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松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」~CAが危ない!ANAの正体(3)

ANA、CAの心身を蝕む“過度な容姿のキレイさ要求”…眼鏡着用NG、サービス要員扱い

文=松岡久蔵/ジャーナリスト
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ANA本社が入居する汐留シティセンター(「Wikipedia」より)

「お客様! おやめください! どうか、おやめください」――。2017年5月1日、搭乗した客室乗務員(CA)が全員女性だったANA(全日本空輸)の羽田発ロサンゼルス便で、乗客同士の殴り合いのトラブルが発生したが、CAはこう大声で注意するだけで十分な対応ができなかった。ANAのCAはほぼ全員が女性であり、乗客がこうした問題行動を起こした場合、保安要員として十分な抑止力を行使できない可能性がある。

 このようなジェンダーバランスの欠如は、欧米などの航空会社との最大の違いの一つだが、背景には日本の航空業界に根付く男性優位の発想がある。

ANAが男性CAの採⽤を開始したのは、たった2年前

 CAはサービス要員としての性格も持つが、基本的には乗客の安全を守る保安要員である。ANAは2年前の2019年4月の新卒採用で初めて日本人男性CAを4人採用したが、同期約700人からすれば、微々たるもの。19年のCAは計約8200人だったが、99%が女性で、これまでパイロット以外の男性で搭乗したのは、総合職の3年間の経験乗務者と、ロンドンベースなど外地採用社員のみだったという。この点では国内競合のJALも同じような状況だ。

ANAはCAに「サービス要員」の要素ばかりを要求

 しかし、普通に考えて保安要員として働くことを求められる職業で、ほとんど女性しかいないのは異常である。海外の航空会社を見てみると、仏エールフランスなどは男性CAの比率が約4割程度で、国際的にみても3~4割が標準だ。なぜ、ANAはこのような現状になったのか。

 まず考えられるのは、そもそも日本が男性中心社会であることだ。ANAが主戦場としている国内線では、コロナ禍前までは出張族の男性会社員の利用が大半を占めており、「癒やし」としての接客を求めたことが考えられる。つまり、日本社会にとってCAとは保安要員というよりは、「サービス要員=きれいどころ」の要素ばかりを要求されてきたということだ。実際、欧州、米国、中東、南米、中国、モンゴル、タイなど海外の客室乗務員は「保安要員」としての国家ライセンスが付与されているところが多いが、日本の総務省における職業分類では「サービス業」となっていることも、これを示している。以下はANAのCAのOGの弁。

「ANAで働いていると、キレイなメイクなどを求められすぎて、それに対する負担が大きいんです。女性にこうあってほしいという規範を押しつけられすぎるような印象を持ちます。また、女性CAは眼鏡の着用が基本的には認められず、コンタクトレンズが体質的に合わない場合は職場にとどまるのは難しい。海外の航空会社では若いCAも眼鏡の着用が普通で、眼鏡だとダメだと会社側が言った場合、人権問題になるにもかかわらず、です。私の先輩で『目が悪くなっても眼鏡がかけられないから』という理由で退職した人が何人もいました。結局、容姿だけが重視される職場だということです。それはANAの制服にパンツがなくスカートだけしかないことに象徴されます。

 私は現役時代、先輩から『女優になりなさい』と言われていました。 嫌なことがあっても、不満があっても決して顔に出してはいけないと。確かにサービス要員としてはそうかもしれませんが、国内線1日4便などの過酷な労働を強いておいて“常に笑っていろ”というのは、肉体だけでなく精神も蝕んでいきます」。

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