管理するシステムのこと指す。ミノリの開発は3行統合に伴い、この勘定系システムを土台から作り直すという“銀行業界でも例のない難事業”だった。特にATMなど24時間稼働のオンラインシステムと支店事務系のオフラインのバッチ処理を同時並行して処理する技術の確立が難航し、なかなか完成しないことから一部の技術者から「IT業界のサグラダ・ファミリア」と呼ばれていたこともあった。

 FG内でITインフラ整備やシステム運用を担う「みずほ情報総研」(みずほIR)にかつて勤務していた技術者は一連のトラブルに関して次のように語る。

「インターネットや報道で指摘されている通り、そもそもの始まりは勧銀のシステムがFGのシステムの大元になったことにあります。勧銀のシステムは、大手都市銀行の中で最も“遅れている”と言われていました。『みずほのシステム開発』イコール『難事業』と見なされるようになった発端はすべてそこにあります。なぜ勧銀のシステムがもとになったのかについては諸説ありますが、FGの初代社長に勧銀の杉田力之頭取が就いたことが大きいと言われています。

 システムの運用はFGの統括管理のもと、IRが現場を担います。各社報道によると今回のシステムトラブルは負荷がかかる月末に臨時データ処理や移行作業を行ったことが一因といいます。現場は上層部の進行計画に従って作業します。

 一般論ですが、ある程度のIT関連の知識があれば、そうしたタイミングでシステムをいじることのリスクは、容易に予見できたのではないかと思います。現場のミスや失敗もあるのかもしれませんが、そもそも大元の作業計画に無理があった可能性が高いと思います。

 ミノリの時もそうでしたが、みずほFGでのシステム開発や保守整備は、技術的な観点から合理的に進むわけではなく、旧3行間の主導権争いなどが少なからず影響します。一連のトップの謝罪会見などを見る限り、みずほの“旧い体質”は健在だなと思いました」

 複数の報道によると、金融庁は一連のトラブルを受け、3月中にもみずほ銀行への立ち入り検査を実施する方向で調整に入った。ITガバナンスの観点から、システムの管理体制などについて関係者から聞き取りを行う予定という。出身銀行グループ間の確執、金融庁の介入など、TBS系「日曜劇場」で一世を風靡したドラマ『半沢直樹』のエピソードに取り上げられそうな情勢だ。ドラマでは片岡愛之助演じる金融庁・国税庁のエリート黒崎駿一が、ドラマの結末に向けて重要な立ち回りを見せた。本物の「金融庁検査」では何が明らかになるのだろうか。

(文=編集部)

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