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ワタベウェディング、なぜ経営危機で私的整理に?優良な財務→1年で債務超過に転落

文=編集部
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ワタベウェディングのサイトより

 婚礼大手ワタベウェディングは私的整理の一種である「事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)」を申請した。胃腸薬「キャベジンコーワ」で知られる医薬品メーカーの興和(名古屋市、非上場)が20億円を出資し、ワタベの第三者割当増資を引き受ける。同時にワタベが既存の自社株式をすべて回収し興和に売却。一連の手続きを経て、6月末に興和はワタベを完全子会社とし、経営再建を主導する。ワタベは5月28日に臨時株主総会を開き、承認を得る方針だ。

 興和の支援を受ける前提として「事業再生ADR」を申請した。「事業再生ADR」は経営難の企業と金融機関などの債権者が、政府の認証を受けた第三者機関を介して再建について話し合う仕組み。民事再生手続きのように裁判所を通さないため、より早く再建できる利点があるとされる。金融機関に債権の一部放棄を求める。ワタベは花房伸晃社長ら経営陣15人が退任する。東証1部も上場廃止になる。

 海外挙式の草分けでハワイを中心に展開してきたワタベは、コロナ禍で海外婚礼のほとんどが中止になっただけでなく、国内の婚礼の多くもキャンセルや延期となり事業環境が一気に悪化した。2020年12月期連結決算の最終損益は、過去最悪の117億円の赤字となった。19年12月期は決算期を3月から12月に変更したことに伴い9カ月の変則決算だった。前年の同期間(19年1~12月)を見てみると2億800万円の黒字である。

 売上高は前年の同期間と比べて61%減の196億円、営業損益は109億円の赤字(前年の同期間は6億2900万円の黒字)だった。ハワイや沖縄などのリゾート地での挙式は63%減で45億円の赤字。ホテル・国内挙式は60%減って65億円の赤字。オンライン挙式やフォトウエディングは伸びたが、とても補え切れなかった。その結果、20年12月末時点で8億6300万円の債務超過に陥った。19年12月末には111億円の純資産があり自己資本比率44.4%という良好な財務内容を誇っていた。コスト削減のため従業員の2割弱にあたる130人の希望退職を実施したほか、国内外の直営店や婚礼会場など約30拠点の閉鎖に踏み切った。

ワタベはカタログ通販、千趣会の持ち分法適用会社

 ワタベは1953年、ワタベ衣裳店として創業。73年に米ハワイに出店し、海外挙式ブームの火付け役となった。東京・目黒のホテル雅叙園東京を2004年に買収したほか、08年、ホテルメルパルク(旧郵便貯金会館)を子会社にした。

 コロナがなくても、結婚式を挙げないカップルが増え、人口の減少で国内ウェディング市場は縮小の一途だった。そこでホテル・ウェディングに活路を求めた。2015年、カタログ通販の千趣会と資本提携。千趣会はTOB(株式公開買い付け)でワタベに34%出資し、持ち分法適用会社に組み込んだ。千趣会は子会社でハウスウェディング事業をやっており、リゾート挙式に強いワタベと組むことで多様化する挙式ニーズを取り込む腹づもりだった。

 しかし、千趣会とワタベは対立。ワタベの創業家出身の3代目、渡部秀敏会長が18年秋、取締役会でMBO(経営陣が参加する買収)を提案した。千趣会はインターネット通販に押され、主力のカタログ通販の収益が悪化、経営危機に陥っていた。MBOで千趣会と縁切りする予定だったが、渡部会長はMBOのための資金調達に失敗、19年になってMBOを取り下げた。内輪もめをしているうちにコロナ禍に見舞われた、というのが実情だ。

 事業再生ADRを申請して経営陣は総退陣。興和の完全子会社になることを決定した。金融機関の支援を得るための条件が経営刷新だったとみられる。ワタベを完全子会社にする興和は、名古屋市に本社を置く非上場企業。外用鎮痛消炎剤「バンテリン」や胃腸薬「キャベジンコーワ」をはじめとした医薬品が主力事業で、20年3月期の連結売上高は4225億円。昨年、“アベノマスク”を受託生産したことで一躍有名になった。

 興和のホテル事業の年商は132億円だ。地元で老舗の「名古屋観光ホテル」を運営。19年にはハワイで高級ホテルを開業しており、現在、ホテルナゴヤキャッスルの建て替えを進めている。ホテル部門を強化中で、自社のホテルで挙式まで直営で行う。

前澤効果”で一時、株価が上昇

 20年12月末時点の大株主名簿を見ると、ZOZOの創業者だった前澤友作氏が9万3200株(0.94%)を保有し、第8位の大株主として登場している。6月末の持ち株は3万4400株だったから2.7倍に急増。5万8800株買い増したことになる。“前澤効果”で3月9日、ワタベの株価は値幅制限の上限(ストップ高)となったのを皮切りに3日間で52.8%も上昇した。

 しかし、事業再生ADRの申請を受けて、3月19日の東京株式市場でワタベ株は売買開始と同時に79円(19.4%)安の328円まで急落。352円(55円安)で終わった。3月22日も続落し、287円で引けた。最安値は278円(74円安)。

千趣会も婚礼事業を売却

 千趣会は3月23日、婚礼事業を投資ファンド、CLSAキャピタルパートナーズに売却すると発表した。地方を中心に婚礼事業を進めてきたディアーズ・ブレイン(東京都港区)と大阪府内で式場を運営するプラネットワーク(大阪府吹田市)の子会社2社を3月末に売却する。売却額は明らかにしていない。

 千趣会は2021年12月期の連結最終損益が11億円の黒字(20年12月期は39億円の赤字)になりそうだと、同日発表した。従来予想の20億円の黒字から下方修正した。子会社の売却で21年12月期の連結売上高は20年同期比9%減の760億円になる見込み。従来予想から150億円引き下げた。

ヴィアHDも私的整理、サンデンHDは中国企業の傘下に

 焼き鳥居酒屋「やきとりの扇屋」、カフェ「パステル」などを運営するヴィア・ホールデイングス(HD、東証1部上場)も事業再生ADRを活用して再生に取り組んでいる。ヴィアHDは2020年4~12月期の連結売上高が96億円と前年同期より半減。最終損益は38億円の赤字となり26億円の債務超過となった。3月26日、21年3月期の連結最終損益が56億円の赤字(20年3月期は18億円の赤字)になりそうだと発表した。

 横川紀夫社長は、すかいらーく創業者の横川四兄弟の4男。すかいらーくで副社長、会長を歴任。退任後の2003年、ヴィアHDの会長に就いたが18年、最高顧問に退いていた。しかし、19年、業績悪化で社長が引責辞任したため、横川氏が急遽、再登板した。

 4月28日付で横川社長が退任し、楠元健一郎取締役常務執行役員が社長に昇格する。同氏は大和銀行(現りそな銀行)を経て、17年にヴィアHDに入社した。4月20日まで、りそな、みずほ、横浜などの金融機関は返済を猶予している。ヴィアの経営陣は同日の債権者会議に事業再生計画案を提出する予定にしている。「扇屋」のチェーン店のうち50店舗をラーメン店に業態を転換することを検討している。事業再生ADRの枠組のなかで新たなスポンサーを探しているが、外食という業態は、今や構造不況業種である。すんなりスポンサーが見つかるかどうか予断を許さない。

 東証1部上場でカーエアコン用コンプレッサーで世界第2位のサンデンホールディングス(HD)は、中国家電大手・海信集団(ハイセンス)グループ傘下のハイセンス・ホーム・アプライアンス・グループを引き受け先とする第三者割当増資で214億円を調達。ハイセンスは株式の約75%(議決権ベース)を取得し、子会社にする。

 サンデンHDは新型コロナ禍で自動車向けの売り上げが落ち込み、20年6月に「事業再生ADR」を申請、出資先を探していた。20年4~12月期の連結損益は168億円の赤字(前年同期は122億円の黒字)だった。サンデンHDは5月7日、臨時株主総会を開き、ハイセンスがスポンサーになることの承認を株主から得る。サンデンHDは中国系企業になって出直すことになる。

(文=編集部)

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